2019.07.03
1,000名を越える経営者との出逢い、何のために経営するのか
株式会社 日本経営 専務取締役 井上陽介
30年に及ぶ経営コンサルタント人生を通じて、私は約1千名を越える経営者と接してきました。
経営コンサルティングの依頼を受けるか否かに関わらず、私が経営者にお伺いする最初の質問は「何のために経営しておられるのですか」です。
創業者か後継者か、経営者になってからの年数や事業の成長度によって回答は様々です。
概ね創業期は私的目的寄りの経営者が多く、事業を成長させる経営者はその目的が変化して公共目的となるケースが多いように実感しています。
私的目的とは「自分のため」であり公共目的とは「社会貢献や世のため人のため」です。
どちらが良くてどちらが駄目というものではないのですが、私的目的の経営には小さな限界があり、短期的に高い業績を上げても長く続かなかったり、集う従業員が短期で入れ替わるために家業の域を脱することができなかったりと「公器の器」たるべき企業としては確立されないことが多いように感じます。
個人事業を除いて、企業には従業員がおられ、従業員は「何のために働くのか」となります。金銭は経営者にとっても従業員にとっても働く目的の重要なファクターです。しかし、金銭だけが目的の働きや経営にも小さな限界があります。
金銭だけが目的であれば、仕事は何でも良いことになります。金銭目的の成れの果ては強盗や窃盗という犯罪につながります。やはり、経済的充足以外の「何のため」を明確にすることが経営者にとっても従業員にとっても大切なことです。
昨今「働き方改革」という言葉が流行語のように報道紙面を賑わし、実際経営の現場でも喫緊の経営課題として大きく取り上げられています。まさに「何のために経営するのか、何のために働くのか」の本質を追求するプロセスが企業経営に要求されているのです。
時を同じくして、企業経営におけるCHO(Chief Happiness Officer)の重要性がクローズアップされてきています。
グーグル社を皮切りにアメリカ・シリコンバレーの先進企業が率先して導入したことで注目を浴びていますが、日本では「パーパス・マネジメント」(クロスメディアパブリッシング)の著者丹羽真理氏が提唱して導入を推進しておられます。
従業員の幸せを大切にする経営と言うことですが、このテーマを経営の目的・意義に据える経営者はまだまだ少ないのが現状です。
しかし、これからの経営の公共目的は社会・顧客以前にそこに集う従業員の幸せを如何に実現するのか、その目的・意義を追求し続ける経営が世の中で認められ必要とされる企業となる時代になってきていることを肝に銘じて自社の経営を見つめ直していただきたいと思います。
僭越ではございますが、弊社の「何のために経営するのか」は基本理念という形で内外に発信して、実践の途上にありますので最後に書き添えさせていただきます。
日本経営グループ基本理念
「全従業員とその家族の幸福を追求するとともに、その幸福に氣付いて感謝できる心を育み、社会の成長発展に貢献する」
本稿の執筆者
井上陽介(いのうえ ようすけ)
株式会社日本経営 専務取締役
医療機関・介護施設・一般企業を対象に経営・組織の改革・改善を行う経営コンサルタント。現在では、社内のコンサルティングチームの編成を行い現場でも実践指導を行う一方で、日本経営グループ全体の人事部門統括を兼務している。組織内外のあらゆる経営・労務リスクを考慮した経営支援の実践・姿勢に顧客から定評がある。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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