営業活動によるキャッシュフローは必ずプラスにしましょう!/病院経営の指標・読み方Vol.07
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
前回のコラムでは、利益を出すということと、資金繰りを回すということは、別だということを解説しました。
今回は「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャシュフロー」について、詳しく見ていきたいと思います。
営業活動によるキャッシュフローは必ずプラスにすること!
キャッシュフロー計算書には3つのカテゴリーがあります。その中で最初に出てくるものが「営業活動によるキャッシュフロー」ですが、これは「医療法人の本業(本来業務、附帯業務、附随業務)から生み出されたキャッシュフロー」ですので、必ずプラスにする必要があります。
プラスにする視点は次の通りです。
- 損益がプラスであること。マイナスであっても、減価償却費や各種引当金を加味してプラスになること。
- 売上債権(医業未収金)回転日数は55日以内にする。
- 医薬品の棚卸回転日数は14日以内にする。
- 診療材料の棚卸回転日数は限りなくゼロにする。
- 仕入債務(買掛金と未払金もしくは未払費用)の残高は、売上債権金額と医薬品在庫金額の範囲内にすること。
医療機関の財務分析
さて、ここで「5」だけ回転日数ではなく金額になっていることが、医療法人独特の見方です。小売業であれば、物の動きとお金の動きが一致していますので「5」も回転日数になるのですが、医療機関の場合は労働集約型ビジネスですので、商品に関する債務よりも、それ以外の債務の方が明らかに大きくなります。
例えば12月の試算表の未払金の残高が大きかったとき、その要因は社会保険料の未払金であったりしないでしょうか? 医療機関では「人」に係る費用が最も多額になりますので、社会保険料も他の費用と比較するとかなり高額になっているはずです。
話を戻しますが、「5」の要件を満たさない医療機関はほぼ無いと思われます。なぜならば「5」に書かれている内容は、「2か月分以上の保険診療未収金を超える買掛金や未払金および医薬品在庫が残っていてはいけない」という意味であり、そのような医療機関は考えにくいからです。
また「2」「3」については、多くの健全な経営をされている医療機関の財務分析を実施した結果、およそこれらの回転日数に収まっているという水準です。「4」は手術などで必要な時に必要な診療材料を仕入れることが多いので、在庫を持つことは殆ど無いと思われます(消耗品的な材料をストックされている場合はあります)。
つまり医療機関では、売上債権、棚卸資産、仕入債務の関係でキャッシュがマイナスになることは考えにくいのです。「1」を満たさない場合、つまり減価償却費や各種引当金を加味してもマイナスになる場合に、営業活動によるキャッシュフローがマイナスになるということになります。
税引前当期純利益+減価償却費+各種引当金を必ずプラスにすることが、医療機関のキャッシュギャップを無くす「勘所」です。
投資活動の投資とは?
投資活動によるキャッシュフローは、一般的には有形固定資産や無形固定資産、保険積立金などへの入手金の動きを表しています。
しかし管理会計的に投資活動を考えると、「投資」という定義をどう考えるかが重要です。例えば、医師を含めた職員の教育訓練費は、ある意味「投資」といえるでしょう。また将来の幹部候補を育てるために他社に出向に出した際の、その社員の人件費も「投資」と考えられます。
つまり「投資」とは、すぐに自法人の業績にプラスにならない(むしろ一時的にはマイナス?)ことであっても、将来への期待の表れとして支出している項目です。
キャッシュフロー計算書を毎月作成している場合、管理会計的に上記のような考え方で自法人独自のルールをつくり、1年経過後にキャッシュフロー計算書を眺めて頂くと、本当の意味での「投資」をいくら実行したのかが分かります。
支出したキャッシュに意味を持たせると、次年度の予算策定に大いに役立つと思います。
病院経営の健全化のために、いま必要な意思決定を議論します。
本稿の執筆者
藤原ますみ(ふじわら ますみ)
NKGRコンサルティング株式会社 取締役
クリニック・病院・社会福祉法人の財務会計に従事し、有料老人ホームの立ち上げにも参画する。現在は、病院の財務・管理会計の導入を通じた経営改善も担う財務のプロフェッショナル。公的機関主催の研修でも講師を多数務め、数字に苦手な受講者でも「今までで一番分かりやすかった」と、絶大な支持を得ている。
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日本経営ウィル税理士法人/NKGRコンサルティング株式会社/株式会社日本経営
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