病院後継者研修プログラム 塾長のつぶやき(第二期)

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第二期生の皆さまへ

病院後継者研修プログラム 塾長 藤澤功明

真の従業員の幸福とは、何か(2020/09/16)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

30年前に開講しました初期の「病院後継者塾」の時代と比べて、経営のマネジメント手法は随分と変化したものです。私たちを取り巻く環境は激変し、社会情勢も経済環境も、世界のあり方も価値観も、情報量もイノベーションの速度も全く違ったものに変わってしまいました。経営の意思決定や環境変化への対応はより複雑なものになりました。

さらに新型コロナウィルスにより、世の中は超加速度的に激変し、コロナ収束後も社会、ビジネス、生活様式などさまざまなところで、光景が一変することでしょう。また、医療提供体制は人口減少や超高齢化社会とともに新型コロナウィルスにより日本の経済情勢の厳しさがさらに加わり、今後もますます検証と見直しが繰り返されていくでしょう。

そのような中で、お客様からの熱烈な声に背中を押されて、「病院後継者・経営者塾」を2018年10月に再開しました。全国の病院の次世代を担う方々がご多忙な中ご参加くださり、皆様の志の高さやお人柄にふれさせていただき、さらに、そのような方々と経営課題に取り組んでいけることに、私も参加した社員も大変感銘を受けたものです(第三期病院後継者・経営者育成塾は 2021年1月にスタートします)。

継ぐということと、継がせるということ。私はその両方を日本経営で身を持って体験しました。

そのような中で実感した事業承継の本質は、「同族経営のよさ」ということです。ご両親がご子息、ご息女に承継するような経営では、ご両親は次のように考えます。苦しいことは自分の代ですべて引き受けて解決しよう。未来の果実は将来世代に委ねて享受させてあげたい。…そのような願いを脈々と受け継いで、同族での事業承継は繋がれていくものです。

私たち日本経営グループも、「血は繋がっていないが、同族を越える志を同じくする同志である」。これが、創業者が掲げたメッセージです。これは決して、イエスマンを後継者にするということではありません。自分の代で掲げたビジョンは、自分の代ではなく、次の代、その次の代で果実を実らせるものです。

自分ではできないことを自分より有能だと認める次世代に委ねていく。私は 49歳で株式会社日本経営ホールディングスの社長を拝命しましたが、その数ヵ月後には、同じように次の社長にも49歳までにはバトンタッチをしなければならないと決意しました。自ずから、私があと何年旗振り役をさせていただけるのか、そのときにもう腹は決まっていたのです。

弊社の基本理念は「全従業員とその家族の幸福を追求するとともに、その幸福に氣づいて感謝できる心を育み、社会の成長発展に貢献する」です。有事の時においても、従業員の幸福を願い、従業員を大切にするとはどういうことでしょうか。社員個々のモチベーションの向上や楽しい職場づくりでしょうか。夢やロマンを与えることでしょうか。

真の従業員の幸福を願い、大切にするということは、従業員を鍛え抜き、逞しく生き抜く力を身につけてもらうことです。従業員の育成に責任を持ち、その鍛え抜かれた従業員の中より、自分のことよりは周囲のことを優先する後継者が生まれてくるのです。

私のつぶやきは当時、社員の皆様に書き綴った手紙をベースとして皆様にお届けしてまいりました。コロナ禍において、地域のためにスタッフの皆様と共に最前線に立って最善を尽くしてこられる皆様に、少しでもお役に立つ情報や励ましになればと思いご紹介してまいりました。

一旦、私のつぶやきは筆をおきますが、新たなシリーズでまたお会い出来ることを楽しみにしております。これまでのご愛読に感謝しますとともに、皆様や皆様の大切な方々のますますのご発展・ご健康・ご多幸を心よりお祈り申し上げます。

まことにありがとうございました。

2020年9月16日 

キーワードは、認知飢餓社会(2020/09/09)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

2016 年1月10日の日本経済新聞に、「300年成長続ける企業へ」というタイトルで、孫正義氏へのインタビューが掲載されました。

“最低300年続くグループのDNA”という言葉は、2010年の定時株主総会「ソフトバンク新30年ビジョン」の中でも使われた言葉ですが、そのとき、300年後の世界について次のようなビジョンが描かれています(一部要約)。

『人間の大脳には約300 億個の脳細胞がある。2018年にはワンチップに入るトランジスタの数がそれを超え、100年後には人間の脳細胞の1垓倍になる。コンピューターは、知識と知恵ではるかに人間を超越するようになり、やがて人間は、欲や夢、愛といった感情をコンピューターが持つことを許すのかどうかという議論に直面する…』

もしコンピューターが、人間を超越した頭脳に加えて感情を持つようになると、私たちにはどのような世界が待っているでしょうか。

まず、コンピューターにどのような感情をインストール(?)するかを考えなければなりません。愛や希望や夢はインストールするとしても、怒りや嫉妬や悲しみといったネガティブな感情はどこまでインストールするでしょうか。

もし、ネガティブな感情を一部制御する場合、そのコンピューターは人類を理解し、愛しく思い、幸せにすることができるでしょうか。

未来のコンピューターからすると、今の私たちは、毎日、感情が揺れ動き、無駄や失敗の多いコミュニケーションを繰り返しているのかもしれません。しかし、それらも含めて、私たちは仲間を愛おしく思い、だからこその人類であり、人生です。

10年以上前に、私がモチベーション・コミュニケーションについて社員に発信した手紙を、懐かしく思い出します。

「不機嫌な職場 なぜ社員同士協力できないのか」(高橋克徳ほか著、講談社)という書籍を、創業者である菱村議長より頂きました。

キーワードの1つが「認知」。『自分のことを日頃認めないような人が困っていても、私たちは助けてあげようとは素直に思えない。また逆に「この人すごいよ」といってもらえることで、「すごい」といって自分を認知してくれる人、組織、社会に対して好感を抱き、何か貢献できないかという前向きな感情を持つことになります。

しかし現在は「認知飢餓社会」、家庭でも学校でも会社でも、自分が認知されず飢えが蔓延している…(一部要約)』

人から認められたい。認めてくれた人に貢献したい。このような感情は、人間が根源的に持っているものです。そのような感情に、皆が飢えていると言うのです。

先日、休みを利用して、息子と東京の「先端技術館」に行ってきました。そこには話しかけられた言葉を認識してやりとりする「音声対話技術」を搭載したロボットがあり、びっくりしました。

世の中の技術の進歩はめざましいものがありますが、このようなロボットを各自が持つようになる世界とは、どのような世界でしょうか。人と人との触れ合いが減り、人の心の痛みが分からず、ますます愛情に飢えた家庭、社会になっていきはしないかと不安にもなりました。

社会がどんどんデジタル化するからこそ、人と人とのコミュニケーションやアナログでの発想が、人の生きている値打ちを決めるのではないでしょうか。

(平成20年8月)

コロナ禍における緊急事態宣言の結果、受診や検診、手術の延期などにより、医療機関に深刻な経営悪化が起こっていると報道されていますが、より深刻なのは、患者や利用者の状態悪化や機能低下だと言われています。

特に高齢者の場合は、外出機会の減少、残食の増加、歩幅の縮小、体重減少などにより、「コロナ太り」ではなく「コロナ痩せ」となるようです。

独居や老々介護の生活の中で、家族や地域からも認知されにくくなり、リスクが増大しているとも考えられます。

したがって、仮に受診控えされていたとしても、電話連絡は「当然のレベル」で行い、専門性を活かしたアプローチを戦略的に行っていかなければなりません。

重度の方には必要に応じて、訪問診療や訪問看護、訪問リハビリでフォロー。さらには疾患別や個人別の専門を活かした個別プログラムの作成により、オンラインなどでの指導やフォロー。そして「栄養」「運動」「口腔ケア」「水分補給」など、健康状態の確認をこまめにして、希望するサービスの見直しを定期的に実施していくことです。

大切なことは、今まで築いてきた関係性を切らさないことです。この関係性とは、患者や利用者だけでなくケアマネージャーさんへのフォローにも当てはまります。

コロナウィルス感染が終息しても、患者が戻ってくるとは限りません。戻ってきたときにも状態が悪化していないように、未然に防ぐ取り組みが求められるのです。

感染による不安から、依然、高齢者は自宅にこもっているのではないでしょうか。患者、利用者だけでなく、家族会を定期的に開催して、対策やオペレーションを可視化して説明するとともに、ADL低下のリスクをしっかり説明することが大切です。

有事であっても関係性を切らさない。コミュニケーションの工夫と対応力を向上させていくことが、「認知飢餓社会」を救うことになるのです。

2020年9月9日 

困ったときが変革するビッグチャンス(2020/09/02)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

「ハーバードでいちばん人気の国・日本/佐藤智恵 著(PHP新書)」で、トヨタの「プロブレム・ファースト」のエピソードが紹介されています。

米ケンタッキー州の広報担当マネジャーとして採用されたジム・ワイズマン氏。採用されて間もない頃、管理職以上の会議の席で、自分のチームの広報活動がうまくいっていることを報告しました。

すると社長は困惑した顔で、こう言ったといいます。「ジムさん、私たちはあなたが素晴らしいマネジャーであることは存じ上げています。そうでなければ採用しませんでしたから。だからここでは、あなたが抱えている問題を教えていただけませんか? そうすればここにいる皆で力を合わせて解決することができます」

この一言に、ワイズマン氏は雷に打たれたような衝撃を受けたそうです。なぜなら彼がこれまで働いてきたアメリカの会社では、失敗を会議で報告するなど、とんでもないことだったからです…。

このプロブレム・ファーストを機能させようと思えば、単に問題点を会議で報告させるようにするだけではそうはなりません。

一つには、芽が出たばかりの段階から問題に気づいて共有し手を打つということです。言い換えれば「現場主義」、「お客様ファースト」。そこに最大限の経営資源を注ぐということです。

しかし、現場を追求すればするほど、自力だけでは解決できない、他力も借りて組織の力でなければ解決できないということに気づきます。つまり、真の現場主義は、「人」に比重を置いたものに自ずとなっていくわけです。それは、「大家族主義」、「恩意識」という組織風土があってはじめて成り立ちます。

現場主義の組織風土があってはじめて、プロブレム・ファーストは機能するのではないでしょうか。そして、組織や経営は一朝一夕には成らず、コミュニケーションの一つひとつに、メッセージを込めていかなければなりません。

平成22年3月に、私は社員に、「現場主義」、「全体最適」のメッセージを込めて、こんな手紙を送っています。

今回の診療報酬改定は、物から人にヘッジされたと言えます。人の生命を守り、地域にとって本当に必要な医療を実践し、患者様やご家族に心底喜んで頂け、働くスタッフにとっても真の喜びとなりモチベーション向上に繋がります。これまで不採算であっても、人にやさしく、本当に良質な医療を提供していたところは評価されるということになります。

また、3月に平井常務はじめ数名の社員がバージニアメイソンメディカルセンターを訪問しています。注目して視察してきたのが、トヨタ方式の導入・実践。『付加価値を生まない無駄の削減』に取り組み小さな『カイゼン』を積み重ねた実践事例は、トヨタ方式の米国病院版として、いまや日本に逆輸入されつつあります。例えば、病室や検査室、備品倉庫などを効率的に配置するとともに、看護師の機能と役割を見直し、小規模な詰め所を増やすなどして、患者様に接する時間を勤務時間の35%から実に90%にアップさせるなど、人にシフトした現場主義を実践されています。

私たちも、今までの固定概念を覆して、これでいいのか、真のお客様のニーズに対して改善、改良を加えることで、創造的な仕事を実現していくことを期待しています。(一部編集・抜粋)

(平成22年3月)

新型コロナウィルスにより、社会のデジタル化が超加速度的に進んでいます。歴史の中で、組織の文化・風土はいとも簡単に崩壊してきました。その崩壊は、永年による悪しき習慣や緊張感・危機感の欠如、馴れ合いやマンネリ化、お家騒動などにより、内側からもたらされるものです。

