お役立ち情報

地域のお困りごとを解決する介護事業者の役割とは

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

一般的な営業と地域営業の違い

  • 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントについて、現場のコンサルティングの実例を踏まえてお伝えする。
  • まずは複数回にわたり、介護施設の稼働率向上について具体策を交えたポイントを解説する。

一方的に時間を奪って帰っていくような営業

介護事業所における営業活動にも様々な方法がある。

従来通り居宅(介護支援事業所)のケアマネジャーへ直接訪問、FAX案内を行うことに加え、最近ではインターネットの普及によりメールで定員の空き状況を送ったり、フェイスブックによる配信にネット広告を利用したりなど数多くの手法が確認されている。

もちろん新しい営業手法も、発信する側の一方的な押し付けでは効果は見込めない。

使う側が真に便利と感じ、普及が進むまでは、営業強化も従来通りの営業手法を中心に組み立てていかなければならないことは間違いないだろう。

その意味では営業担当者にとって「居宅への営業訪問」は引き続き重要な営業戦略となり得るのだが、だからといってそのやり方まで従来通りでは時代の変化についていくことは出来ない。

特に、時間の使い方への感じ方が個々人で大きく変わりゆく最近の風潮の中で、パンフレットや案内を持ち込んで、ただただ長々と自身の事業所の良さを話し、一方的に訪問される側の時間を奪って帰っていくような営業スタイルがどこまで受け入れられていくものなのか、疑問を持つべき点だ。

営業をする側にとっても、効果のない営業活動ほど時間のロスはない。

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構図上、紹介の確率は大きく下がる

そもそも、時代の流れの話を横に置いたとしても、従来、介護事業所で行われてきた一般的な営業は、「ロスの多い活動」と言えるだろう。

例えば居宅のケアマネジャーであれば、法人が母体というケースが一般的である。

そうなると原則、紹介は平等と言われていても、法人内の紹介が優先される。

特定事業所集中減算の範囲を守っていたとしても、外に紹介が回ってくるのは扱うケースの2割程度だ。

その2割のケースも、自サービスを必要としているかは分からないし、仮に対象サービスがマッチしたとしても、そこから近隣の競合事業所との奪い合いとなる。

競合が10件あれば数字の上では10分の1だが、ケアマネジャーとの関係性次第ではさらに可能性は下がるだろう。

ケアマネジャーにもメンツがあり、紹介して確実に喜ばれる先でなければ紹介したくないものだ。

つまり、一般的な営業手法では、顧客と介護施設との間に窓口の担当者が入り、介護サービスの選択権を握られてしまっている構図上、ニーズの数に対して自施設に紹介をしてもらえる確率は大きく下がってしまうのが現実なのである。

訪問頻度を上げ、滞在時間を下げる

では、介護事業所の営業担当者はどのような訪問営業を目指すべきなのか。

理想的な形としては、訪問先に渡していた介護サービスの選択権をこちらに委ねてもらい、他施設も含めて適切なサービスの配置をアドバイスできる立場になることだろう。

訪問先とその関係が成り立つようであれば、自事業所とマッチする顧客情報を取りこぼすことがなくなるばかりか、施設を探す手間が省ける分、むしろ訪問先の仕事の軽減にすらなる。

これから目指す営業の形とは、そのような自事業所と紹介窓口とのwin-winの関係なのだ。

それを実現させる具体的方法とは、どのようなものか。

まず、病院、包括、居宅への訪問は自事業所の近隣に的を絞ること。

理想は訪問先のよき相談者となることである。

フットワークが軽く、相談があったらすぐに駆けつけて一緒に考え、解決するという姿勢が信頼を勝ち得るのだ。

そして、そのような関係を築けそうな先が見つかったら、訪問頻度を上げること。

代わりに訪問当たりの滞在時間を下げることを実践すべきだろう。

紹介窓口の心配事を相談してもらうには、最も信頼される相談者になる必要があるが、その特別感はどうしても顔を合わせる回数で変わってくる。

ただし相手の時間を奪うことは悪印象となるので、訪問時は「何かお困りごとはないですか?」とひとこと聞く程度で帰るのが良い。

大切なのはこの流れだ。

肝心なのは、事業所を売り込むのではなく、地域の困りごとを聞かせてもらい解決しようというこという姿勢で訪問することだ。

実際、私たち介護事業者の役割とはサービスをもって地域のお困りごとを解決することである。

その本分に立ち返り、ケアマネジャーやMSWの役に立つことを通じて地域のお年寄りの役に立つことを目指す。

その意図が伝わる先がひとつでもできれば、紹介の状況はがらりと変わるだろう。


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精一杯応じようとする真摯な姿勢

このような「地域の相談員」として地域の困りごとを解決する、という意気込みで仕事に取り組むことは、大変なように感じるかもしれない。

しかし、肝心なことは相談を受けたことに精一杯応じようとする真摯な気持ちであって、難しいことではない。

その気持ちで地域の中を走り回るようになれば、そのうち逆に周りの施設や窓口の方々が共感し、協力をしてもらえるようになるだろう。

そうして地域を巻き込んでお年寄りの困りごとを解決し、その輪の中心に「地域の相談員」がいるようになることができれば、きっとその地域における自事業所の存在感はほかと比べても頭ひとつ抜けている状態になっているだろう。

地域の役に立とうという意気込みの小さな積み重ねの先に、施設の稼働率の解決があると理解するべきである。

ここで挙げた施策は、あくまでも表面的な一部分である。

地域との関係構築に必要な具体 策の諸々については、次回より項目ごとに詳細をピックアップしていく。

レポートの執筆者

沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント

株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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