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介護福祉の会計・財務レポート「社会福祉法人における内部統制Vol.03」

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

業務プロセス統制(効率化・不正防止)

  • 第1回では「内部統制の概要」、第2回では「内部統制の中心となる全般統制」について解説した。
  • 第3回では、「内部統制における業務プロセスの統制」について解説する。

内部統制における業務プロセスの統制

はじめに、現状のコロナ禍の中、医療機関・介護施設でのクラスター化の報道が多くなっている。

そのような状況において、関係者におかれては自らの危険と背中合わせで利用者の健康を守るためにご努力されていることに敬意を表したい。

陽性者が発生した場合の対応・補助金や資金調達の対応・決算対応の延期など情報をいち早く入手し、想定外の状況への対応やリスク管理は事業継続に必要であることを認識し、内部統制の観点からの体制整備を改めて見直す必要があると考える。

さて、 現状の法人運営において他社との差別化や地域のニーズをくみ取ったサービスを実施されているが、これらのサービス実施の背後には、サービス対価の請求管理、人件費の管理、物品購入・経費の管理、資産管理(未収金回収、固定資産)などの活動が行われている 。

これらの活動は、法人における長い業務運営のなかで慣習的に行われているものである。

当社において内部統制の調査の依頼を受ける場合、その経緯として、大企業や金融機関等出身の理事・管理部長等が、自法人の管理体制の状況が十分なのかと懸念されていることがある。

また、調査実施時には管理部長等に立会っていただくが、このときはじめて各事業所での手作業や非効率な業務手順に気付かれることが多い。

慣習的に行われてきた非効率な業務

多くの社会福祉法人では、基本的に職員はまじめに業務を行っているものの、事務作業においてはシステム化が進まず、手作業・手書き資料等が多く、非効率と感じることが多い。

各事業所の担当者は利用者へのサービス提供で精一杯であり、事務の合理化まで気が回らないという現状は致し方ないが、担当者になぜその非効率な業務を行っているかをお聞きすると、前任者からやっているからと目的も意味もなく行っている場合さえある。

法人規模の拡大、法人間の統合(社会福祉連携推進法人含む)を考えている法人であれば、なおさら各事業所独自あるいは担当者毎の属人的な業務運営を排し、職員の業務の見える化、効率化・標準化、不正・誤謬が生じないような仕組みを講じる必要があるだろう。

業務の効率化・標準化、不正・誤謬の防止に向けて

内部統制の目的として、業務の有効性・適正な財務報告・不正等の防止・資産管理がある。

効率化という観点では慣習化したルールの見直しや標準化、手作業・手書き資料からITスキルの活用が挙げられる。一方、不正等の防止という観点からは、特定の担当者(施設長、会計担当者等)に権限を集中させないこと、なるべく職員に現金預金を触れさせないことがポイントである。

下記のリストで、自法人において次のような事象が生じていないか確認してほしい 。

業務の効率性

  • 各事業所に独自の業務運営のルールがあり、人事異動の際に支障が生じることがある。
  • 稟議書が書類で回覧されるが、どこかの担当で留まった結果、決裁が遅くなるほか、稟議書に多人数の押印が行われている。
  • 利用者への請求、立替の管理が担当者任せで、請求漏れ、消込もれが生じている。さらにその実態を上位役職者が把握していない。
  • 利用者の未収管理を、業務ソフトではなく、手書き資料やエクセルの資料で行っている。さらにその実態を上位役職者が把握していない。
  • 利用者未収金の管理が経理担当任せで、事業所の担当は積極的に関与しない
  • 購入伺書・稟議書が、定型的な内容であっても、手書きで作成している。
  • 契約書が本部や事業所保管など、どこにあるか明確ではない。
  • 職員の採用時の人事情報の登録は手入力であるが、別の担当者によるチェックがない

不正・誤謬の防止等のために

  • 長年、一人の会計担当者に現金出納と会計入力の両方の事務を担当させている。
  • 外部業者への振込みを、経理担当一人で実施できる
  • 事務長等が、会計帳簿と現金の突合を実施していない。
  • 金融機関からの残高証明書を、事務長等が確認していない。
  • 利用者の預り金の管理について、現場の担当者に任せきりである。
  • 施設長等の権限だけで(本部の承認が不要で)、業者の選定ができる。

このような事象に該当する法人は、業務の見直しにつき、検討が必要であり、専門家による内部統制の整備状況の調査をお勧めする。

レポートの執筆者

田島一志(たじま かずし)
日本経営ウィル税理士法人 公認会計士・税理士

大手監査法人で、上場会社や医療法人の監査、財務コンサルティング、IPO支援等を、公的機関で中小企業の再生支援に従事したあと、2017年に日本経営ウィル税理士法人に入社。現在、社会福祉法人での会計指導、内部統制支援を担当する。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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