一方、現在のデジタル化のように、外圧によって現状をアッと言う間に打破することは、そこにチャンスも生まれるものです。強い地殻変動を起こし、経営に強烈なインパクトを与えます。

トップは戦略的に、柔軟でタイムリーな力強いメッセージを発信する必要があります。地殻変動の中で、果たしてトップ層と管理職・現場は、一体となって相互支援・連携ができるか。いわゆる統制型と協働型を組み合わせたハイブリッド運営ということにもなります。

人や社会は、とことん困りはてないと変わろうとしないものです。だからこそ、困ったときが変革するビッグチャンスなのです。業務の見直し、品質の向上、生産性の向上に着眼して、あらゆる見直しが始まっています。3つだけ事例を挙げてみます。

①アナログによる資料作成やアナログによるコミュニケーションがデジタル化することで、複数の施設や部門の一元管理が可能となり、打診や根回しにかかった膨大な時間が減少しています。各部門、各施設の垣根が低くなれば、グループの一体感が高次化されていきます。

②調剤薬局からの薬剤師に出向してもらい、病棟に配置。病院は病棟薬剤業務実施加算の取得と入院患者への質の向上。薬局は人件費の圧縮と病院との連携強化による関係性の向上を図っています。

③地元のタクシー会社との提携により運転手に出向してもらい、看護補助者として配置。病院は急性期看護補助体制加算の取得。タクシー会社は人件費の圧縮・介護タクシーを強化。

これらは、全国の現場で進んでいるトライアンドエラーのごく一例です。これまで着手できなかった、ありとあらゆることにチャレンジして、ポジティブに発想していきたいものです。

ダーウィンの言葉として、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのではなく、生き残ることが出来るのは、変化できる者である」

変化の源は、私はポジティブにトライしていく「チャレンジスピリッツ」だと信じています。

2020年9月2日 

コロナ禍だからこそ問われる、理念の深い理解と実践(その②)(2020/08/26)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

8月19日のつぶやきをご覧になっていただき、ありがとうございます。

前回、紙面の都合から「コロナ禍の今幹部に求められる五信条の深い理解と実践について」の全文をご紹介できませんでしたが、全文を知りたいという声をいただきましたので、ご紹介させていただきたいと思います。

経営者の決断は、すべてその根幹となるのは「理念」です。苦しい決断に迫られたり、悩み・迷いがあるときも、理念に立ち戻ることで、それらは払拭されるはずです。

コロナ禍の今幹部に求められる五信条の深い理解と実践について

第一条 我々は、顧客の正しい防衛と経営発展のため祈りをこめて奉仕する。

顧客の正しい防衛とは、医療・介護事業者を中心とする当社の顧客に対して、我々には想像も及ばないほどの緊張感と厳しさの中にある現場を支援している仕事であるという認識を深く持つことです。つまり、感染の原因を持ち込むようなことは絶対にあってはならず、敬意を持って経営支援にあたるという決意のことです。

第二条 我々は、常に自己の本性を見きわめ、不断に自己を充実する。

自己の本性を見きわめるとは、そのような大変影響力が大きい職務特性であることを自覚し、プライベートも含めたコンサルタントとしての考え方や生活習慣そのものに対する自律のあり方といえます。つまり職場内外を問わず、また、就業時間内外を問わず、自身が取る判断、行動が自社の理念に照らして相応しいかどうかを、自分自身で向き合い続けるという覚悟のことです。

第三条 我々は、いつも根性を持って常に創造的な仕事を完遂する。

根性を持つとは、このような誰も経験したことのない、難しい舵取りが要求される環境下においては確かに不安も大きく、また答えが見出せない焦りが生じるかも知れません。それであっても、顧客や周囲には常に笑顔で接しようとする前向きな姿勢のことです。つまり、顧客の前では苦しさや辛さは胸に納め、安心や希望、元気なエネルギーを逆に与えていこうとする覚悟のことです。

第四条 我々は、自他の幸福の為に職場の規律を厳守する。

職場の規律を厳守するとは、自分も含めてその家族、職場仲間、職場仲間の家族、そして顧客、また顧客を取り巻く関係者など、「職場」は社会の公器そのものであり、一つひとつの規律はそれら全ての方を守ることに通じるものと理解することです。規律には全て背景と意味があり、自分自身の安易な理解、実践の不徹底が場合によっては多大な不幸を及ぼしかねないという自覚が必要です。

第五条 我々は、助けられたり助けたりお互いの団結を強化する。

お互いの団結を強化するとは、まさに今が助けられたり助けたりのときそのもので、感染防止と社会経済活動の同時実現という大変難しい舵取りが求められる中、伸長することが困難な事業もあれば逆に今伸長すべき事業も同時にあります。社員一人ひとりの健康を保持した上で、同時に永続的な職場や雇用を守るための事業の推進、伸長を図るという挑戦です。そのためには、お互いに知恵を出し合い、協力し合う団結力こそがものをいいます。そのような行動になっているかお互いに確認しあうことが必要です。

2020年8月19日 

コロナ禍だからこそ問われる、理念の深い理解と実践(2020/08/19)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

遡ること4年前、平成28年6月2日に「ニッポン一億総活躍プラン」が閣議決定され、「少子高齢化の問題に真正面から立ち向かう」「最大のチャレンジは働き方改革である」などが謳われました。さらに遡って平成26年10月1日には、改正医療法が施行され、勤務環境改善マネジメントシステムが導入されています。このような流れの中で、現在の「働き方改革」があります。

当時、「誰よりも働く」ことが美徳とされていた世相の中で、私自身も、「働き方改革」や「勤務環境改善」は、経営の中で最も難しいテーマだと感じていました。なぜなら、人としての価値観と生き方を問う大問題だからです。お招きいただくセミナーでも、「勤務環境改善は本当に経営に資するのか?」などをテーマに掲げてきました。

そして現在も、医療現場は、いまこの瞬間も、残業代や診療報酬などを全く度外視した、医療従事者の方々の使命感・価値観で支えられているという現実があります。また、当時、育児中の時短勤務を認めてきた資生堂が、その制度ゆえに職場に深刻な対立を生んでしまい、制度を抜本的に見直したことは大変な衝撃でした。

長時間労働の是正や多様な働き方の実現を、望まない人などいないでしょう。しかしその本質は、サービスの品質をどうするのか、一人ひとりの生産性をどうするのか、若手の育成をどうするのか、世代間ギャップをどうするのかといった永遠のテーマです。何より、職場の仲間との絆にお互いに感謝し、将来世代までも含めた「皆が幸せになる」という風土が育まれなければうまくいきません。

私自身も、平成19年に株式会社日本経営の社長に就任すると、現場の声も受けてまず社訓を改定しました。しかし、組織風土が育まれ善循環経営指標を打ち出すことができたのは、さらに7年ほど後のことでした。

平成26 年 4月に、私は社員にこんな手紙を送っています。

私は各事業部との打ち合わせの中で、理念経営をベースとした5つの善循環経営指標を前後5ヶ年数値でしてもらっています。企業は社会の公器であという意識を高め、正しいものの考え方の下、社会に貢献していかなければなりません。

そのためには心を高め、魂を磨きつづけ、より高次の全体最適に徹し、理念経営を実践していくことです。…(中略)…

善循環経営指標の第一は『付加価値総額の増加』。事業を拡大し新規事業にチャレンジする創業精神の表れだからです。

第二が『利益率20%の確保』。利益は永続発展するための未来の投資費用だからです。

第三が『人時生産性の向上』。業務改善とサービス開発によって品質と効率を同時に高め、勉強や家族との時間を大切にするということです。

第四が『顧客の創造』。お客様に本当に必要とされるサービスを提供し、ご満足いただくということを意味します。

第五が『スタッフの増加・育成』。次世代を担う人材を採用し、部下とのもみ合いの中で組織を成長させていくことです。

これらの指標は数字で追うのではなく、理念や組織風土に根ざした結果です。夢と希望を持って仲間に語り、自律的に成長させていく組織・人財を目指していきましょう。(一部編集・抜粋)

(平成26年4月)

現在、コロナ禍において、多くの職種で働き方が劇的に変革するとともに、「安心して働ける職場」という要素が加わりました。この「安心して働ける職場」の実現にも、「理念」と「組織風土」が求められます。

私どもも、新型コロナウィルス感染対策の全社員徹底のため、経営理念(五信条)に一つひとつ照らし合わせたメッセージを、下記のとおり全社員に発信しています(一部抜粋)。

日本経営グループのお客様の多くは、医療・介護事業者の方々です。クラスターを発生させてしまえば、実名報道される事業です。私たちの尽くすべき経営者は、このような状況で、患者、利用者、地域住民を守るために、感染リスクと直面しながら事業を継続されています。私たちはそのような方々の支援をさせて頂く会社に相応しい行動が社員一人ひとりできているか、そして会社としてのガバナンスが実現できているか、再度確認を求めます。

私たちが五信条として掲げ続けている「顧客の正しい防衛」「自己の本性を見きわめる」「職場の規律を厳守する」そして「お互いの団結を強化する」、まさしく日本経営グループの地力が試されています。地力とは日々の一人ひとりの一つひとつの行動であり、その拠り所、道しるべとなるものが経営理念です。

新型コロナウィルスに対峙する中で、「全従業員とその家族の幸福の追求」「顧客の健全な発展を通じて正しく社会に貢献する」と掲げたことを具体化し、これを契機に日本経営グループがさらに強い企業になることを希求します。

「コロナ禍の今幹部に求められる五信条の深い理解と実践について」

五信条
第一条
我々は、顧客の正しい防衛と経営発展のため祈りをこめて奉仕する

顧客の正しい防衛とは、医療・介護事業者を中心とする当社の顧客に対して、我々には想像も及ばないほどの緊張感と厳しさの中にある現場を支援している仕事であるという認識を深く持つことです。つまり、感染の原因を持ち込むようなことは絶対にあってはならず、敬意を持って経営支援にあたるという決意のことです。 …(以下略)。

2020年8月19日 

まだ心一つということになっていない現実(2020/08/12)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

日本経営グループの共通言語の一つに、「健全な赤字部門」という言葉があります。主軸の事業にすべての資源を集中して利益を出しても、それは正しい利益とはいえない。正しい利益とは、今の事業だけではなく将来の事業にも先行投資し、その部門で生じる赤字を吸収してなお生み出された利益をいう、という考え方です。

名誉会長の小池(二代目社長)が、ある取材でこう尋ねられたことがあります。「数々の新規事業に挑戦する中で、それぞれ事業化がうまくいったポイントはどこにあったと思いますか」。

インタビュアーは、それぞれの業種業態でノウハウが異なるので、その違いについて言及されることを期待していたようです。しかし、小池の回答は違っていました。「事業として成り立つかどうかは、そこで働く仲間が、心を一つにできるかどうか、そこにかかっている。そういう意味では、採算ベースに乗っていない事業では、まだ心一つということになっていない現実がある」。

インタビュアーは、一瞬言葉を失ったといいます。経営者がどのような景色を見ているのか、なるほどと思わせる一言ではないでしょうか。

私も、株式会社日本経営の代表取締役社長を8年間務めさせていただいて、その間、ずっと推し進めてきたのは「それぞれの事業の自律化と組織化」でした。

社長職を委譲した後に、社員から聞かれたことがあります。「社長はご自身のされたいことを自由にできたのでしょうか。それぞれの部門がやりたいということを、なんとか実現できるように骨を折られた8年だったのではないでしょうか」。

確かにそうかもしれません。しかし、それでいいと思うのです。なぜなら、トップとは、社員から一番尽くしてもらう存在ではなく、社員に一番尽くす存在だからです。「自分が何をやりたいか」ではなく、「どう仲間のやりたいことを実現し、心を一つにするか」。そのことに心血を注ぐことができたのは多くの方々の支えがあったからこそであり、感謝の気持ちでいっぱいです。

