あなたが求めているリーダーシップ研修はどのレベル?/組織開発のアプローチ
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
近年、病院において、法定研修や専門性向上の勉強会に加え、リーダーシップやコミュニケーション、マネジメントに関する研修に力を入れる傾向が増えています。
特に管理職や監督職の能力開発のためには、外部講師による研修を行っている病院もあります。
このような取組みは素晴らしいものですが、病院として求めるレベルと、実際に行われている研修のレベルは一致しているでしょうか?
今回は、研修における学びの「4つのレベル」について解説します。
「正しい目的意識」、「良質な学び・気づき」
まず、学びの「レベル1」は「理論を知る・理解する」レベルです。
たとえば、数学の授業で二次方程式の解の公式を覚えるのがこの段階です。
「レベル2」は「理論を使うことができる」。実際に簡単な方程式を解く体験をしながら、公式の使い方を学ぶ段階です。
そして「レベル3」は、「今ここで起きている問題に対して、過去に得た知識を統合して駆使することができる」レベル。
数学の問題集の最後の方に、難しい応用問題ばかり載っているページがあるでしょう。レベル3は、このような複雑な問題に直面した時、これまで自分が積み上げてきたあらゆる学習体験を使って、ふさわしい解法を見出すことができる段階です。
昨今のリーダーシップ研修は、その大半が講義+ワークの混合型研修に変化しつつありますが、基本的にはレベル1~2をカバーする内容になっています。
マネージャーの役割とは何か、部下との関わりはどのようにあるべきか講義を受け、グループワークやディスカッションを通して学びを言語化し、自らに理論を落とし込むといったような形です。 しかし本当に現場で使える知恵を身につけるには、レベル3の学びが必要になります。
レベル3の学びでは、一つひとつのテーマについて、学んだ基礎・応用の知識を現場の実践に結びつけ、できたこと・できなかったことを振り返り、その全てから学びと課題を発見し、次なる目標を決めて行動に移すという繰り返しが重要になります。
リーダーとしての人格形成や影響力を育んでいく上では、一つひとつのテーマの学びから実践目標を定めて「自らの体験に結び付ける」こと、一つひとつのテーマについて時間をかけながら丁寧に深めていくことの2点が必須の条件といえます。
レベル3の研修をデザインするには
私たちミライバが提供させていただく研修の多くは、このレベル3に当たるものです。レベル3の研修を設計するために必要なポイントを3つご紹介しましょう。
1つ目のポイントは、「思考を深める場を作る」ことです。
一回の研修の中で、レベル1から3まで深めていくことを目指してデザインします。新しい理論を知り(レベル1)、意見交換を通して理解を深める(レベル2)とともに、さらに深い内省やグループ対話を通して自分の現場と理論を結びつけます(レベル3)。
しかし、いくらそのようにデザインしてレベル3の入り口まで導くことができても、一回の研修で完全にレベル3を達成することはまず不可能です。レベル3を達成するためには、実践と振り返りを繰り返す必要があります。2つ目のポイントは、「実践と振り返りを前提とした年間企画を立てる」ことです。
同じ立場の受講者同士が関係性を培いながら、一年かけて現場実践・自らの振り返りと他者からのフィードバック・さらなる実践…とサイクルを回していくことになります。
そして最も重要なのは、3つ目のポイントです。それは「研修に経営者や経営幹部も関わっていただく」ことです。
たとえば、「研修冒頭に経営者自身の言葉で研修目的を伝えてもらう」、「幹部一人ひとりが受講者の想いや考えを理解しようとする姿勢を持つ」などです。
組織におけるレベル3の学びを阻害するのは「自分が頑張ってもこの組織は変わらない」という受講者自身の諦めです。だからこそ経営者・幹部には、受講者の内なる願いを行動に起こせるように環境を整え、サポートしていただきたいのです。
以上3つのポイントを押さえた研修はレベル3の学びをもたらすだけでなく、往々にして受講者全体の学習意欲をも高めます。自分の学びによって難しい問題が解けた時の喜びと達成感を知っている人は、学びに前向きになれるからです。
「良質な実践」、そして「良質な振り返り」
今回は、研修のレベル1~3についてお伝えしました。
実はさらにこの上、「レベル4」の研修も存在します。ここでは文字数の関係で割愛させていただきますが、将来の幹部候補や組織の中心人物に対しては、このレベル4まで求めたいという経営者も少なくないでしょう。
3月29日(水)のセミナー「病院幹部のための組織開発講座第8弾『リーダーを育てるとは何か』」では、レベル1~4全てについて解説いたします。申込者にはアーカイブ配信も予定しておりますので、院内の関係者の方々でぜひご視聴ください。
病院幹部のための組織開発講座第8弾『リーダーを育てるとは何か』
組織開発というアプローチ
- 病院の組織に未来はあるのか?
- 生き生きとした職場を築くための鍵
- 人づくりは「環境」が鍵を握る
- 長引くコロナ禍による医療現場の士気低迷の後遺症をどう脱却するか?
- 新年度から「力強く前進の流れを創り出す」
- 成果を出すために創意工夫を凝らす
- 管理職の志に火をつけ、部署の活動力を高める「効果的な」目標管理制度とは何か?
- 病院組織に「生気」を取り戻すにはどうすればよいのか?
- 事業計画と目標は、事業の進化と人材の団結・成長を生み出す鍵となるか?
- これからどのようにして病院組織の士気を高め、リーダー人材を育てるか?
- 管理職、監督職のポテンシャルを引き出す
- ファミリー経営の「強み」を活かす
- 管理職なら誰もが直面する“自己超越”という壁
- 管理職の主体性・リーダーシップをいかに高めるか
- 戦略・目標を実現するための組織づくり
本稿の執筆者
江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役
2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。
株式会社ミライバ/株式会社日本経営
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