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キャッシュレス時代こそ財務管理の優先順位は高い/病院経営の指標・読み方Vol.05

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

キャッシュレス決済では、ワンクリックで多額の資金が動きます。不正が出来ない体制をどのように構築するか、財務管理体制構築の優先度はますます高くなっています。

ワンクリックで多額の資金が動く

先日、ある保険会社の社員が、百億円以上を不正にだまし取ったとして詐欺の疑いで逮捕されたというニュースが報道されました。一社員が会社の年間利益の25%に相当する金額のお金を動かすことが出来てしまったことについて、現代のキャッシュレス時代にはコンピュータープログラムの仕組みをよく知っている人であれば、PCのワンクリックで多額の資金を動かすことも可能であるということを、改めて認識させられました。

キャッシュレス決済のチェック

私たちの日常生活でも、今やお札や硬貨を扱うことが少なくなっています。コンビニやファーストフード店、デパート、本屋、飲食店等あらゆる場所でキャシュレス決済が普通になっています。キャシュレス決済にするとポイントがつくので、益々キャッシュレスが進みます。

皆さんは毎月のキャシュレス決済の明細をみて、全ての取引が間違いなく自分が行った取引だと言い切れますでしょうか? ポイント残高しか見ていないというようなことはありませんか? 取引明細で大きな金額が動いている場合は目につきますので確認すると思いますが、少額であれば、あまり気に留めないと思います。しかしもしかしたらそれが、他人の支払い分だったとしたら…

法人の財務管理の在り方が問われる

翻って法人を見たとき、どうでしょうか。現金管理、預金管理は万全でしょうか? 例えばこのような事はありませんか。

  • 特定のスタッフだけが通帳と印鑑の両方を扱えるようにしている
  • 特定のスタッフだけでネットバンキングの振り込み手続きをしている
  • 窓口現金、売店売上など日銭を扱う管理者が特定のスタッフだけになっている
  • 小口現金が大口現金になっている。その為、毎日小口現金の金庫には数十万円の現金が保管されている
  • 入院保証金、松葉づえ預り金、保険証忘れによる自費相当額の預かりなど一時的な預り金が帳簿に計上されていない…など

このような状況で不正が発生した場合は、本人は勿論ですが、法人の管理体制の在り方も問われることになるでしょう。不正が出来ない体制をどのように構築するか(財務管理の構築)は、経営者の責務だからです。

キャッシュレスだからこその怖さ

最低限、ダブルチェックは必須です。またネットバンキングを操作する人、通帳を管理する人、金庫の鍵を持っている人、銀行印を取り扱う人、現金を数える人と役割を分散して最終責任者を明確にしておくことも重要です。

今回発生した事件は、送金指示を受けた銀行も、普段から多額の資金移動の指示を受けているので不正な指示だと気づかなかったといいます。言い換えれば、普段と変わらない金額の取引であればいつもの取引として見過ごされてしまうということです。

キャッシュレスだからこそワンクリックで不正が可能になる怖さを思い知らされた事件でした。300年後ぐらいに、キャッシュレスが進みすぎて原点回帰が起こり、「石貨」や「物々交換」に戻る時代が来るかもしれないと想像するのは私だけでしょうか?

病院経営の健全化のために、いま必要な意思決定を議論します。

本稿の執筆者

藤原ますみ(ふじわら ますみ)
NKGRコンサルティング株式会社 取締役

クリニック・病院・社会福祉法人の財務会計に従事し、有料老人ホームの立ち上げにも参画する。現在は、病院の財務・管理会計の導入を通じた経営改善も担う財務のプロフェッショナル。公的機関主催の研修でも講師を多数務め、数字に苦手な受講者でも「今までで一番分かりやすかった」と、絶大な支持を得ている。

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本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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