先の小池の言葉は私の胸にも深く染み入りました。10年ほど前、私は社員に、こんな手紙を送っています。

サウスウエスト航空のハーブ・ケレハー CEOは『競争相手に模倣されない強みは目に見えない資産である。私が何より恐れるのは社員の団結力、サウスウエストならではの文化、心意氣といったものが薄れていくことである』としています。

決算書上に表現される利益率や自己資本比率の高さによる財務内容が良いことは、企業の力を判断するときの目安となり顕在価値といえます。しかし、企業が永続発展する真の力を表すものは潜在価値となり、日頃はなかなか数字としては見えないものです。

それは素晴らしいお客様に恵まれていることや、企業の社会における貢献度や、何より社員が生き生きとして幸福を感じる働きがいのある企業文化を有しているか、などです。

この潜在的内部留保に気づき活かしてこそ、企業の創造性が発揮され躍動感が生まれるのです。常に明るく前向きな姿勢で、周囲を巻き込んで取り組むことは、簡単なようで人間、感情があるゆえに本当は非常に難しいことです。

社員一人ひとりが、お客様や仲間とど真剣にいつも向き合って成長していく姿を期待しています。

(平成21年5月)

ドラッカーは「人こそ我々の最大の資産である」と強調し、イノベーションの担い手である従業員の質こそが企業の価値を決定づける要素であるとしています。

企業の価値創造のための商品開発・技術開発・サービス開発の源泉は人にあり、 日本の企業経営者も人づくりに尽力してきました。経営の改善とは人の改善、人の改善とは人の心の改善なのです。よって人間力に磨きをかけないといけないのです。

コロナによって世界が変わってしまったとしても、人間の価値は変わることはありません。売上1年、利益3年、人材10年、国家100年と言われるように、人材づくりには10年の歳月を要し、ねばり強く担雪埋井の精神で情熱を傾注し育て抜く覚悟が必要です。それが国家ともなると「国家百年の計は教育にあり」とも言われるように、教育こそが国家の要となるのです。

コロナ禍において患者減・利用者減となっている大きな要因は、もちろん受診・利用控えという心理があるのでしょう。しかしそれだけではなく、事業者側にも受け入れに対する抑制の心理が働いているのではないでしょうか。

受け入れが変わらない医療機関・施設では、トップにも現場スタッフにも攻めの姿勢があるように思います。トップの強い意思に対してスタッフも意気に感じ、リスクに晒されて多くの負担をかかえながらもこれまで以上の現場対応をされています(感染対策のために濃厚接触にならないように、①正しいPPEの使用、②ゾーニングの徹底、③手指衛生の徹底、④環境消毒、⑤スタッフのストレス支援などを踏まえてのことです)。もっとも、受け入れが収益として報われるかどうかは別の議論が必要ですが。

このように有事において問われるのは、頭では理解しても行動として実践躬行出来るかということです。教育の真価を問われているとともに、患者さんとの関係性、地域における役割とは何なのかを改めて問われているのだと感じざるを得ません。

2020年8月12日 

社長としての務めが始まった最初の仕事(2020/08/05)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

私が日本経営グループの社長を拝命したのは、平成19年、49歳のことでした。正直、私に社長が務まるのか、これまで創業者の菱村取締役会議長、2代目の小池名誉会長が築き、発展させてきた会社を維持できるのか。不安で、押しつぶされそうでした。もちろん、お二人ともお元気であり、私が仮に社長でなくとも会社としては、大きな問題になることは考えられません。

しかし、創業者である菱村議長から「君は君のやり方でやればいい」という言葉を頂き、他の役員の方々の力強い支えがあるからこそ、社長就任を決意したのです。社長としてどう振舞うべきかを、もがき苦しむように模索して、結局思い至ったことは、私が入社以来、教えて頂いたことを愚直に実行すること、でした。

3月に社長としての務めが始まった私の最初の仕事は、32名の新入社員の受け入れでした。私が、社員に送った最初の手紙には、私が日本経営に入社以来、繰り返し叩き込まれてきたこと、そして、若い時にこそ取り組むべきこととして、貯金についての姿勢を伝えています。この手紙は、当時の私なりの懸命な気持ちを込めたものでした。

1月は行く、2月は逃げる、3月は去るとよく言われますが、私も3月1日より社長に就任し、はや2 ヶ月目を迎えようとしています。

そして、4月1日より私たちの新しい仲間として32名の新入社員を迎えることが出来ました。これも皆様が、社業に全身全霊で取り組み、お客様に支持されるビジネスマインドを磨き続け、付加価値を出しているからこそです。そして、さらに新しい仲間を一人ひとりが「担雪埋井」の精神で粘り強く繰り返し育成する情熱を持ち、接してくれているからだと感謝いたします。

そこでお願いですが、新入社員に貯金することの習慣が身につくよう、指導をお願いします。収入が少ないから貯金が出来ないのではなく、なぜ貯金しなければならないかという意味を新入社員に十分理解してほしいのです。

①目標・計画が明確であれば貯金できます。
②いざという時に必要な活き金を投資するためには、日頃の習慣が大切です。
③収入が増えたら貯金出来るものではなく収入が増えると胃袋もまた大きくなり出費も増えるものです。
④計画性を持たせるために社内預金制度や財形等をぜひ活用してください。
⑤会計・財務・経営コンサルティングにかかわっているからこそ、なおさら自信を持ってお客様への指導が出来るように自らの実践に心がけてください。
(平成19年4月)

コロナ禍において国は大変むずかしい舵取りを迫られています。新型コロナウィルス感染者の増減により、従業員の出社や移動の制限、施設の使用制限など厳しくするのも大混乱、緩めるも大混乱となります。生命の安全を確保しながら経済も立て直していくことを両立させていくことが問われているからです。

事業の閉鎖や倒産が増えていく中で、事業継続のために重視すべきことは、レバレッジ経営から自己資本経営への移行です。これまでは未曾有の低金利時代が長く続き、投資が先行していました。しかしその投資にも陰りが見え始めていた矢先、新型コロナウィルスの影響を甚大に受けることになり、売上の大幅な減少・その長期化によって、事業の閉鎖や倒産が相次いでいます。

このようなコロナ禍においては、資金繰りを最優先する経営スタイルに迅速に舵を切らなければなりません。損益計算書の売上や利益から儲けを見るのではなく、貸借対照表から組織は潰れる心配がないのかを見ることが重要です。

損益計算書は一年間の経営成績を示し、その年度の収益性と成長性を見ることができます。一方、貸借対照表は創業から現在までの財政状態の累積の結果であり、嘘がつけないのです。一年間だけの数字であれば、特殊事情により損益も大きく変動します。有事の危機下においては、特に運転資金の確保を最優先するため、貸借対照表経営に徹しなければなりません。

思いがけない出費はよくあることですが、思いがけない収入はほとんど存在しません。常日頃より長期的に将来を見据えた財務力の強化に取り組みたいものです。

2020年8月5日 

地域の仲間を、他法人であっても家族と思えるか(2020/07/29)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

私どもは病院データ分析システム“Libra”というシステムを全国で提供しています。このシステムを紹介しているホームページには、診療報酬改定時には特にアクセスが急増するのですが、マーケットの反応がホームページを通じて数字で可視化される時代になっていることを痛感しています。

患者さんや地域への情報発信として重要性を増す広報ですが、その本質は今も昔も変わらないのだと私は思います。

すなわち、地域医療において自院の役割は何か。その役割の質を高めていくためには、自院の取り組みだけを地道に積み重ねていればよいということではなく、役に立つ情報は積極的に周囲に発信してキャッチボールし、地域住民・公共機関・医療機関などとの連携をより密にしていく必要があります。

地域全体を見て、部分最適ではなく全体最適を常に意識し、四方善(自分善し、相手善し、社会善し、将来世代善し)という発想で取り組めば、一人の力では成し得ない多くのチカラが結集されて、地域包括ケアシステムは必ず機能していくはずです。

組織の仲間を、他部署であっても家族と思えるか。その延長として、地域の仲間を、他法人であっても家族と思えるか。

平成 23年10月に、私は「全員営業・全員参加型経営とは、大家族主義がベースである」と、社員にメッセージを送っています。

昭和 55年に入社した私がまず驚いたことは、菱村議長、小池会長を筆頭に上司の皆さんの食事のスピードが尋常ではない早さであることと、毎月頂く給料を自分自身で計算していることでした。

お客様の報酬を基本としてプラス項目とマイナス項目を差し引きして計算し、それが基本給を下回るような結果になると、反省を繰り返し、ど真剣になっていきました。

やがてそれが進化して一人別損益計算書になり、予実対比や時系列での推移を見ることで、自分自身の課題に向き合うようになるわけです。

そしてチームを預かるようになると、部下・後輩の面倒を見ながらチームで目標を達成していかなければなりません。ものの考え方を磨き、本質を共有して仲間とベクトルを合わせていくことが最も重要になります。

同志としての絆を深め、自分のことから周囲に目線を広げて、部分最適より全体最適にしていかなければなりません。

私が同志である皆様と組織力を強化できるのも、創業者である菱村議長が、『会社は社員一人ひとりのものである』と経営憲法にして打ち出していただいたお蔭です。このように、全員参加型経営・全員営業・全員現場・全員主人公の経営は『大家族主義』がベースになるのです。

それは社内に留まらず、社会においても同じです。多くの方々と出逢い、理解を深め合い、助け合い、励ましあい、手を携えて一緒に取り組み、一人ひとりが幸せを実感できる社会を実現していきましょう。(一部編集・抜粋)

(平成 23年10月)

コロナ禍において、ホームページの役割はさらに重要性を増しています。患者さん、利用者さん、同業者の方々、そして地域へと情報発信され、いち早く感染症への対応の様子が分かることになります。

大阪府、大阪市は、新型コロナウィルス感染症の集団感染が4月に発生した「なみはやリハビリテーション病院」について、厚生労働省対策本部クラスター対策班が行った現地調査支援報告書を公表しました。

4月30日時点で病院スタッフ71名、出入り業者3名、入院患者59名の計133名の感染が判明しました。その後、6月22日より新規入院患者の受け入れが再開することになりました。

院内の感染伝播経路や、感染拡大防止策や院内体制など詳細に報告されたことは、第2波以降に向けての大きな学びとなります。新型コロナウィルス対策は、一施設、一法人の問題にとどめるのではなく地域全体、国全体、そして世界が心をひとつにして解決していかなくてはなりません。

ウィストン・チャーチルはこんな言葉を残しています。
「希望を育もう。だが現実から目をそむけてはならない」

起こってしまったことを悔やんでいるよりも、今の現実を直視して何をすべきか希望を見出していくことが重要です。

さらにチャーチルは、こうも言っています。「過去をより遠くまで振り返ることが出来れば、未来もそれだけ遠くまで見渡せるだろう」

世界のあらゆる知識や知恵、創意工夫を総動員して理解し合い、助け合い、励ましあっていこうではありませんか。

2020年7月29日 

戦略は理念・哲学の中にある(2020/07/22)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

アルフレッド・チャンドラーの名著・名言に、「組織は戦略に従う」という言葉があります。ピーター・ドラッカーもこのテーゼを全面的に支持するのですが、後にイゴール・アンゾフは「戦略は組織に従う」というアンチテーゼを提唱し世界的な論争が巻き起こりました。

前者は、「競争とそれに対する戦略は外にあり、産業構造や相手によって、戦略も組織も変わってくる」という考え方です。一方後者は、「戦略の源は内にあり、組織や人の特性を生かしてはじめて実現可能な戦略となる」という考え方です。

経営の理想は、まず戦略があり、その戦略を実現できる推進責任者を豊富な人材の中から登用し、最適なフォーメーションを設計していくことでしょう。しかし、現実には、人と組織が育っていなければ、推進責任者を登用することも、フォーメーションを設計することもできません。ただ、組織の限界は戦略の限界ではありません。いまはまだできないことでも、「こうありたい」という強い思い・使命感やイマジネーションが戦略となり、組織の未来を切り拓いていくのも事実です。

