新型コロナウィルスに関連する雇用・労務関係Q&A
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- 種別 レポート
新型コロナウイルス感染症に関連する 現場のQ&A
「労働者が新型コロナウィルスに感染した」「事業を縮小またはサービスを休止しなければならない」「休業手当の支払いは必要なのか」など、新型コロナウィルスに関して寄せられている雇用・労務のご相談を解説します。
雇用・労務関係Q&A 解説
日本経営グループ 雇用・労務緊急対策チーム
馬渡美智、岩田健
§1 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)
Q1 労働者が新型コロナウィルスに感染したため休業する場合どのようにすべきですか。
《 解説 》 新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。(2020.04.10)
Q2 Q1の場合、待機期間の3日間は給与を支払う必要はありますか。また、給与を支払ったり、有給休暇を使ったりしても待機期間はカウントされるのでしょうか。
《 解説 》 欠勤扱いとし無給にしても問題はありませんが、通常の病欠と同様、本人が希望すれば有給休暇で処理する必要があります。また、待機には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは問いません。(2020.04.10)
Q3 新型コロナウィルスの影響により、事業を縮小またはサービスを休止しなければならなくなりました。休業手当を支払う必要はありますか。
《 解説 》 賃金の支払いの必要性の有無などについては、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案するべきですが、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。
一般的には、現状において、新型コロナウイルス感染症の拡大防止が強く求められる中で、事業主が自主的に休業し、労働者を休業させる場合については、経済上の理由により事業の縮小を余儀なくされたものとして、雇用調整助成金の助成対象となり得ます。詳しくはこちらをご覧ください(情報は随時更新されますので、ご注意ください)。(2020.04.10)
・雇用調整助成金の特例措置の追加実施と申請書類の大幅な簡素化(令和2年4月10日)
・雇用調整助成金 新型コロナウイルス感染症について
Q4 新型コロナウィルスへの感染が疑われる労働者について、休業手当の支払いは必要ですか。
《 解説 》 感染が疑われる場合は、まず、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」に相談します。その相談の結果を踏まえ、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。(2020.04.10)
Q5 労働者が発熱などの症状があるため自主的に休んでいます。休業手当の支払いは必要ですか。
《 解説 》 新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は通常の病欠と同様に取り扱っていただき、有給休暇を活用することなどが考えられます。
一方、例えば発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
また、今般の新型コロナウイルス感染症対策として、新たに特別休暇の規定を整備した中小企業事業主を支援するため、既に令和元年度の受付を終了していた時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)について、新たに特例的なコースが設けられています。(2020.04.10)
Q6 新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取り扱いは、労働基準法上問題はありませんか。
《 解説 》 年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものなので、使用者が一方的に取得させることはできません。
なお、使用者は、労働者が年次有給休暇を取得したことを理由として、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないことにご留意ください。(2020.04.10)
Q7 パートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者などの方についても、休業手当の支払いや年次有給休暇の付与等は必要でしょうか。
《 解説 》 労働基準法上の労働者であれば、パートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者など、多様な働き方で働く方も含めて、休業手当の支払いや年次有給休暇付与が必要となっております。
なお、法定外の休暇制度や手当を設ける場合、非正規雇用であることのみを理由に、一律に対象から除外することは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正されたパートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の規定(※)に違反する可能性があります。(2020.04.10)
※大企業と派遣会社は令和2年4月、中小企業は令和3年4月からの施行となっています。
Q8 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、年次有給休暇など)は、外国人を雇用している場合でも適用されますか。
《 解説 》 労働基準法の適用があるか否かに、外国人であるかは関係ありません。外国人の方であっても、労働基準法の労働者に当たる場合は、一定の要件を満たす場合には、労働基準法における休業手当の支払いを行っていただくとともに、労働者が年次有給休暇を請求した場合においては、原則として、労働者が請求する時季に与えなければなりません。(2020.04.10)
