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補正予算?の検証とクールなお金の使い方/病院経営の指標・読み方Vol.04

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

収支計画をきちんと立てても、臨時的・突発的に発生した「補正予算」によって計画が狂うことは少なくありません。先送りせず、医療だけでなく、経営に対する投資も不可欠になってくるでしょう。

利益計画ではなく、収支計画

皆さまは予算を意識した経営をされていますでしょうか?

ここでいう「予算」とは、「利益計画(=予想損益計算書)」のことではなく、「収支計画(=予想収支計算書)」のことを言います。収支計画ですので、キャッシュの出入りが伴う取引はすべて考慮する必要があります。借入金の返済や追加借入、設備投資支出、生命保険契約の解約返戻金など利益に影響を与えないキャシュの動き部分も、当然計上します。

収支計画を作成するということは、「〇年後にキャッシュ残高をいくらまで増やすか」という計画と同義と言えます。例えば、向こう5年間でキャッシュ残高を〇〇億円にしたいとします。その目標を達成するためには、設備投資支出は〇百万円、3年後に生命保険契約の解約返戻率のピークが到来するので解約し〇万円、来年には金融機関からの借入金が1本完済するので、返済が無くなることによるキャッシュ増加額が〇万円…。このように、損益に現れないキャッシュの動きを掴んでいくことは、経営において非常に重要です。

収支計画を根本から狂わす補正予算

しかし、せっかく収支計画を立てても、それを根本から狂わすものがあります。臨時的・突発的に発生した支出です。「補正予算」とも言えるでしょう。この補正予算は十分な検討がされないまま実行されたり、費用対効果の検証も疎かになっていることが少なくありません。

「補正予算」が発動されるということは、まずは課題を解決することが優先されるということです。経営者も財務担当も、これは仕方ないことだという思考になり、短時間で実行に移してしまうものです。

問題は、スピーディな対応をするだけで終わってしまい、そのしわ寄せに対して手が打たれていないということです。オーバー予算になっているのであれば、別の費用を削減したり、収益を追加確保するなど、どこで穴を埋めるのかを考えなければなりません。

国の予算も、当初予算は財務省が厳しい目でチェックします。しかし補正予算は、緊急性のある課題解決のために仕方無く補正しているもので、チェックも甘くなりがちです。特にこの2年間は、コロナ対応のため補正予算が常態化しています。収益確保(=税収確保)の議論も、先送りされています。

さらに、「喫緊の課題」という傘の下で、喫緊でない、それほど重要でない分野への支出が発生しやすいのも注意が必要です。

経営の研究開発への投資が不可欠に

お金のクールな使い方とは、通常予算であろうと補正予算であろうと、自院の未来に向けてじわじわと成果がでる投資に比重を置くことです(前回レポートで「漸進的イノベーションへの投資」としてご紹介しました)。医療サービスの質向上、価格決定権がある自費収益分野の開拓、オペレーションの再構築などを推し進め、単価のアップと患者数の増加に繋げることです。

言うまでもないことですが、収益を上げるためには、単価を上げるか数量を増やすしかありません。そして限られた財源の中で、今後、否が応でも、自費収益の開拓と保険診療のオペレーションの効率化はキーワードになってくるはずです。

そのためには、医療への投資だけではなく、「経営の研究開発」への投資も不可欠になります。「クールな(かっこいい)経営」とは、医療と経営の最適なバランス感覚ではないかと、私は思います。

病院経営の健全化のために、いま必要な意思決定を議論します。

本稿の執筆者

藤原ますみ(ふじわら ますみ)
NKGRコンサルティング株式会社 取締役

クリニック・病院・社会福祉法人の財務会計に従事し、有料老人ホームの立ち上げにも参画する。現在は、病院の財務・管理会計の導入を通じた経営改善も担う財務のプロフェッショナル。公的機関主催の研修でも講師を多数務め、数字に苦手な受講者でも「今までで一番分かりやすかった」と、絶大な支持を得ている。

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本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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