このことは、「採用」についても大きなヒントを与えてくれます。

「採用」はいまや経営の命運を左右する最大の要因の一つになっていますが、自社の戦略を実現できるプロフェッショナルを一本釣りしてくるということも必要ですし、その一方で、情熱のある前向きで素直な人材を採用し、その人の特性を引き出し育て、潜在能力を発揮することのできる事業を実現していく、そのような環境をつくるということも必要です。

戦略に軸足を置くにせよ、組織に軸足を置くにせよ、重要なことは、常に変化に晒されているということです。平成22年5月、私は社員に、「変化に対する主人公意識」というメッセージを込めて、こんな手紙を送っています。

日本には世界に誇れる長寿が2つあります。

一つは女性の長寿(86.05歳)で世界一。もう一つは世界最古の長寿企業「金剛組」。創業は西暦578年、飛鳥時代です。日本には創業1000年以上続く企業が19社もあり、日本は世界に冠たる長寿企業の国です。

そのような長寿企業の特長は、ほとんどが中小企業であるということです。卓越した戦略は、戦略性の高い「理念」から生まれるものです。

しかし組織が大きくなると、トップの思い・理念は、末端まで浸透させるのが難しくなっていく。右から左に舵を切ろうと思っても、そう簡単には動かせません。組織が大きくなり、強くなればなるほど、それが当たり前になり、原点を忘れ、世の中の環境に合わせて変化し続けることが難しくなっていくのです。

しかし、変化を生み出し、変化を実行していくのは全て「人」です。優秀な従業員を担雪埋井※の精神で育成し続けることこそが、長寿企業の秘訣なのです。

我が国は、少子化・生産人口の減少、マーケットの縮小、後継者難という厳しい環境に向かっています。私たちの使命と役割はますます大きくなります。一人ひとりが主人公意識をもって超能動的に取り組んでくれることを期待します。

(平成22年5月)

※担雪埋井(たんせつまいせい):雪をかついで井戸を埋めようとしても、瞬時に溶けてしまい決して埋まらない。このように全く報われない努力でも、恐れ入りましたと敬服される段階までやることの例え(白隠禅師の言葉と言われています)。

私は後継者塾においての「事業の承継とリーダーシップのあり方」の講座の中で、日本の良き文化・風土とも言える長寿企業の秘訣をまずお話しています。

創業して10年後に生き残る企業は5%のみです。そんな中、200年以上の歴史を持つ老舗企業は世界41ヶ国で5,600社あります。そのうち日本は全体の56%を占め2位のオランダを大きく引きはなしています。

しかしそんな日本においても毎年35,000社が倒産または廃業しており、15分に1社が消えていることになります。その原因の大半はトップ層の姿勢に問題があるのです。だからこそ「組織はトップの器以上には成長しない」とも言われます。

人口減少が続いていく日本においてヘルスケア分野も例外ではありません。病院の数は1990年をピークとして年々減りつづけています。減少していくマーケットの中での舵取りは、極めて難しくなると予想されます。

そしてこれからも、世代における価値観のギャップは感性の変質を生みます。時代に合わせたマネジメントが必要となります。さまざまな従業員の価値観や適正能力を活かしていくことで、今後の組織は多様性の遠心力が働くことになります。

だからこそトップ層の求心力が必要となります。トップ層の究極の求心力とは、企業の理念磨き。戦略は理念・哲学の中にあるのです。

戦略の誤りは戦術や戦闘ではカバーできません。トップ自身が理念を磨きつづけることが組織の文化・風土を形成します。そして、従業員との一体感ある文化・風土に、トップは多々救われます。

目には見えない財産、他社にまねることのできない理念がイコール戦略となるのです。だからこそ理念磨きと理念教育が必要なのです。

2020年7月22日 

中断のときではなく、大きな変化のとき(2020/07/15)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

私は社長に就任以降も、それまで担当していたいくつかのお客様を継続して自分で訪問していました。会社のトップが現業を持つことについては異論もあるとか思います。しかし、私たちはコンサルティングをサービスとして提供している以上、現場を知らないでは会社の経営もうまくいかないと考えています。創業者の菱村はもちろんですが、二代目の小池も同様に社長業と同時にお客様を担当する一人のコンサルタントとしてやってきました。

ところで「不易流行」という言葉があります。松尾芭蕉が自らの俳論を表現したキーワードで、「良い俳句を作るには俳句の基礎を学ぶこと、だが時代の変化に沿った新しさを追い求めることも必要」といったことで、不易とは変わらないという意味です。

仕事の基本はそう変わることはありません。しかし、サービスの現場では変化に対応できなければ何の価値もありません。変わらないことと時代によって変わること。その二つをいつも意識していくことが大切だと考えています。当時、社員にもこのようなメッセージを送っています。

私事ですが、先日、午前中に休みを貰って、中学生の娘の卒業式に出てまいりました。今まで、学校行事はすべて家内に任せきりにしていました。ですから、今回の卒業式のことも“多分、私が出席するようなことはないだろう”という気持ちが家内の言葉に含まれていましたので、これは“まずいなあ”と感じたわけです。

当社は入社式には新入社員のお父様、お母様にもご参加をお願いして、どのような会社であるのかご理解を深めていただいており、その実践からすると私の家庭での任せ切りは随分、無責任であったと反省しています。

娘はその中学校の48 期の卒業生ですが、私も35 年先輩の13 期の卒業生です。卒業式は私のときと同じ小さな体育館で行われました。私が娘の卒業式で何よりも感じたのは、粛々として規律正しく、私のときと何ひとつ変わっていない卒業式であったことで、私も大きな感動を受け、思わず校歌を口ずさんでいました。

世の中には変えてはいけないこと、そして変えなければならないこともたくさんあり、校長先生はじめ先生方の、時には優しく時には厳しい指導により、周囲のすべてのことから謙虚に学ぶという姿勢が、学校の伝統として連綿と継承されていることを嬉しく思うと共に、深く感謝しました。

息子や娘と同じ中学校で学べたのも、私の父が元気で同居してくれているお陰と感謝する一方、最近では社員の皆様の中には、東京や福岡と会社の方針に沿って転勤をお願いしており、ご家族の皆様にも重い負担をお掛けしていることを申し訳なく思っております。

私たちは創業者である菱村議長から特に人格形成に必要な教育を組織の文化とするよう、いつまでも変わらない情熱をもってご指導いただき、投資していただきました。この育成精神をひとつの違いもなく伝えていくことこそ、一番難しいことであり、最も重要な人生観であると再認識した次第です。

(平成20年3月)

現在、新型コロナウィルス感染症により、生命への危険や医療崩壊など多くの危機に直面しながら、経済面でも、事業閉鎖、倒産、失業率の増加など甚大な影響を受けています。

世界は違ったものに大きく様変わりしていくことでしょう。平時の時には過去の慣習によりなかなか変われないことが、大きく変えるチャンスでもあります。企業の体質転換するきっかけをプレゼントされていると前向きにとらえたいものです。

弊社のホームページのご相談に次のような問い合わせがありました。「当院の経営者層、医師、看護師他皆様の最前線での取り組みは素晴らしいものでした。一方私たち部署は、一生懸命取り組んできたことが中断し、収束が見えないことから目標を失ってしまい、他部門の方々に協力することが出来ず申し訳なく、どうすればよいでしょうか」。

このご相談は、地域連携室より寄せられたご相談内容です。しかし、コロナ禍だからこそ、アナログによる訪問や連携スタイルを見直し、コミュニケーション手段をWEBやICT化すれば、新しい景色が広がるものです。例えば自法人の個別情報や連携システムを搭載したiPadを連携先のAランク先へ貸与するなど、新たな連携システムが生まれていくでしょう。

これまで一生懸命に構築した人間関係を切らすことなく、さらに新しいコミュニケーションシステムを交わす。このことでより強い連携、利便性と効率性が生まれます。有事の時だからこそ、過去の慣習に囚われない新しい発想や変化が生まれてくる大きなチャンス。いまは中断のときではなく、大きな変化のときです。

2020年7月15日 

「同じような気持ち」と感じることができるか(2020/07/08)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

私たちは社員皆で、月刊誌『到知』を読み、その感想をお互いに共有し合っているのですが、2018年4月号に、日本画界の重鎮・田渕俊夫氏へのインタビューが掲載されています。

田渕氏は故・平山郁夫氏の愛弟子なのですが「画風はまるで対照的」なのだそうです。最初の頃は恩師からいろいろな助言を頂いたものの、あるとき「田渕君は僕と同じような気持ちで絵を描いているから、もう大丈夫」と言われて、「それからは本当に何もおっしゃらなくなった」といいます。

これを読んだとき、私はなるほどと感動しました。事業を次世代に継承するということも、同様だと思ったからです。

継承とは、一挙手一投足まで自分のコピーを作るということではありません。「同じような気持ち」と感じることができるかどうか、それこそが「本当の精神」であり、事業や組織の核となるものです。本当の精神を、師から愛弟子へ、先代から次世代へ、先輩から後輩へと引き継いでいけるかどうか。このことに、どの先達も懊悩(おうのう)しているのではないでしょうか。

平山画伯は故・高田好胤薬師寺管長と深い親交がありましたが、この高田好胤氏の言葉は、日本経営の事業承継にも大きな道筋を示してくださいました。7年前、次世代のリーダー育成の願いをこめて、私はこのような手紙を社員にあてて出しました。

日本経営グループの組織化の歴史を振り返ると、創業者の菱村議長が高田好胤先生の『かたよらない心。こだわらない心。とらわれない心。広く広く、もっと広く。これ空(くう)の心なり。』を実践実行し、世襲制にされなかったことが根本にあります。このように成長・発展できているのも、創業者が人創りにとてつもない情熱を注ぎ込んでくださったお蔭です。私たちも世の中の環境変化に対応し、先手先手でいく必要があります。

昨年、私自身がシンガポールJCIアジア・パシフィック地域諮問協議会に参加し、世界を身近に感じるとともに、身に染みてリーダー観も変わってきました。今年の元日の日本経済新聞に、日本の課題が次のように掲載されていました。『日本での二度の奇跡は、海外からの外圧を受けて危機感が強まり、国内が一致団結して実現しました。一つ目が明治維新であり、二つ目が第二次世界大戦後の経済成長です。そして三度目が超高齢化・少子化という世界でどの国も経験したことがない未知の難題に直面していくことになります。

私たちは日本が、世界が抱える問題に果敢にチャレンジしていかなければなりません。そのためには、先頭に立って何ものをも越える突破力で躍動し、率先垂範し、組織に活力をもたらし、日本経営グループの志を実現していくリーダーが求められます。社員一人ひとりが全員主人公で、豊かな創造力、研ぎ澄まされた技術をもってチャレンジしていきましょう。

(平成23年1月)

新型コロナウィルス感染症がもたらしている国難で、私たちは未知なる難題に直面しています。安心・安全な暮らしだけを優先すれば、経済に対する影響は甚大です。事業閉鎖、倒産、失業率の増加など、世の中が大きく揺れ動いています。国や地道府県の長はもちろんのこと、組織のリーダーも、迅速に明確な方向性を示さなければなりません。

過去の経験則がない中で、日々刻々と変化していく状況。医療崩壊につながりかねない中で、新型コロナウィルス感染症に最前線で対応するためには、従業員一人ひとりのプロ意識・使命感と組織への信頼・フォロワーシップがないと実現されません。

昔より「失敗に学ぶ」とはよく言われます。失敗の実体験と成功するまでトライする粘り強い精神力からは、多くの学びがあるはずです。

同時に多くの現場で、新型コロナウィルス感染症により患者数・利用者数が大幅に減少しています。トップやリーダーの中に「コロナ禍だから仕方ない、どこも一緒だ」という諦めが出ているとすれば、そこから何か生まれるということはないはずです。

この時期でも減収していない事業所は、何が原因なのか。アフターコロナに向けて、他の施設ではどのような対策を打ち出しているのか。いまだからこそ、やっておかなければならないことは何なのか。

