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新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の活用Q&A(まとめ)

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    企業経営
  • 種別 レポート

新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金Q&A

「新型コロナウィルスの影響で、売上が大幅に減少している」「従業員を解雇してしまうと、終息後の事業再開に支障をきたす」… 従業員の雇用維持を支援する、雇用調整助成金の活用について解説します。

雇用調整助成金の活用 Q&A 解説

日本経営グループ 雇用・労務緊急対策チーム
岩田健、竹中道代、児島和成、田邊光恵

解説動画/全国社会保険労務士会連合会

《 解説 》

 全国社会保険労務士会連合会の解説動画が、とても分かりやすくポイントをまとめられていますので、まずはそちらをご確認ください。

①制度概要(2020.04.21公開)

②申請手順(2020.04.21公開)

§1 制度の概要

Q1 新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大とは、簡単にいうとどのような制度ですか。

《 解説 》

 雇用調整助成金の特例措置は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主を対象とし、令和2年4月1日から令和2年6月30日まで(緊急対応期間)の休業等について適用されます。
 簡単に言うと、売上などが前月・対前年同月と比べて5%以上減少した場合に、従業員(雇用保険をかけていない者も含む)の出勤を減らし、その間の休業手当などを支給した場合には、その一部が助成されるというものです。
 助成率は中小企業であれば4/5、大企業であれば2/3(解雇等を行わない場合は中小企業9/10、大企業3/4)。ただし対象労働者1人1日当たりの上限があるので、注意が必要です(令和2年3月1日現在、8,330円)。
 この制度により、従業員の勤務やシフトを見直すなど休業させざるを得ない場合などには、助成金などを念頭に置いて雇用の維持を図ることができます(詳しくは「こちら」)。
(2020.04.10)

Q&A・ガイドブック・様式ダウンロード

§2 現場でのQ&A

Q1 緊急事態宣言でお客さんの数が減り、社員の勤務日数を少なくせざるを得ない状況です。その場合、休業手当を最低でも6割支払わなければならないということですが、休業手当を支払ったら、雇用調整助成金で中小企業であれば9割補填されると聞きました。細かい要件はあるとは思うのですが、この助成金を受け取るにあたり、対象とならないケースや支給割合が低くなるケースなど、特に留意すべき点を教えてください。

《 解説 》

 雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度です。この助成金は、新型コロナウィルス感染症の影響を受ける全ての業種の事業主を対象とし、感染拡大防止のため、4月1日~6月30日を緊急対応期間とし、特例措置が実施されます(受給要件の詳細等は、厚生労働省ホームページをご参照下さい)。
 多くの事業主が利用できるよう申請書類が簡素化するなど、特例措置が拡大されていますが、対象とならないケースについては、例えば以下のケースが考えられます。
・休業ではなく、従業員が年次有給休暇を消化した場合
・生産指標要件(1ヶ月の売上が前年比5%以上低下)に該当しない場合
・事業を開始してから間もない場合(事業所設置後1年未満の場合、生産指標の確認は申請書提出のあった月の前月と令和元年12月を比較するため、令和元年12月の売上実績が必要になります。)
(2020.04.10)


Q2 申請にあたり、計画書はじめ就業規則や雇用契約書の提出が必要と聞きました。10人以上の会社であれば、就業規則の提出は必須でしょうか。雇用契約書だけあればよいでしょうか。また、雇用保険の対象になるにも関わらず、手続きが漏れていた社員がいます。資格取得手続きが終わるまで、助成金は受給できないことになりますでしょうか。その他、申請にあたり必要となる書類で、留意しておくべきものがあれば教えてください。

《 解説 》

 新型コロナウィルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置に関する申請書類等については大幅に簡素化され、申請手続きの負担軽減と申請から支給決定までの審査期間を1ヶ月程度とするなど短縮化されました。

計画届に必要な添付書類(休業の場合/計画届は休業実施後の提出も可能です)
①休業協定書・教育訓練協定書(労働者代表選任届に添付を求めていた個別の委任状は不要)
②事業所の状況に関する書類(既存の労働者及び役員名簿のみで可)

支給申請に必要な添付書類(休業の場合)
①労働・休日及び休業手当・賃金の実績に関する書類
・出勤簿、タイムカードの写し(手書きのシフト表などでも可)
・賃金台帳の写し(給与明細の写しなどでも可)
・就業規則、給与規定、雇用契約書(労働条件通知書)の写しなど

 就業規則や雇用契約書等の写しは、事業所ごとに定められている、所定労働日、所定休日、所定労働時間等や賃金締切日等の賃金制度の規定を確認するために必要となります。就業規則が添付できない場合は、休業対象者全員の雇用契約書(労働条件通知書)の写しを提出することになります。

 緊急対応期間(4月1日~6月30日)においては、雇用保険被保険者でない労働者が休業した場合も助成対象になります。雇用保険加入対象者の手続き漏れがあることが判明した時点で受給ができなくなる可能性は低いと考えられますが、雇用調整助成金申請手続きを行った際に速やかに雇用保険加入手続きも済ませておくことが最善であると思われます。
(2020.04.10)


Q3 私どもは中小企業ですが、支払った休業手当の9割が助成されると言っても、日額8,300円くらいが上限だと聞きました。そこで、一人ひとりの助成金額がいくらくらいになるかを知りたいのですが、大雑把に言ってどのように算定されるのでしょうか?(休業手当は、賃金全額を支払おうと思っています。解雇やいわゆる派遣切りなどは行っておりません。)

