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介護福祉の会計・財務レポート「社会福祉法人における内部統制Vol.06」

  • 業種 介護福祉施設経営
  • 種別 レポート

業務レベルの内部統制(人件費管理)

  • 第6回では、法人内の管理業務のうち、人件費管理について解説する。

人件費管理の業務手順とチェック体制

給与・賃金等の人件費の計上・支払については毎月必ず行う業務であり、かつ金額的にも費用に占める割合が大きいことから、内部統制を適切に構築・維持運営していく必要がある。

下記に、人件費管理に関する5つの業務を挙げた。それぞれの業務において、内部統制の整備がなされているか確認していただきたい。

1.人事情報管理  2.勤怠・超過勤務管理  3.給与計算  4.人件費の計上  5.給与の支払

1.人事情報管理

職員の入退社の登録を、特定の職員だけにまかせていないか。

職員の入退社や昇格・異動といった事項において誤った情報が記録されると、その発見が遅れることになる。人事担当職員による人事マスタへの登録内容は、上席者が人事情報登録申請書を照合し、承認を行う必要がある。

また、退職者のID等が即時削除されないと、それを利用しての不正アクセスのリスクや、架空職員への給与振込による横領・不正のリスクがあるので、それらを予防するためにも上席者がチェックする統制が必要となる。

2.勤怠・超過勤務管理

労働時間の把握について、出勤簿に手書きで記入していないか。

社会福祉法人では各事業所でのローカルルールが残っていることがある。その一例として挙げられるのが、事業所において、出勤簿に入退室の時間を手書きし、職員が押印していることである。働き方改革関連法では、労働時間の適正な把握方法として、タイムカード、ICカードによる記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な方法が求められている。これらについて変更がなされていない場合は、対応が必要となる。

3.給与計算

同一労働同一賃金について、就業規則や賃金規程の見直しがなされているか。

同一労働同一賃金のガイドラインでは、正職員と非正規雇用労働者において不合理な待遇の差が禁止されているが、同ガイドラインにない住宅手当、家族手当等においても説明ができる対応がなされているか確認が必要となる。

4.人件費の計上

各事業所の施設長が人件費の変動内容(予算比、前期比、前月比等)を把握しているか。

社会福祉法人では、コストに占める人件費の占める割合が大きいにも関わらず、大きな変動がないものとして、総額での比較はするものの、人件費の内容について分析をしていないことがある。例えば、特定処遇改善手当の支給があるため、事業所の人件費が減少している等である。人件費を分析することで、事業所の経営の実態を把握し、改善についての施策を検討する必要がある。

5.給与の支払

人事担当者が作成した個人別給与振込明細表を、上席者等が確認し承認しているか。

社会福祉法人の給与計算等は、ベテランの職員に任せきりのことが多い。しかし、その上長や、別の担当者により、振込件数、振込金額を確認し、その実行は責任者が行う必要がある。

内部統制構築のための準備・ポイント

社会福祉法人における人件費管理には次のような特徴がある。

  • 職員の採用・退職が多く、人事情報の管理が煩雑。
  • 施設ごとに給与規程や退職金規程が異なることがある。
  • さまざまな資格の職員、職種別の給与・賞与支給基準や手当など、給与計算が複雑。
  • 24時間体制の職員や、時間給等の非常勤職員など、勤務体系が複雑で、勤怠管理及び超過勤務手当の計算が煩雑。
  • 社会福祉法人会計基準により、1つの施設内で複数のサービス区分を兼務する職員の人件費の費用配分が必要。

社会福祉法人では上記のような特徴があるため、給与計算業務の実施について、次のような複数の選択肢が考えられる。

  1. 給与計算を各拠点や施設ごとに実施する。
  2. 給与計算を法人本部・業務部等で一括して実施する。
  3. 給与計算を外部の業者へ委託する。

社会福祉法人では、給与体系が事業所で異なる場合に、それぞれの事業所での給与計算が適している場合があるものの、給与計算は専門的であるため、法人本部等で一括して実施することが誤りを防止する適切な方法である。

しかし、社会福祉法人は職員数が多く給与計算が煩雑であり、給与計算の迅速化、法人本部・業務部の管理部門を縮小させたい等の理由で外部に計算を委託することもある。

どれを選択するかで、事務担当の業務内容が変わってくるが、働き方改革やコロナ渦における在宅ワークの推進を求められる面もあり、事務担当業務の合理化・効率化に適した方法を検討することが望まれる。

レポートの執筆者

田島一志(たじま かずし)
日本経営ウィル税理士法人 公認会計士・税理士

大手監査法人で、上場会社や医療法人の監査、財務コンサルティング、IPO支援等を、公的機関で中小企業の再生支援に従事したあと、2017年に日本経営ウィル税理士法人に入社。現在、社会福祉法人での会計指導、内部統制支援を担当する。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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