リーダーや現場がそのような前向きな発想・情報を出してくれるためには、トップは明るくポジティブなメッセージを届けていくことも必要です。

この時期だからこそ、苦難をはね返すチカラが組織を動かし、真のリーダー・組織の支柱が育まれる時期なのだと信じています。

2020年7月8日 

親孝行は強制強要されないとできない(2020/07/01)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

「売り手市場で、採用ができない」「人が定着しない、すぐに辞めていく」…コロナ前ですと、こんな声をお客様からたびたびお聞きしていました。一方で、その間逆のことも起こっていました。勤務環境改善やイノベーションが、メディアでも連日のように取り上げられ、AI等によってメガバンクでは何万人分もの業務量を削減する計画が発表されていたのです。

私ども日本経営グループでも、採用は昔とは全く比べ物にならないほど複雑化しています。コンサルタントとして最前線で対応しているメンバーが推進してくれていますが、広範囲にわたる様々なルートに、限られた時間と人材と広告予算をどう配分するか、高度な管理や現場の創意工夫が求められるようになっています。

学生さんの立場になってみると、どうでしょうか。社会に出る、人生を選択するという希望と不安、この選択でいいのかという迷いは、昔も今も変わらないはずです。しかし、片や、SNS等の普及により膨大な情報や口コミに触れることができる情報過多とも言われています。

このような環境において大切なことは、「選択」ではなく「決意」です。決意のためには、その会社や組織がどのような考えで人を採用し育てようとしているのか、それを自分自身で感じ取れるかどうかが最も重要なことです。採用担当者がどんな話をするかの問題ではなく、触れ合う社員が何を信じているかが具体的に伝わっていくかが問題です。

平成 22年 4月に、私は社員に、私たちはどのような願いと思いで人を採用しているのかというメッセージを込めて、こんな手紙を送っています。

日本経営の入社式の特長は、新入社員のご両親にも出席いただき、菱村議長、小池会長はじめ役員の皆様が次々とお話しされることです。新入社員には、社会人となる意氣込みの前に、育ててくださった御両親への感謝の氣持ちを深めること。ご両親には、大切なご子息、ご息女を育成していくにあたって当社が大切にしている理念・哲学をプレゼンします。

今年の入社式では、橋本次長が一番後ろの席で涙ぐんでいました。思い起こせば 3年前に彼から、『10年後、日本経営を支えていくことのできる学生をぜひ採用したい。そのための方策については、任せて頂けませんか』と言われました。横井課長はじめ、何人かの社員がその呼びかけに応じて参加してくれ、グループ全体のことを考えて主人公となってリクルーター活動に取り組んでくれました。その後、内定者研修委員長も担い、まさに2年間手塩にかけて教育してくれたのです。今年の新入社員の挨拶や明るさは、他の先輩社員にも眩しく映っているのではないでしょうか。

入社式後の昼食懇親会で、ご両親から言われました。『日本経営さんは、プロのコンサルタントを養成する“学校”ですね』。本当に嬉しい言葉です。私たちの、人づくり、組織づくりの原点です。そして、人が成長した分しか事業の成長・発展はあり得ません。

人の成長とはなにか。それは、自分のことよりも、まず周囲のことに氣づく心を育むことです。世のため人のために精進努力の生活に徹し、それがそのまま自分の喜びであり、幸福なのだと感じるような組織風土にしていきたいものです。

(平成 22年 4月)

私ども日本経営グループの創業者である菱村は、お母様が誕生日月となる社員を集めて、毎月「父母の恩を学ぶ昼食会」を開催していました。私自身も参加した時期がありますが、勤務年数や役職関係なく二時間程、社員一人ひとりの親孝行の実践内容を紹介し合い、気恥ずかしさと反省も込めながらの交流となります。

一番愛情を注いでくれているのはご両親以外にはないのだとは頭では分かっていても、いつの間にか親孝行ができず歳月だけが過ぎていくものです。ですので、親孝行は強制強要されないとなかなかできないものであるとも言われます。韓詩外伝の中にも、「樹欲静而風不正、子欲養而親不待」という言葉があります。樹が静かに止まろうと思うけれども、風が吹いてなかなかじっとしておれない。子供が「これから孝行しよう」と思った時に親はなく、親は待ってはくれない。

ですので、この親孝行からスタートし、仕事を通してお客様に尽くす思い・願いを高めていくことが、「人格能力(人間力)」を育て、周りから必要とされる人財を育てることに繋がるのです。親孝行の実践を振り返り確認する場としての昼食会が、私たち組織の文化・風土となり、人づくりの基礎をなしているのは、このためです。

後継者塾の大きな学びのテーマは、創業より連綿として続く自法人の良き文化・風土、目には見えない貴重な財産に気づくことです。トップ・経営層の皆さまは、この組織の文化・風土に勇気づけられ、幾度となく救われるはずです。

お金をいくら積んでも決して買うことができない、計り知れない財産の価値に気づき、磨きをかけ続けることこそ、後継者塾生の皆さまの大きな使命ではないでしょうか。

2020年7月1日 

リスクと痛みを伴う大きな決断(2020/06/24)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

日本経営グループの福岡オフィスのメンバーは、毎年、年が明けると「新春 トップマネジメントセミナー」を開催してくれています。

ある年、新幹線清掃チームTESSEIを創設した矢部輝夫氏 にご登壇頂けたことがあります。ハーバード・ビジネス・スクー ルの教材にも採用された「奇跡の7分間」と絶賛されるサービスがいかにして生まれたのか、学ばせていただきました。

印象に残ったのは、「ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの違い」に触れておられた箇所です。体格も脳も大きかったネアンデルタール人が絶滅し、体格も脳も小さかったホモ・サピエンスが生き残った。なぜか。違いは「実在しないフィクションを創る力」。月を見たときに竹取物語を創れるかどうかだというのです。

これは、『サピエンス全史』の著者、ユヴァル・ノア・ハラリさんの言葉です。フィクションとは、目標であり、夢であり、希望です。フィク ションをみんなで信じることで、1人ではできない大きなことを成し遂げることができた、それが地球上の覇者になった源だというのです。

私たちも、ただ目の前の仕事、自分の代だけの仕事をするのではなく、100年先、300年先までの壮大なフィクションを描いて、その夢をみんなで信じて、生き様や経験を伝え、将来世代が豊かさを享受できることを願う、そのような組織になりたいと、思いを新たにしました。

10年ほど前、当時リーマンショックで経済が急落する中、私は社員に、こんな手紙を送っています。

今年一年を振り返ってみると、年初からリーマンショッ クが拡大し急速に経済が落ち込んでいく中で、一般企業 のお客様に大きな影響が出てきました。また、9月には民主党新政権誕生がありました。組合事業は「事業仕分け」 により大幅に売上ダウンとなり、大きく事業を転換し、中国人研修生の受入事業にチャレンジすることにしました。ピンチをチャンスと捉えて革新に取り組んでくれた結果、 どうにか将来が見えてくるところにまで来たところです。

同じことを固定化して永続発展する事業は存在しませ ん。永続的に成長・発展していくためには、ビジネスユニットを絶えず新しく生み出していく必要があります。

創業者である菱村議長より頂いた資料に、「よい遺伝子を目覚めさせる方法」として以下の6つが挙げられています。①思い切っていまの環境を変えてみる、②人との出会い、機会との遭遇を大切にする、③どんな時も明るく前向きに考 える、④感動する、⑤感謝する、⑥世のため、人のためを考えて生きる。

自分の心構えを変えることが、意識の変化となって新たな自分自身の可能性に繋がります。優れた事業を生み出 すのはやはり「人」です。人材を育成し、人材に魂を入れ、願いを託すことで、一流の人物となり、組織としての人財へと成長し、はじめてビジネスユニットが生み出されます。

ビジネスユニットが枯渇したり新たに生み出せないのは、人づくりに問題があるわけです。新規事業のチャンスは、世の中の環境で左右されるものではありません。それを担うことができる人財が存在しているかどうかで決まるのです。

社員の皆様一人ひとりの 粘り強い情熱、努力とお互いに協力しあう感性豊かな創意工夫に、感謝いたします。  

(平成21年12月)

組織の文化・風土は組織の内側から崩れていくと言われます。一方、今回の国難とも言える新型コロナウィルスや環境の変化などによる外圧は、大きな苦しみや悲しみを伴うことになります。

同じ組織にいても、役割の違いにより背負う責任が違う。だから見えていること、聞くこと、感じることは全く異なるわけです。それが他責を生みだし、いつの間にか一体感を感じられない集団へとなってしまいます。

しかし、考え方を変えると、ピンチがチャンスとなる。今までの慣習により、気にも留めていなかったことや、前例がないからと一歩踏み出せなかったことが、現状を打破できる大きなチャンスになります。

新型コロナウィルスによって残念ながら休業、閉鎖、倒産といったところに追い込まれているところもあれば、今回の事を通して新しく生み出されているビジネスもあります。そのためには、トップ層と幹部が目線を合わせて周囲をまき込んで、社員一人ひとりの力を信じきることです。そのような組織では、一体感が生まれ、無から有を創りだすことになります。

この緊急時にあって、いまこそ垣根を越えてあらゆる業種、国や行政機関・自治体、そして国民一人ひとりが、手を差しのべて協力し合うことが重要です。それは、過去の戦略・組織体制やメンツにこだわるのではなく、新しい機能や発想を生み出していくということです。

「有力な選択肢」とされ、経済界からも歓迎されていたはずの9月入学の議論は、潮目が変わり世論の反発を理由に見送りとされました。これを迷走だと嗤うことは、多くの経営者はできなかったと思います。賛否両論がある中でのリスクと痛みを伴う大きな決断がいかに難しいか、同じように苦い思いをされたのではないでしょうか。

しかし、物事には最初から完璧なものはありません。実践して不都合があれば、間違っていたと改め直ぐに修正する。100年、300年先に振り返っても、その決断が良かったとされるような全体最適の思いを込める。

それはトップだけではなく、社員一人ひとりにその思いが育まれていなければ実行には移せません。危機を前にして、私たちは組織の真価が問われているのかもしれません。

2020年6月24日 

皆で信じることができる心の支えとなるもの(2020/06/17)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

松下電気器具製作所が創立されたのは、大正7(1918)年、その14 年後の昭和7(1932)年に、松下幸之助氏は事業の真使命に思い至り、第1回創業記念式を挙行します。

168人の従業員を前に、かの「水道哲学」を発表、250年先を見据えた創業者の発表に全員が驚き感動し、自らも決意を発表しようと次々と壇上に上がったと言います。会場は興奮のるつぼと化し、午前10時に開会した式典は午後6時にようやく閉会しました。

自分が創業したものが、仲間が集い、毎日の感動を共有し、やがて自分一人の手には負えないほど成長していく。仕事を任せ、部門を任せ、事業を任せる。最初は仕事の一部を任せていたものが、やがて、ただ任せるのではなく、自分の全てを注ぎ込んできた、一番手放したくないものを任せていくわけです。

一番手放したくないものだからこそ、自分が抱え込んで手放さないのではなく、仲間と共有し、やがて譲っていくわけです。有能だから任せるということではなく、そこには「真の使命は何なのか」という氣づきと、「自分のよいところも格好悪いところもすべてさらけ出して、全身全霊をかけて育ててきた」という思いがあるからこそ、道を譲ることができるのではないでしょうか。

松下幸之助氏の第1回創業記念式のようなことは、誰でもできるようなことではありません。しかし、毎日毎週毎月毎年、仕事を任せ育てる積み重ねの先に、使命を共有した、思いを同じくする組織を創りたいという思いは、誰もが同じです。

私たち日本経営グループでは、これを「熱い餅をちぎって投げる」と言います。約12年前の社員向けの手紙をご紹介します。

NK手帳の「意思決定と信頼の根源に関する基本理念」の第2条に、「社長・会長及び議長の職は、これを世襲制としない」と明記され、そして第3 項には、「会社は社員一人ひとりのものであり、日々の活動は社員一人ひとりの責任に委ねられる」とあります。

