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自治体病院の人事評価制度の見直しと、医療従事者の勤務環境改善

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  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート
  • 「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律(平成26年法律第34号)」が施行され、平成28年4月から、全国の自治体病院でも人事評価制度の導入が進んでいる。
  • しかし、人事評価制度が運用される中で、評価のバラつきが多く、このままでは効果が出ないと本格的に見直しを検討しているケースも散見されると聞く。
  • 株式会社日本経営の兄井利昌(次長)に、自治体病院の人事評価の特徴と、効果的な導入と運用のポイントについて尋ねた。

 

― 地方公務員法改正によって、自治体病院で人事評価制度の本格実施がスタートして一年が経過しようとしている。現場で対応していて、どのような実感を持っているか


DSC07801兄井
 総務省の「地方公務員法改正に伴う人事評価制度の導入状況等調査」によると、平成28年4月1日時点で、89.4%の地方公共団体が人事評価制度を導入済みと回答しています。しかし、地方公共団体によっては、行政職の人事評価制度をそのまま自治体病院にも導入しているケースも散見され、実際に人事評価を行う段階になって、現場の実情に合わずに不具合が出ている、混乱しているといったご相談の声を、よくお聞きします。

私どもも、全国の自治体病院様で人事評価制度の導入コンサルティングとその後の運用フォローを行ってきましたが、私たちの実感は、端的に言えば「本当に医療従事者の評価がこの評価制度でよいのか」ということです。行政職の人事評価制度をそのまま転用しては、逆効果になることもあると危惧しています。自治体病院については、まだまだこれから問題点が浮き彫りになり、本格的な人事評価制度の構築が検討されていくと考えています。

 

― 民間病院と比べたとき、自治体病院の人事評価制度にはどのような特徴があるか。あるいは、どのような難しさがあるか


兄井
 民間病院では、理事長のトップダウンで病院全体が動くというケースが多いと実感しています。処遇への反映もメリハリをつけてできるので、経営層がどのような問題意識を持っているのかメッセージがはっきりと伝わります。一方、自治体病院の場合は、公務員組織であるがゆえ、トップの鶴の一声で全てが決まるということは稀です。処遇への反映にも限界があります。

では、自治体病院では効果的な人事評価制度が運用できないかというと、そのようなことはありません。大切なことは、トップの思いが伝わるものになっているか、どのようにメッセージ性のあるものにするかということです。ここが、人事評価制度の本質なのだと思っています。

 

― 「メッセージ性のあるものにすることが、人事評価制度の本質」ということだが、分かり易く教えてほしい。


兄井
 例えば、創業したばかりの社員数名の会社であれば、飲みに連れてでもいけば、社長の思いは十分伝わります。「君の頑張りで、いい仕事が取れた。ありがとう」。 この一言を言われただけで、苦労も吹き飛ぶでしょう。「実は、こういうことで困っている。だから君には、こういうことを期待しているんだ」。 この一言で、社長が自分にどれほど期待をかけてくれているのか、ハッキリと理解します。そのような組織では、人事評価など必要ないかもしれません。

しかし、メンバーが数十名に増え、数百名となってくると、一人ひとりにそのような対応をすることはできなくなります。将来、何を期待されていて、今、どのようなパフォーマンスが求められているのか。このメッセージをしっかりと伝えて運用することが、人事評価の本質なのだと思います。

ですので、そこに込められたメッセージは、一人ひとりを思ったものになるはずです。AさんとBさんがいたときに、Aさんしか評価されず、Bさんは組織を去るしかないような人事評価にはしないはずです。AさんもBさんも評価される項目があって、なおかつ、AさんもBさんも自分の課題に気づくような評価。これは、職場で働く仲間に対する、トップや経営層の深い愛です。人事評価制度を設計するということは、仲間に対する愛や願いをどう表現するかということなのだと、私は思っています。

 

― しかし、トップがどれほど願いを込めても、運用の段階では、評価に合わせてパフォーマンスを演じるだけ、本質を変えることにはならないのではないか


兄井 
DSC08781例えば、「チーム医療」をしてほしいという願いがあったとします。現場もそれは分かっているのに、実際にはバラバラの動きをして、チームとも呼べないような状況になっている。これは、具体的にどのような行動をすればチーム医療と呼べるのかが明確でないためです。願いは分かっていても行動がバラバラになってしまっている。

そこで、「周りが相談しづらい雰囲気を出すのはやめよう」など、評価項目を具体的な行動に落とし込んでいきます。こうすることで、具体的に自分はどのような行動をとればよいのかがはっきりとわかりますし、また、病院からの具体的メッセージにもなります。

人事評価制度を作ると、2割くらいが肯定的な反応、2割くらいが否定的な反応、残る6割が無関心といった反応です。この6割の方の行動を変えていくことが、運用段階では重要なポイントになります。最初はしぶしぶ演じるだけかもしれません。それでもいいと思うのです。なぜなら、「相談し易いドクター」を演じているうちに、周りとの関係性が明らかに変わってくる。つまり「承認」です。処遇だけで行動を変えても、長続きしません。承認があって、初めて気づくのです。自ら気づいたことは、人から説得されるよりもずっと自分のものになります。

 

― 人事評価制度の運用がうまくいっている自治体病院と、難航している自治体病院では、何が違うのか。今後、どのようなことを想定して人事評価制度を見直ししていく必要があるか。


兄井
 病院や組織の状況がどのようであれ、トップに「導入したい」という強い思いがあれば、どんなに困難があっても導入はうまくいくと考えます。しかし、「法改正に対応するための形式的な導入」というイメージで伝わってしまったり、あるいは多くの自治体病院で見られるように、人事評価制度の対象から医師を外して運用していると、どこかの段階で大きく混乱したり行き詰ってしまうと考えます。

しかも自治体病院では、この先、労働時間削減という問題が横たわっています。この労働時間削減問題は、言うまでもなく、診療報酬改定や人事評価制度の運用以上に、大問題となるでしょう。これらはバラバラの問題ではなく、全て繋がっています。一人ひとりの生産性をどう上げるか。どのようなパフォーマンスを期待し、どう評価・処遇していくのか。病院に泊り込んで睡眠時間を削って診察に当たるという働き方は、今後はモデルにはできなくなります。しかし、医療従事者の方々のそのような使命感に医療は支えられているという現実もあります。そのような中で労働時間を削減していくには、診療部長など管理者のマネジメント能力・リーダーシップが不可欠になってくるでしょう。

どのテーマも、もう先延ばしできる猶予はありません。しばらくは私たちにとっても正念場になると覚悟しています。

 

 

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