投稿日:2026年9月17日

医療・介護 複合法人が今選ぶべき人事戦略!役職逆転を脱却し、増収増益へ導く報酬改定 

この記事の要約・ポイント
  • 改定の背景と罠:報酬改定に伴う一律の賃上げは、自法人の「理想の職員像」を定義しないまま行うと「役職逆転」「一律配分」「職種逆転」「年功序列依存」という4つの組織崩壊リスクを引き起こす
  • 賃上げの意識変革:給与引き上げを単なる福利厚生(衛生要因)で終わらせず、法人の期待を明確にし、成果を求める「心理的契約(投資)」と捉え直し、評価と面談のプロセス(4ステップ)を再構築することが重要
  • キャリア構造の改革:管理職一択の単線型キャリアを脱却し、多様な専門性やライフステージに応じた複数の選択肢を持つ「山脈型キャリアモデル」を導入することで、離職防止と適材適所の組織配置を実現する
  • 現状診断と実践:他社のテンプレートに頼らず、賃金プロット図分析や人件費シミュレーションなどの定量的データに基づき、自法人の現状と課題を客観的に可視化することから改革をスタートさせる

「ただの賃上げ」が逆効果に?医療・介護現場で起きている人事の歪みと解決への視点

医療・介護業界において、度重なる報酬改定や臨時改定による「賃上げ(処遇改善・ベースアップ)」への対応は経営上の最重要課題となっています。

しかし、現場の経営層や管理職の方々からは、以下のような悩みが絶えません。

  • 「国の方針通りに賃上げを行ったところ、一般職と役職者の給与が逆転してしまい、リーダーを目指す職員が減った」
  • 「介護職の処遇改善を進めた結果、ケアマネジャーや専門職との賃金バランスが崩れ、現場に不満が溜まっている」
  • 「給料を上げたのに離職が止まらず、結局何のための賃上げだったのか分からない」

加算要件を満たすことだけを目的とした場当たり的な賃上げは、かえって「役職逆転」「一律年功配分」「職種間格差」といった歪みを生み、優秀なキーパーソンの離職を招く危険性があります。

本記事では、医療×介護複合法人が直面する人事構造の課題を紐解き、報酬改定を機会として組織を持続可能な増収増益構造へと導く「山脈型キャリアモデル」をはじめとした人事戦略の成功パターンを解説します。

1. 報酬改定に伴う「賃上げ」に潜む4つの罠

介護職員等処遇改善加算や医療のベースアップ評価料など、国主導の賃上げ施策が拡充されています。しかし、具体的なビジョンを持たずに原資を配分してしまうと、以下のような「4つの罠」に陥るリスクがあります。

1. 年功序列型

成果や貢献度に関わらず在籍年数で給料が決まるため、将来に希望を持てない優秀な若手が早期離職する

2. 一律配分型

「揉め事を避けたい」という理由で一律に支給すると、現場を牽引する中堅職員やエース職員の貢献が報われず、モチベーションの低下や流出を招く

3. 役職逆転型

処遇改善加算が一般職や下位役職者に集中して充当された結果、責任の重い役職者の賃金を上回り、昇進意欲を削いでしまう

4. 職種逆転型

介護職員への支給が手厚くなる一方で、ケアマネジャーや専門職への還元が薄くなり、「誰もケアマネを目指さなくなる」といった人材不足の悪化を招く

これらの失敗に共通するのは、「法人としてどのような職員を報いたいのか」というメッセージ(期待像)が曖昧なまま、加算を活用してしまっている点にあります。

2. 賃上げを成果に繋げる「心理的契約」と4つのステップ

単に給与水準を引き上げるだけでは、職員の「満足感」は一時的なものにとどまり、数か月後にはそれが「当たり前(衛生要因)」になってしまいます。給料を上げてもやりがい(動機付け要因)が直接高まるとは限りません。

今回の賃上げを単なる福利厚生や慰労で終わらせず、「法人からの投資であり、より高い成果を期待する新たな契約(心理的契約)」として捉え直すことが重要です。

付加価値を高めるためには、以下の4つのステップでプロセスを再構築する必要があります。

STEP 1:期待値の言語化・等級制度の整備(役割定義・評価基準の明確化)

各等級・階層に「期待する成果と行動(役割定義)」を明確にし、給与水準と連動させます。
目的:法人が求めることを明示し、職員の努力や教育の方向性を適切に導く

STEP 2:評価制度の適正化

「頑張っている・熱意がある」といった主観的な情意評価の比重を下げ、期待される行動や成果に基づく「コンピテンシー評価・成果評価」へと移行します。
目的:過去の感情・過程評価から脱却し、現在進行形の実績や行動成果に応じた客観的な評価を行う