中小企業の組織力を強化する上で真に重要なことであり、お客様のあらゆるニーズに応えることが私たち自身の組織強化につながったのです。

私たちの組織は、社員一人ひとりが認知され、個性あふれるタレント性を持ち、その個性が融合して専門部門を構成し、連帯心を育みながらお客様のニーズに真剣に向き合えるフィールドがあります。

私も忙しくしているときに、菱村議長(創業者)からアドバイスとして「面白い仕事ほど、部下に投げつけて与えることが必要である」と教わり、小池会長(現名誉会長)からは「自分自身が創りあげたものは手放したくないものだ。しかし、潰れても仕方ないくらいの気持ちで部下に委譲することが大切で、潰さないための仕組みを構築することが事業の仕組みになっていく」と教えて頂きました。

社員を深く知り、社員の力を引き出すために「熱い餅をちぎって投げる」社風は、創業者からの大きなプレゼントです。

最近では『人材育成・担雪埋井こそが人材育成の王道』や『緑風』、外部の雑誌などにおいても、活躍している社員が、役職や経験年数に関係なく、写真入りで登場し紹介されています。これは、世の中では出る杭は打たれますが、日本経営グループは出る杭はどんどん伸ばそう。そして、お父様、お母様はじめ、ご家族の皆様にも紹介された出版物をお送りし、共に喜びを分かち合い、大きな幸せを実現していきたいと願いです。

(平成20年9月)

今年4月に、縁あってキャリア採用により、元松下電器産業の社員が当社社員として加わって頂きました。松下電器産業に34年勤務し、当社ではシステム部門の強化のため入社頂きました。

キャリア採用の場合、キャリアや能力が充分であっても、転職した会社の文化、風土になじめるのかというハードルの高さがあります。特に有資格者集団である専門職のウエイトが高いヘルスケア分野では、有資格者だから出来て当り前という前提で業務が舞い込んできます。しかし、同じ業種であっても組織によってシステムや考え方の違いから戸惑うことが多々あるものです。

当社ではキャリア採用の面接において当社のフィロソフィーをお渡しして感想文を提出して頂きます。理念は組織の社会における存在意義ですが、フィロソフィーとは、その組織の構成員一人ひとりの心のありようを表現しています。人を大切にする、人創りの文化はまさしく前職場と重なり共鳴するところが多くあったようです。心の震えがこちらにも伝わってくるような感動的な感想文でした。

私は根っ子に通じるものを感じ、当社の「利生塔」のお詔りに誘いました。企業の慰霊碑は高野山をはじめ全国でもよく見かけます。しかし、利生塔となるとなかなかみかけることは少ないものです。

利生塔とは、室町幕府を開いた足利尊氏が、夢窓国師の勧めにより戦没者の菩提を弔うとともに国家の安寧を祈るため、全国各地に安国寺と利生塔の建立に努めたことに由来します。それが今日では企業の創業精神を一つの間違いもなく継承していくために、企業の根源生命を祭祀するところとされています。

私は時に思い、迷い、苦しみ、決断を迫られた時に心を静め、創業から大切にしていることを呼び起こして自問自答するために、いつの間にか足を運んでおります。

同志が集い、決断し、挑戦していけるのは、やはり、そこに皆で信じることができる心の支えとなるものがあるからなのだと思います。

2020年6月17日 

見られたくない、認めたくない自分を深く知る(2020/06/10)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

中央官庁の幹部人事は、ときに国会延長の影響を受け大幅に遅れることがあります。私たちの仕事と最も関連が深い厚生労働省も、幹部の人事異動がずれ込むことがあります。

お役所の人事は、運不運が大きいとよくいわれますが、運不運だけで人事が決まるものでもありません。そこには上司先輩、仕事との出会いがあり、そして人事が繋がっていくのだと思います。

何年も前になりますが、ある厚生労働省の幹部の方から、人事について話を伺う機会がありました。歴史的な政権交代があり、「政治主導」の名の下に官僚が政策から遠ざけられていた時期のこと。

この方は「毀誉褒貶」することなく、政権が変わっても自分たちがすべき仕事を粛々と遂行する。それが国民のために仕事をするという喜びだと言われていました。

また別のときには、この方が上級の職位に就かれたときだったのですが、「虚心坦懐」と言われていました。いわゆる高級官僚と言われる方の中にも、色々な人がいるのだなと感じたものです。

周りがどうあろうが、自分の役割に対する姿勢はいささかも変わらない。私も日々の仕事がある幸せを常に噛みしめながら、「より多くの仲間と仕事する喜びを作り上げていくこと」を自分の役割として取り組んでいこうと決意したものです。

今年もあと一週間を残すのみとなり、年の瀬を感じるようになりました。一年過ぎていくのが早かったり、遅く感じるのは人それぞれだと思います。一年が瞬く間に過ぎるということは、やはり一日一日が充実してやるべきことがあり、周囲から必要とされていることだと思います。

朝早く起きて仕事や勉強のリズムを作ったり、家庭では、奥様がご主人や子どもたちのために、毎日、誰よりも早く起きて朝食やお弁当の支度などで忙しくされたり、中には職場では働き者として、子どもさんにとっては優しいお母さんであり、ご主人にとっては心遣いあふれる奥様と、何足ものわらじを履いて獅子奮迅の活躍をされている方もいらっしゃると思います。

創業者の菱村議長より、人は3つの恩(①父母の恩、②衆生の恩、③社会の恩)で生かされていると教えていただきました。いま、自分が存在し、生かされているのは先祖、父母の流れがあってこそであり、「親孝行したいときに親はなし」とならないように、日々の感謝の心を表していきたいものです。

また、肉や魚や野菜を食しているということは、生きとし生けるものを殺生して人間は生きているわけであって、だからこそお米一粒も粗末にしてはいけないと小さなころから皆様も教わったことと思います。

現在でも世界に目を向けると、内戦を繰り広げている国や、4秒に1人が餓死しているという事実があり、いかに日本が安全で恵まれている国かということが目線を変えると見えてきます。日常の、当たり前のことに意識して感謝することは、まずは自分のことよりも周囲に目を向ける心を養うことになり、他責から自責へ意識を傾け、そして感謝の心が生まれてくるものと思われます。

(平成19年12月)

昔、あるお客様の事業承継で、このようなことがありました。
父が起業した会社に入って15年、言い争いの毎日であった。
・いつも父の話を素直に聞けず口を挟んでしまう
・何か言われるたびに、「そんなことは言われなくても分かっている」と言い返す。

あるとき何かのきっかけで、そんな自分の根っ子にあるものは、あれだけ反発していた父親であったことに気づいて愕然とした。自身の考えや振る舞いの「元のもと」が両親であることに、ハンマーでガツンと頭を殴打された思いを経験した…。

人はついついクールに見せようとしたり、斜に構えて人と違うことを言ってしまうものです。しかし、本当の自分とは何なのか?よく見られようと演じた自分でなく、言われたくない、見られたくない、認めたくない自分を深く知ること。この内省の深さが、仲間や家族を受容する力となります。

そう考えると、本当の自分を曝け出し、自分にぶつかってくれたお父様の姿は、違ったものに見えてきます。私のことが、嫌いで憎くて陥れようとして言っているのではない。本当に心配し、真に成長を願い、心から幸せになってほしいと祈ってくれているからであると気づくことになります。

「恩ということを教わる」「恩に気づき恩に報いる」
親子である以上、心の奥底では気づいているのです。親の愛情や素直な心の大切さ、ついつい反抗的な態度をとってしまう自分の愚かさに!

しかし親子であり、同じ職場であり、同じライセンス、同じ環境となると、感謝の心を育むのは出来そうでできにくい。そう簡単ではないことも現実です。

2020年6月10日 

私は本当に幸運だったと思います(2020/06/03)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

働き方改革関連法が可決・成立したとき、私たちは大変な危機感を覚えました。単に法令を遵守するだけでは、現場のオペレーションが回らず経営危機に陥ってしまう。次世代に向けて経営のあり方そのものを根本から変革しなければ、乗り切ることができない。

お客様にとっても大変な危機であり、私どもの組織人事のコンサルタントも、全国の現場で組織改革のコンサルティングを展開しました。また、一般社団法人 医療介護の安定と地域経済活性化フォーラムでは、病院経営層を対象とした少人数の会員制「医療介護経営研究会(東京)」が新たに立ち上げられました。その初回のテーマが「医師の働き方改革と偏在解消」だったのです。さらに、同時期にスタートした「病院長候補者及び後継者研修プログラム」も、ご案内から2週間ほどで定員オーバー。一年後の開催となる第二期のスケジュールをご案内する運びとなりました。

このように病院・介護福祉の経営者の皆様が何に悩まれているのか、我が国がもう待ったなしで何を乗り越えていかなければならないのか、その正体がハッキリと姿を現してきたように、当時の私は感じていました。

現在、私たちを取り巻く環境はさらに厳しさを増しています。しかし、どのように大きな課題であったとしても、解決のための道筋は必ずあります。それは、異質なものに触れ、学び、人脈を広げ、皆で考えることからスタートします。

35年以上前、私もまだ若く、連日連夜仕事に明け暮れていた時分に、「学び」が人生を切り拓くのだと、上司から直伝されました。そして平成23年10月の社員の給与袋には、こんな手紙を同封しています。

昭和 59年、私にとって人生の中で大きな出来事があった年でした。肝臓を悪くして34日間の入院を、人生で初めて経験しました。

無事退院すると、海外視察に参加してはどうかとの話をいただき、天にも昇る嬉しい思いで両親に話しました。その時、本当に喜んでくれた母が、私の入院中も体調がすぐれず、2 ヵ月後に精密検査を受けることになりました。

母は『私の方は大丈夫だから、気にせず海外視察に行かせてもらいなさい』と、迷っている私の背中を押してくれました。視察から帰ってきた私が父より知らされた母の病名は肺がんでした。毎朝 6時に母の病室を訪ね、一時間ほど会話してから出社するということが、一年間続きました。

そのような中で参加させて頂いた海外視察でしたが、小池(現名誉会長)との一つひとつの行動が、あらゆる点において新鮮に映りました。視察、コミュニケーション、遊びと、寝る時間を削り寸暇を惜しんで熱中されていました。

視察半ば、現地で中間レポートを作成するよう指示を受けました。提出すると、思いもかけない注意を受けました。『視察先の内容は録音テープを聴けば分かる。アメリカまで来てカラダ全体で何を感じ、何を学び、帰って何を具体的に実践するのか、組織の中でどのように役立てようとするのか』。

私は徹夜でまとめ、なんとか合格点を頂いたのですが、『自分で考えることも重要だが、一緒に参加している皆さんは、私たちとは異なる業種で立派な考え方や素晴らしい取り組みをされているはずだ。そのような方々に移動時間でも食事中でもあらゆるところで自ら喰らいつき、何を学びどう実践すればいいのか教えてもらえることに、価値があるのだ』と直伝されたのです。

(平成23年10月)

新型コロナウィルスの国難により、医師の働き方改革は大幅に後退したように感じます。医療の最前線においては昼夜を問わず通常の医療行為も継続しながら、新型コロナウィルス対応に不眠不休で肉体的にも精神的にも限界に近く日々奮闘して下さっている皆さま。高い倫理観と正義によって、自己犠牲を伴い闘って下さる医療従事者の方々の存在があるから、私たちは恐怖と混乱に陥ることなく生活を送れています。

そして、このような危機にみまわれた時にも、意気に感じ身を挺することができる人づくりとは、親や上司の背中を見て育つだけでなく、やはり公私共に関わってくれる先輩・上司の日々の格闘があるからこそです。

しかし近年、その上下関係に異変が生じています。目標としたい先輩が職場にいると感じている若者は、2019年の労働白書によると27.9%に留まっているようです。善き先輩を持つことは人生の豊かさにつながり一生の宝となりますが、実際に善き先輩に巡り会える人は決して多くはないのかもしれません。

タテ社会において利害関係だけで結ばれた先輩・後輩関係であれば、お互いが足をひっぱり合い、苦しめ合うだけの関係となりかねません。「目標としたい先輩」が少なくなっている原因の多くは「先輩の姿」にあるとされます。周囲を気にして「自分を良く見せよう」という思いは、自己中心的となり言動を薄っぺらくしてしまい、後輩はその心を敏感に感じ取ります。