《 解説 》

 雇用保険被保険者の場合と、被保険者でない場合で、計算が異なります。

①被保険者の場合、まず、「事業所の1日の平均賃金額」を計算します。これは、前年度の労働保険申告にて用いた雇用保険料の算定の基礎となる賃金総額等を従業員数(前年度各月平均雇用保険被保険者数)と1年間の所定労働日数で割って求めます。

②この「事業所の1日の平均賃金額」に、事業主が支払った休業手当支給率(60%~100%)と助成率(中小企業は緊急対応期間中4/5、解雇等行わない場合は9/10)を掛けて、1日当たりの助成額単価を求めます。

③もし1日当たりの助成額単価が8,330円を超えたときは、8,330円で計算します。

④最後に、助成額単価に従業員を休業させた休業延べ日数を掛けた総額が、助成額になります。

例:1ヶ月(判定基礎期間)の助成額
・1日平均賃金額が仮に8,000円と計算され、休業手当支給率は100%、助成率9/10とすると、8,000×100%×9/10=@7,200円
・従業員10人、1ヶ月所定労働日数22日の会社において、5人ずつ交替で毎日休業を実施した場合は、5人×22日/月=110(休業延べ日数)
・@7,200円×110=助成額792,000円

このように事業所全体で助成額を計算することになりますので、一人ひとり計算するわけではありません。

※雇用保険被保険者でない場合の助成額の算定は、対象者へ実際に支払った休業手当総額を休業総日数で割り、平均した金額をもとに計算されます。
(2020.04.10)


Q4 雇用調整助成金とは別に、小学校が休校になった場合の助成金もあると思いますが、事業所の都合でどちらを選択するか考えてよいですか。

《 解説 》

 小学校等の休業に伴い、子供の世話を保護者として行うことが必要となった職員に対し、特別の有給(賃金全額支給)の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させて事業主に対し、小学校休業等対応助成金が受給できます。
 雇用調整助成金との違いですが、雇用調整助成金は、事業主から休業指示を出した労働者に対して支払う休業手当の一部助成であることに対し、小学校等対応助成金は、労働者からの申し出による休暇を認めた場合が対象となります。
 事業主側からの指示であるか、労働者側からの申請であるかによって、申請する助成金を選択する必要があります。
(2020.04.10)


Q5 従業員からすると、働かずに休業補償がされるのであれば、感染するのも嫌なので休業したいという社員も少なくありません。しかし、誰にどれだけ休業を指示するかは、事業主の都合で考え、それを超える休みは、有給の消化もしくは欠勤という扱いでよいでしょうか。

《 解説 》

 休業については、事業主側の判断により指示を出すことが前提であり、誰をいつ休ませるかは事業主側で決めることになります。
 それと異なり、感染リスクを避けるために従業員側から「自主的に」休みたいと申し出があり、実際に休む場合は、通常の年次有給休暇もしくは欠勤と扱うことになります。
(2020.04.10)


Q6 社員の中で、完全に休業して出勤しない人と、3割相当を休業して7割出勤としている人がいますが、それは支障ありませんか。

《 解説 》

 休業については、所定労働日の全1日にわたるもの、または一部の時間に実施する短時間休業も認められます。短時間休業については、所定労働時間内に事業所内の部署・部門ごとや、職種・仕事の種類によるまとまり、勤務体制によるまとまりなど「一定のまとまり」で行われる1時間以上の短時間休業または一斉に行われる1時間以上の短時間休業であることが必要です。
 今回のケースの場合、全1日休業させる場合は上記「一定のまとまり」といった制限はありませんが、3割相当休業の対象者は、一斉に行うかもしくは部門ごとやパートタイマー対象といった職種ごと、あるいは同じ勤務シフトで勤務する社員ごとに行う勤務体制ごと、といったまとまりで1時間以上休業させる必要があります。
(2020.04.18)


Q7 当社は、週5日40時間労働ですが、4月7日から一律に終業時間を早め週12時間(1.5日相当)を休業としました。休業手当は平均賃金の70%支払いたいのですが、その計算を教えてください。なお欠勤控除は、その月の賃金総額÷22日×欠勤日数 で計算することを周知しています。

(1)月給社員(日給月給制)
Aさん(月額固定給)は、休業に入る直前の給与締切日から遡った直近3か月間で、交通費も残業代もすべて含まれた賃金総額を91万円支払っていました。この期間の暦の日数が91日でした。4月7日~給与計算締め日において、休業日数は3日、休業を勘案しない今月の賃金総額は31万円です。

(2)時間給社員
Bさん(時間給)は、休業に入る直前の給与締切日から遡った直近3か月間で、交通費も残業代もすべて含まれた賃金総額を、24万円支払っていました。この期間の暦の日数が91日、労働日数が30日でした。4月7日~ 給与計算締め日において、休業日数は3日相当(24時間)でした。この分はタイムカードを押しておらず、今月の賃金総額(休業相当は含まれない)は8万円です。

《 解説 》

(1)Aさん
①休業手当の計算
・91万÷91日=1万円
・1万円×3日×70%=21,000円
②欠勤控除の計算
・31万÷22日×3日=42,273円
③給与明細では、②を控除して①を加算する

(2)Bさん
①休業手当の計算
・24万÷91日=2,637円
・24万÷30日×0.6=4,800円
・いずれか大きいほうを平均賃金とするので、4,800円
・4,800円×3日×70%=10,080円
②給与明細では、8万円に①を加算する

(2020.04.18)

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このQ&Aの解説者

日本経営グループ 雇用・労務緊急対策チーム
岩田健、竹中道代、児島和成、田邊光恵

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

参考リーフレット

報道発表

新型コロナウィルスに関連する雇用・労務関係Q&Aは、こちら

新型コロナウィルスに関連する融資・税制Q&A(まとめ)は、こちら

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