Q9 保育所に子どもを入所させる予定だった労働者が、市区町村等から当該保育所への登園自粛の要請を受けたため、当面子どもを保育所に預けないこととなりました。こうした場合、育児休業の延長を認めなければならないでしょうか。
《 解説 》 現在育児休業中の労働者から申出があった場合、事由を問わず最長1歳まで育児休業の終了予定日の繰下げ変更を認める必要があります(※1、2、3)。なお、繰下げ変更後の休業期間についても育児休業給付金は支払われます。
また、育児休業から一度復帰している方から再度の休業の申出があった場合も、休業(最長1歳まで(※1))を認める必要があります。なお、再度の休業期間についても育児休業給付金は支払われます。(2020.04.10)
※1:両親がともに育児休業をする場合、一定の要件を満たせば最長1歳2か月まで(パパ・ママ育休プラス)
※2:1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業それぞれについても同様に繰り下げ変更を認める必要があります。
※3:繰下げ変更の申出は1か月前となっていますが、申出が直前になった場合でも、繰下げ変更を認めることは可能です。
Q10 保育所に子どもを入所させる予定だった労働者が、市区町村等からの登園自粛の要請は受けていないものの、感染防止のために自主的に子どもを保育所に預けないこととしました。こうした場合、育児休業の延長を認めなければならないでしょうか。
《 解説 》 現在育児休業中の労働者から申出があった場合、事由を問わず最長1歳まで育児休業の終了予定日の繰下げ変更を認める必要があります(※1、2、3)。なお、繰下げ変更後の休業期間についても育児休業給付金は支払われます
また、育児休業から一度復帰している方から再度の休業の申出があった場合には、再度の休業を認める必要はありませんが、各企業において独自に再度の休業を認めることは差し支えありません。なお、こうした法を上回る対応により認められた休業期間については、育児休業給付金は支払われないためご留意ください。(2020.04.10)
※1:両親がともに育児休業をする場合、一定の要件を満たせば最長1歳2か月まで(パパ・ママ育休プラス)
※2:1歳から1歳6か月までの休業、1歳6か月から2歳までの休業それぞれについても同様に繰り下げ変更を認める必要があります。
※3:繰下げ変更の申出は1か月前となっていますが、申出が直前になった場合でも、繰下げ変更を認めることは可能です。
§2 労働時間
Q1 36協定においては、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)には、限度時間(月 45 時間・年 360 時間)を超えることができるとされていますが、新型コロナウイルス感染症関連で、休む従業員が増えたときに残りの従業員が多く働くこととなった場合には、特別条項の対象となるのでしょうか。
《 解説 》 36協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に、繁忙の理由がコロナウイルス感染症とするものであることが明記されていなくとも、一般的には、特別条項の理由として認められます。
なお、現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続を踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付きの36協定を締結することが可能です。
36協定の締結の方法等については、こちらをご覧下さい。 (2020.04.10)
・時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
§3 安全衛生
Q1 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施を延期するといった対応は可能でしょうか。
《 解説 》 健康診断の実施時期を令和2年5月末までの間、延期することとして差し支えありません。
なお、今回の対応は、労働安全衛生規則第43条に基づく雇入時の健康診断、第44条に基づく定期健康診断、第45条に基づく特定業務従事者の健康診断など、労働安全衛生法第66条第1項に基づく健康診断に限るものであり、その他の労働安全衛生法に基づく特殊健康診断等の取扱いは従前どおり法令に基づく頻度で実施いただく必要があります。また、この取扱いは、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた令和2年5月末までに限られた対応となりますので、ご注意ください。(2020.04.10)
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§4 労働災害
Q1 労働者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合、労災保険給付の対象となりますか。
《 解説 》 業務又は通勤に起因して発症したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
詳しくは、事業場を管轄する労働基準監督署にご相談ください。(2020.04.10)
お問い合わせの前に
- 申請方法、助成金の適否の判断等についてはご返答しかねますので予めご了承ください。
- 日本経営グループご契約先様は、担当者にご相談いただきますようお願いいたします。
このQ&Aの解説
日本経営グループ 雇用・労務緊急対策チーム 馬渡美智、岩田健
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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