自分は先輩・上司より厳しく育ててもらったから今がある、だから後輩にも厳しくする、という人がいます。この場合、厳しくとも目標とされる先輩とそうでない先輩に分かれます。その違いは、自身の損得勘定で接しているのか、相手のことを深く考え、愛と情をもって厳しく接しているのかの違いです。

私は入社時より二代目からは厳しく注意を受け、なんで私ばっかり叱るのだろうと感じる日々でした。しかし、いま思い起こすことは、何度も自宅に泊めてもらい仕事のイロハを体に叩き込んで頂いたり、私の失敗に弁償金を負担して頂いたりと、注意を受ける何倍もの愛情を体全体で公私にわたり包み込んで頂きました。また、役員に就任してからは創業者より経営の要諦。哲学を学び、人としてのあるべき姿を正しく導いて頂きました。

部下は上司・先輩を選べません。私は本当に幸運だったと思います。

2020年6月3日 

理解し気づくには、時間が必要(2020/05/27)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

皆さんは「胡蝶の夢」をご存知でしょう。荘子が浮かんだ方は中国史のファン、司馬遼太郎が浮かんだ方は時代小説のファンということでしょう。

司馬遼太郎の胡蝶の夢には、佐倉順天堂創始者の息子で、曲折ありながらも14代将軍、徳川家茂の侍医、維新後は帝国陸軍の軍医総監となった松本良順と、彼の元にやってきた島倉伊之助(司馬凌海)が描かれています。伊之助は、悪魔的な記憶力と語学力で良順を助けますが、一方で、コミュニケーション能力がみごとに欠落していました。そのため、様々な問題(逸話)を引き起こすのですが、彼にはその自覚がありません。他人との関係がギクシャクしたまま、最期は旅先で孤独死してしまうのですが、どんな優れた能力を持っていたとしても、コミュニケーションが取れなければ、その才を発揮する場や評価も得られないという事例として受け取ることができます。能力と評価はイコールではありません。そこには優れた人格能力も求められていると感じます。

私も社員の皆さんに、給与袋に同封した手紙の中で、たびたびメッセージを伝えています。

創業者である菱村議長が恩師として仰ぐ方の中に、TKCの飯塚毅先生と、日本創造経営協会の薄衣佐吉先生がいらっしゃいます。飯塚先生からは職業会計人の原点をあらゆる視点から学び、薄衣先生からは人づくりの原点を学び、「自利利他」の精神を組織力の基礎として、社員一人ひとりに徹底して浸透させることが何よりも大切であると、菱村議長、小池会長を通じて教わってきました。特に、人格能力の形成については、会社や上司が意識して時間を創り出さないと、目の前の仕事にだけ追われてしまい、「忙しい」とネガティブな心で片付けて、いつまにか「心」を「亡」くしてしまいます。

日本創造経営協会の創造経営教室には、社員の皆様の初級コースから参加してもらっています。(中略)創造経営の先生方からご指導いただくなかで、参加者は以下のようなことに気づいていきます。

1.人は勝手に育つと思っていたが、そうではなく教えて育む気持ちが必要と感じる。
2.「辞める人は辞めるもの」「ついてくる人はついてくるもの」という考えにとどまり問題であると感じる。
3.相談にくる部下の話は聞くが、相談に来ない部下とのコミュニケーションが不足していると感じる。

私たちは仕事が少しできるようになると、ついついここまでできるのは自分の力と過信し、視野が狭くなります。専門職としてプロの実務能力を身につけるとともに、それ以上に人格を磨かないと組織は作れず、単なる集団に留まってしまいます。

家庭においても社内外でも、自らどんどん話しかけ積極的に対人関係を深めていくことこそが、創造への誓いの実践を磨いていくことになります。… (中略)…菱村議長のご指導にあるように「恥ずかしくとも自分自身の創造への誓いをご家族に見てもらい、反省し、共に成長する習慣を身につけること」です。日々の反省が人格を磨くことになります。私も含め、ほとんどの人は他人から動機付けされないと頑張れません。重要なことは常に共に刺激しあいフォローし続けることです。

(平成20年6月)

後継者塾においては、全国より参加者が集いソウルメイトとして意見交換し、励ましあっておられます。上下関係も損得勘定もなく 胸襟を開いてくださり、ただ純粋にトップとして経営していくことへの不安、悩み、ストレスをお互いに共有し、課題解決に向けて覚悟を決めて実践躬行されている姿があります。

一方、親子間承継では、創業者として尊敬しつつも、親子であるが故に甘えが生まれ、親は子供が何故言うことをきかないのか、子は任せるからなと言って何故ことごとく口出ししてくるんだと、ギクシャクしてしまい、一番迷惑を被るのは何よりも大切な周囲のスタッフです。私もあるお客様の病院で、事業承継に向けて、ファミリーの理事会にオブザーバーとして参加要請を受けたことがありました。当初の5年間ぐらいは、親子喧嘩の仲裁役でした。

しかし意見の違いはあっても、双方とも決して投げ出さず、継続してコミュニケーションの場を持たれたことが立派でした。ジワジワと共通点が見え始め、子供である後継者がいつの間にか、自分自身が嫌っていた父親にそっくりな一面があることに気づかれ始めたのです。

一番後継者のことを知りつくし、深い愛情と大きな期待があるからこその、表情・言葉・態度であったのです。そのことを理解し気づくには、時間が必要です。だからこそ粘り強く、しぶとく、意見交換する場が必要なのです。

継がせる側の思い願いや期待、継ぐ側の不安、悩みや躍動の先にあるのは、何としても地域医療に貢献しなくてはならないとする社会貢献意欲です。

その思いさえあれば、意見の違いはやがて埋まり、新しいものを生み出し、スタッフや皆様を幸せに出来る。私はこのお客様から、そのような確信を頂いたのでした。

2020年5月27日 

世界は違ったものになっていく(2020/05/20)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

いまから5年ほど前、医療界では地域医療構想が話題の中心となっていました。地域医療構想も最終的にはいかに地域包括ケアシステムへ連動させていくかが大きな目標となります。あえて「システム」としなければならなかったのは、それだけ家庭や地域社会の力が低下していたからでしょう。社会的な仕組みとして構築しなければ、高齢者等のお世話ができないほどの状況になっていたことを意味しています。

そもそも介護保険自体が、核家族化や少子化、都市部への人口集中など、わが国の発展の一面の代償として現れた家族介護力の低下を補うため、介護を社会化したものです。そして、いつしか親や祖父母の介護する義務ではなく、「介護をする権利」さえ放棄するようになったということを指摘する声も出ていました。もちろん問題は単純ではありませんが、「できない」ことを放置しておくことは、成長の機会を放棄しているように思えてなりません。これは私が当時から日常的に考えていたことです。

一方、マネジメントの現場では、家庭があるから「できない」、仕事があるから「できない」ではなく、私どもの職場においても、平成19年の段階で70名の在宅業務が機能していました。当時の私のメッセージをピックアップします。

現在、グループの中には在宅業務の機能があり、70名のスタッフが登録し、家庭で家事をしながら業務を進めてくれています。実務能力のある方が子育て等の事情で勤務できない時期に、家庭にいて都合の良い時間帯を利用して仕事ができるということで、スタッフの皆様からも喜んでいただいています。

日本ではこれからどんどん少子化が進む中で大きな問題が想定されます。それは、家族的なかかわりが薄れ、個人化がさらに進み、高齢者の在宅でのフォローが出来ず、施設に頼らざるを得ない状態になっていくことです。

日本人は農耕民族であり、家庭という最小単位の集団が大きくなって、自治会など地域社会、市町村、都道府県そして国という構成をとってきました。そして、家庭では子どもの教育としてお年寄りにやさしく接するという基本がありました。子どもが親の面倒を見ることが孫への教育でもあり、孫は祖父母から躾の領域で大きなプレゼントを貰っていました。真に必要な心は家庭という単位の中で培われてきたのです。

また、子どもが母親を必要とする時期に、毎日繰り返しわが子の成長を願って体全体で抱きしめ、限りない愛情を注ぐことこそが日本の豊かな発展につながる根幹ではないでしょうか。

私たちは創業者の菱村議長から毎月一日の議長昼食会で、父母の恩について教わり、その中で「山よりも高い父の恩、海よりも深い母の恩」であり、母親の愛情は無限に子どもに注がれるもので、感謝してもしすぎることはないと繰り返しお聞きしています。

我々のグループの中に在宅業務機能をさらに拡大していくことは、雇用創出だけでなくご両親や子どもとのかかわりを少しでも深めていただくことにつながり、大変意義あることだと確信しています。

(平成19年10月)

そして今、新型コロナウィルスによる国難により、出来る限りテレワークへの移行が推進されています。中小零細企業であったり、医療や介護現場では職場への出勤を余儀なくされているところもありますが、今回の国難により、世界は違ったものになっていくことは間違いないでしょう。AI化、ICT化、ロボット化はすべての業種において一気に進み、コミュニケーションの取り方、仕事の進め方は格段に向上するとみられます。

しかし、私どもが在宅業務機能を20年ほど前から進めてきた理由は、今回のような国難を想定していたわけではなく、手紙に書かせて頂いたような「家庭・家族」の繋がりを大切にしたいということがきっかけです。このことを、忘れてはならないと思うのです。

現在、90%以上の社員がテレワークで仕事をさせて頂いておりますが、それは医療・介護・流通など、あらゆる分野でリスクに晒されながらも活動してくださっている方々がおられるからこそです。このことに感謝し、繋がりに感謝して、私たちがご支援できることが何かを考え、行動していきたいと思います。

どの時代においても、商品・技術・サービスが社会にとってどのように役立ち貢献できるかが問われます。今回の国難を通じて、見えないリスクに備えることが鍵となることを思い知らされました。そして同時に、見えていない可能性に挑戦していくことも、同じく鍵になるのだと、希望を持ちたいと思います。

2020年5月20日 

一人ひとりの顔を思い浮かべながら、賞与を決定(2020/05/13)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

すでに承継された皆さまもそうだと思いますがが、私も社長に就任して以降、それまでより多くの方々にお会いする機会が増えてきました。医療あるいは介護・福祉の世界だけでなく、企業や様々な団体の方々と面識を得るようになりました。そして、改めて世の中には色んな人がいるのだと感じたのです。劣等感の塊のような私にとっては、身が縮むような時間を過ごすことが少なくありませんでした。

そんなとき、同時に考えたことがあります。それは、だからといって卑屈になることはないということです。人間の能力は頭の上から見下ろしても、足元から見上げてもその高低はよく判別できません。おなじ地面にいて眺めるから多少の高低が認識できるのです。私が感じた違いについても、そういうことだと考えたのです。

だからこそ、私たちは謙虚でなければならないし、また絶望することもないのです。そんな思いから、当時、私は下記のようなメッセージを社員にしたため、給与袋に同封しました。

先日、無事に夏季賞与を支給させていただきました。社員の皆様より「ありがとうございました」という言葉をたくさん頂きましたが、逆に私の方が皆様に「ありがとうございました」「お疲れ様でした」と心から伝えたいと思います。皆様が日々一生懸命、熱心に努力し職務に取り組まれたことが、お客様よりご評価いただく結果となった賜物と感謝いたします。

私をはじめ、各役員が行っているのは、各部門から上がってきた評価について最終決定することですが、社員数も多くなり、一人ひとりを一から十まですべてを把握し、あらゆる角度から総合的に評価することは非常に難しく、また基準はあっても最後は人が人を評価するわけですから、完全というものは存在しませんが、できる限り各役員が力を合わせ、一人ひとりの顔を思い浮かべながら、公平、公正な評価を考えて決定しています。