STEP 3:トップメッセージの発信

経営層から「地域トップレベルのケアを提供するために待遇を引き上げる。共に成長しよう」という意図と投資の姿勢を明確に発信します。
目的:賃上げを単なる福利厚生ではなく「期待と信頼への投資」と捉え直し、意識変革を促す

STEP 4:人事評価・フィードバック面談の実施

評価結果を伝えるだけでなく、次回に向けた本人のコミットメント(目標と約束)を引き出し、成長と貢献の実感を促します。
目的:強みを伸ばし、課題を改善するための発展的な取り組みを促す

3. 定着を実現する「攻め」と「守り」の人事施策3. 医療×介護複合法人に最適な「山脈型キャリアモデル」とは?

医療と介護を複合的に展開する法人では、「病院の看護師と介護施設の看護師・介護職との賃金格差」「事業所間の異動拒否」など、特有のマネジメント課題が発生しがちです。

全員が管理職を目指す一本道のキャリア(単線型)では、現場の多様なニーズに対応できません。そこで求められるのが、「山脈型キャリアモデル」の導入です。

多様なニーズに応える主なコース設計例

コース名 主な役割と特徴
マネジメントコース 組織運営、収支管理、部下育成を担う。法人の中心として高い評価・給与を設定
スペシャリストコース 高度なケアの実践、困難事例対応、指導を担当。管理業務は免除し専門性を評価
本部・経営管理コース 法人全体の経営戦略や人事・財務を担う。事業所を跨いだ柔軟な対応が求められる
ワークライフバランスコース 育児・介護・短時間勤務など、ライフステージに合わせた柔軟な働き方を選択可能

全員に一律の役割を求めるのではなく、「どのような働き方・成果で法人に貢献するか」を職員自身が選択できる仕組みを適切な評価・報酬制度とともに構築することで、離職を防ぎ、適材適所の組織配置と健全な人件費コントロールを実現できます。

4. 成功のカギは「現状の可視化」から

他法人の成功事例やテンプレートをそのまま導入しても、自法人の風土や現状と合っていなければ失敗に終わります。人事改革を成功させる第一歩は、データに基づいた自法人の現状を把握することです。

  • 初任給・地域相場分析: 採用ターゲット層において、地域の競合法人に対して自法人が適切な水準にあるかを可視化する
  • 賃金プロット図分析: 年齢・勤続年数と賃金の相関をグラフ化し、役職逆転や年功序列の歪みが生じていないか検証する
  • 人件費シミュレーション: 現行制度を維持した場合と新制度を導入した場合の、将来的な人件費推移を予測する
  • 職員構成・退職予測分析: 10年後の年齢構成や想定退職者を割り出し、次世代リーダーの育成計画を立てる

感情的に判断するのではなく、定量・定性の両面から客観的に自法人を「診断」した上で、最適なソリューションを選択することが不可欠です。

まとめ:ただの「賃上げ」で終わらせない、持続可能な組織づくりへ

報酬改定は、単なる法改正への対応作業ではありません。これからの医療・介護業界において、選ばれ続ける法人へと進化するための「構造改革の絶好の機会」です。

なんとか運営できている「今のうち」に抜本的な人事・評価制度の見直しに着手し、職員が生き生きと働き、持続的に増収増益を実現できる強固な組織基盤を作り上げましょう。

株式会社日本経営では、医療機関・介護福祉施設における人事制度構築・報酬改定対応コンサルティングをご提供しております。

  • 「自法人の賃金プロットや役職逆転の現状を一度分析してみたい」
  • 「山脈型キャリアモデルの導入手順について詳しく知りたい」
  • 「自法人に合った処遇改善・ベースアップの活用法を相談したい」

とお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。専門のコンサルタントがあなたの法人の現状に合わせた最適なプランをご提案いたします。

報酬改定を好機に変え、地域で選ばれ続ける人事戦略をともに導き出します
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本稿の監修者

高比良 寛治(たかひら かんじ)
株式会社日本経営 課長 

医療・介護を対象とした人事マネジメントに従事。主に人事評価制度の導入支援や事業計画に基づいた組織体制の見直し支援などを行っている。また、プロセスマネジメントコンサルティングなど生産性向上の支援なども行い、近年では、社会福祉協議会などの講演会でも講師を務めている

浦越 恵嗣(うらこし けいすけ)
株式会社日本経営 
主任

人事制度設計(等級・評価・賃金)、組織開発、管理職コーチングを専門領域とする人事コンサルタント。人件費比率の高い労働集約型産業を主な活動領域とし、人事戦略の方法論構築に取り組む。年間多数のセミナーに登壇するなど発信活動も多い

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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