物の見方、考え方の中に三原則の思考があります。それは、物事を長期的に、本質的に、総合的に捉えることということです。ある時点の評価だけを見たときには不合理に感じることがあっても、長期のスパンでならして見ると、本質的にも総合的にもバランスが取れてくるものです。一時的は納得しにくいこともあるかもしれませんが、人の育成と同じように長期的に見れば自己評価と他者評価が接近してくると思います。

(平成19年7月)

さて、後継者塾生の皆様は全国よりご参加頂き、経営について試行錯誤しあえるラーニングコミュニティーを創っておられます。不安や悩み、喜びなどを共有できるソウルメイトと呼べるでしょう。

先日もご多忙な中、一期生・二期生合同で「コロナ対応意見交換会」が開催され、感染防止の対策、感染が出た場合に備えてのリスクマネジメントなど情報交換。その後もChatworkで生の情報を共有いただけ、かけがえのない場に育てていただけているのではないかと思います。医療現場では、新型コロナウィルス対応だけでなく、通常の医療行為も継続しておられ、皆様が感染への危険や不安を伴いながら治療に当たっておられることに感謝申し上げます。

経済への影響も甚大です。事業閉鎖、倒産、就職の内定取り消しなど、世の中が大きく揺れ動いています。しかし、このように生命への危険にも晒されている状況下では、平穏に暮らせるだけでも安堵するのですが、いざ平時に戻ってみると、感謝の心が薄らいでいくものです。

これっぽっちの昇給しかないのか、正当に評価されていないなどと不平不満が出てきます。「皆を公平に」ではなく、「私をどう評価するのか」「私たちの部署のほうが頑張っている」などと、周りが仇であるかのような発言が出るかもしれません。

しかし私たちは、それを恐れたり非難したりするのでなく、まず毎期昇給ができることへの感謝、社員一人ひとりの顔を浮かべながら評価できたことへの感謝を、同志の皆さんにきちんと伝え、感謝を分かち合いたいと思うのです。

2020年5月13日 

思いを、手紙としてお渡ししてはどうか(2020/05/06)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

マネジメントを発明したのは、ピーター・F・ドラッカー氏。そのドラッカー氏の唯一の自伝が、亡くなるおよそ1年前に日本の読者のために書き下ろした「私の履歴書」(日本経済新聞)だと言われています。

ドラッカー氏は、「私の履歴書」の最終回で、こう述べています。「欧米人と日本人を交ぜてパーティーを開くとしよう。何をしているかと聞かれれば、欧米人は『会計士』、日本人は『トヨタ自動車』などと答えるだろう。自分の職業ではなく自分の組織を語るということは、組織の構成員が家族意識を持っている証拠だ。ここに日本最大の強さがある。日本の強さを忘れないでほしい。」

プロフェッショナルとしての技術・経験も、「家族意識」を育む組織でこそ活かされるということを、肝に銘じたいと思います。お客様の組織でも、私たち自身の組織でも同じで、そのような組織作りこそが、トップの役割だと思うのです。

私がかつて、給与袋と一緒にしたためていた、社員向けに宛てた手紙をご紹介します。

先日、社員の方の結婚式に招かれ島根県に行かせて頂きました。披露宴で初めてご両親様とお会いするのではなく、お母様が入社式や三者面談に会社まで足を運んで下さったお陰で、最近はご家族の皆様を非常に身近に感じることができ、嬉しく思っております。

私は仲人も30 代に4回させて頂きましたが、若さと私自身の実践不足から薄っぺらな内容であったのではと反省させられる出来事がありました。

その様に感じましたのは、社員との昼食会で、菱村議長同席のもと、皆様の前で講話を初めてさせて頂いたときのことです。

菱村議長から、溢れんばかりの資料を用いて進め方を丁寧に教えていただく中で、母の恩に対する創業者の思いの深さを私自身が再認識する機会を頂きました。

すばらしい税理士やコンサルタントになるためには、優れた知識や実践力以前に必要な資質があります。まず身近な存在であるご両親を喜ばせることが出来なくて、会社やお客様、社会から正しく評価されるわけがない。このことを最近皆様によくお話しするのも、創業者の理念・哲学からくるものです。

特に、「海よりも深き母の恩」、「計り知ることのできない母の恩」とも言われるように、素直な気持ちを伝えるためにも、電話ではなく手紙をお父さん、お母さんに書いてもらいたいとお話しさせて頂きました。やさしくすばらしい言葉であっても、電話では消えてなくなってしまいます。

手紙であればいつまでも手元に残り、大きな心の支えになってくれます。身近な存在なので恥ずかしくて言えないことも、手紙であれば不思議に心を落ち着かせて清らかにしてくれ、素直に表現できる魔法があります。親が亡くなってからではなく、出来る限り若いときに親孝行を実践し、皆様とともに成長させて頂きたいと思います。

(平成20年10月)

さて、後継者塾のご案内に訪問したときのことです。80歳代の現理事長(父親)から承継を予定されているご息女の方の不安や悩みをお聞きする中で、「一番の重圧はなにか」ということが話題になりました。それは「お父様とのコミュニケーションが取れない」ということでした。目に涙を浮かべながら、そう語られるのです。

同じ職場で同じライセンス、同じ診療科となると、同族であっても教育環境の違いや世代間ギャップに苦しむことは当然で、事業承継がお家の一大事であることは、古今東西どの組織においても繰り返されてきたことです。

私は、自分も毎月社員に手紙を送り続けたことを紹介し、「その思いを、手紙としてお渡ししてはどうか」とお勧めしました。すると何か気づかれたのか、「今まで父には一度も手紙を書いたことはありませんが」と、表情に明るさが戻ってこられました。

また、別のシーンでは、第一期の卒業生の方で、4月1日からめでたく新理事長にご就任された方がおられます。

WEB会議で先代ご夫妻とお話をさせていただくと、先代の奥様が大変お喜びになっておられます。「新理事長より素晴らしいプレゼントを頂きましたわ!」と言われるのです。

何かとお尋ねすると、それは新理事長が給与袋に挿入された、スタッフの皆様への温かいお手紙でした。新型コロナウイルス対応への労いと励ましの言葉、新入スタッフの皆様への歓迎と感謝の言葉が一杯だったのです。

お父様に手紙を書こうと思い立たれたご息女、新理事長の手紙に大変お喜びの先代ご夫妻。それぞれの笑顔は、私は忘れることができません。

2020年5月6日 

行うべきタイミングがある(2020/04/29)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

現在、新型コロナウィルスの国難により病院後継者塾の第二期生の皆さまには中断しご迷惑をおかけしております。運営メンバーを中心に、動画によるマネジメント分野の配信と次回第三期での補講を計画しておりますので、改めてご案内差し上げたいと思います。

ところで、病院後継者塾と平行して「次世代介護経営者塾」が開催されているのですが、その第二期が2020年6月20日より27名でスタートする予定でした。

私は延期もやむを得ないと感じておりましたが、担当責任者からはなんとかライブの生配信で実施したいと申し出がありました。

その担当者が私の目の前で悩んでいたことは、「動機善なりや私心なかりしか」でした。お客様のご期待に答えたいという熱い思いと延期することの収入面の減少ということも頭をよぎるという複雑な心境を、素直に吐露してくれました。

私が彼にアドバイスしたのは、1999年に有効求人倍率0.48の時代にいた方が1,700万人いたということです。現在40歳前後になる「就職氷河期世代」の方々の中には、正規雇用に就けなかった方も多く、仕事を通じての自己成長の機会が少なく自信を喪失し、自信喪失社会の到来、社会問題となっている。政府も「厚生労働省就職氷河期世代活躍プラン」に基づき、各種施策を積極的に展開していくようです。

このように「自己錬磨」「自己成長」の機会は、行うべきタイミングがあります。延期したり中断したりすれば将来において禍根を残すことになります。個人にとっても組織にとっても社会にとっても、何もいいことはありません。できる限りの方法を駆使して、実行していこうと励ましました。

しかし後で考えてみると、彼が悩みぬいて相談してくれた姿勢に、私が逆に教わっていたのだと気づかせてもらいました。

講演する機会も自粛となり、お客様への直接の訪問も少なくなり、コミュニケーションはWebミーティングが主になりました。私がいまできることは何かと考えたとき、皆さまに「塾長のつぶやき」なるメッセージを配信することだと考えたのです。

「世界は元に戻らない」という言葉もあります。自粛ではなく、一人ひとりが、私自身も、自分に何ができるかを考えて、次への一歩を踏み出す世の中でありたいと思います。

2020年4月29日 

新入社員への激励メッセージ(2020/04/22)

第二期生の皆さま

皆さま、いつもお世話になりありがとうございます。

皆さまにおかれましては、本来4月は新入スタッフを迎えて教育を実施、それぞれの部署も活性化されている時期かと思います。しかし、今年は新型コロナウィルスがあらゆるところに影響をきたしております。

関西のある病院では、新入スタッフの内約30名が入職前の1、2か月の間に海外渡航歴があったため、一か月間はeラーニングでの新人研修に切り替えられたそうです。

私どもも長年にわたり、ご父兄の皆さまも入社式にご招待し、新入生の同志の仲間入りについて喜びを分かち合って参りました。
しかし、今年度は初めて入社式を延期。別のスタイルでお祝いする予定です。新人は現在、自宅や寮でeラーニング研修となっております。

本来、この時期は職場での合同研修や合宿、現場でのOJT教育を受けているはずでした。守・破・離のうち、まず守である社会人としての型づくりをする大切な時期です。
職場の先輩・上司とアナログでコミュニケーションをとり、人と人との人間関係を高め絆が築かれるのも、この時期です。このようにして組織の文化・風土に溶け込み、人間力を磨いていく第一歩を踏み出すことになります。

今この時期に新社会人となる皆さんにとって、これをピンチととらえるのかチャンスととらえるのか。それは、一人ひとりの自覚と心の柔軟さにかかっていると思います。

かく言う私も、デジタルでのコミュニケーションなどあり得ないという世代ですが、止むに止まれず、今では社員やお客様とはWebミーティングを実施しています。やってみると対面でのミーティングとはまた違い、よい雰囲気で対話型のコミュニケーションがとれているような気がします。

子供の頃からゲームやIT機器に慣れ親しんで育っている世代の皆さんは、次世代のデジタル革命の担い手になることは間違いありません。
経営者や幹部こそ、次世代の担い手の「当たり前」に歩み寄っていく姿勢が必要なのかもしれません。

私どもの創業者である菱村が、新入社員に宛てた激励のメッセージをご紹介します。入社式も延期になり、まだ一度も顔を合わせていないことを残念に思った創業者からのメッセージだと思うと、短い文章ですが思いが込められているのだと思います。

2020年4月22日 

最前線に立って最善を尽くしておられる皆さまに(2020/04/15)

第二期生の皆さま

日頃は大変お世話になり、ありがとうございます。

現在、新型コロナウィルスの影響により講座が中断となり、ご迷惑をおかけしまことに申し訳ありません。

全国的に医療崩壊ギリギリの中、今この瞬間にも地域のためにスタッフの皆さまと共に最前線に立って最善を尽くしておられる皆さまに、心からの感謝を申し上げます。

新型コロナウィルスにより、阪神淡路大震災や東日本大震災とはまた別の次元で、日本が世界が大きな危機に直面しております。
ビル・ゲイツ氏が5年前、ある講演会の中で、「現代の人類最大の敵は核ではなくウィルスであり、現代社会はこの新しい脅威に対しては、全く準備が出来ていない」と警鐘を鳴らしていたと言います。

良い時にこそ気を緩めずに一層の努力を。良いことは悪いことの始まり。先行管理の大切さを学んでいるんだという意識で、知恵と工夫を絞り切りたいものです。
どんな困難にも立ち向かう、勇気と意思をもって一人ひとりが自覚を高め協力し助け合っていきましょう。

先日、私どもの創業者である菱村が、幹部社員向けに宛てた激励のメッセージと日本経済新聞社の社説を添付させて頂きます。

まずコロナを乗り切ることはもちろんですが、コロナ後の世界はどうなるか。世の中の多くの経営者は、そこを見ているのだと思います。ぜひご覧になってください。

2020年4月15日