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組織開発コンサルティングレポートVol.011「コロナでムードが停滞した職場をいかに立て直すか?」

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート
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コロナでムードが停滞した職場をいかに立て直すか? 解説

株式会社日本経営 参与 株式会社ミライバ 取締役 / 江畑 直樹

業績が落ち込み、若手社員の離職が相次いでいるA社。起死回生のプロジェクトを発足し、これからの会社の方針、方向性をどうしていくのか、幹部を集めて未来を描くことになりました。

しかし、初回プロジェクトは重い雰囲気に包まれています。

やる気が感じられないプロジェクトの空気

誰もが分かっていたのです。新型コロナの影響で業績が落ち込み、その影響から抜け出すのは困難です。幹部にも今後の見通しが立たず、社員の意欲は低下しています。見限った若手社員の離職も相次いでいる状況でした。

プロジェクトの会場は重い雰囲気に包み込まれています。開始時間までの間は、下を向いたりスマートフォンを見たりする方が大半を占めていました。「今更、何をしようとしてるの? 意味ないでしょ?」そんな心の声が聞こえてきそうでした。

この雰囲気をどう変えるのか。お聞きしていた以上に、骨が折れそうでした。

そして、定刻になりました。

白けたムードの会議で、口火を切った社長

まず、口火を切ったのは社長です。誰もが、業績が厳しいとか、業界はこうだとか、お客様の状況などの話が出るものと思い込んでいました。

しかし予想に反して、社長の口から出てきた言葉は、業績や営業の話ではなかったのです。

  • これまでどのように人生を辿ってきたのか
  • 会社を創業したきっかけ、その時、どんな想いだったのか
  • これまでどう歩んで、何にチャレンジし、誰に助けてもらってきたのか
  • この仕事にかける情熱とは何か
  • 幹部や社員にどのような想いを持っているのか
  • この落ち込んだ状況に対して、みんなに申し訳ないという思い

はじめは緊張からかボソボソと小さな声で、幹部にはとても伝わっているとは思えませんでした。

しかし、話しながらご自身の言葉に想いがこもり、社長の声のトーンや身体の動きが大きくなっていきました。幹部は顔を上げ、次第に社長の話に惹き込まれていきました。

気づけば全員がメモを取り始めています。食い入るように社長の表情や身振りを見つめています。

そして、あっという間の2時間でした。

私は何名かの幹部を指名して、感想を聞いてみました。すると、口々に、今の経営状況に対して悔しい、やるせない、現状を変えていきたいとのコメントが返ってきました。中には涙をこぼしながら、諦めずにやり直したいと語られた方もいらっしゃいます。

キックオフは大成功でした。幹部の間で、気持ちが一つになったのです。改めて社長から全体に感謝の言葉がありました。

我々から意識を改め、未来の絵を描き、社員を導き、流れを変えていこう

この言葉は、まさにその場にいた幹部全員の気持ちを代弁したものでした。

社長は、予定を完全に裏切ってくれた

実は、この初回プロジェクトは、当然ながら事前に入念な打ち合わせがありました。

誰もが意気消沈している中で、社長がどんな発信をするかは会社の行く末を左右します。打ち合わせは一度では終わらず、二度にわたって、みっちり行うことになりました。

当初、社長は幹部の前で自らの言葉で発信することを躊躇されていました。「一言挨拶だけするので、その後の進行はあなたに任せる」と仰っていたのです。

しかし、色々とお話を伺っていくうちに、社長の中で幹部に伝えたい想いが少しずつ芽生えてきました。最後には、20分程度なら話をしてもいいだろうと了解を頂いていたのです。

ところが当日になると、社長の話は30分経っても1時間経っても終わりません。結局2時間ぶっ通しで休みなく想いを語り続けられたのです。

目の下には隈があり、原稿まで準備されていました。きっと、徹夜で原稿を準備されたのでしょう。

もともと3時間を予定していたので、私は幹部に対して様々な「問い」を準備していたのですが、その大部分が割愛となりました。社長は良い意味で、予定を完全に裏切ってくれたのです。

初回プロジェクトの勢いのまま、2回目以降もプロジェクトは順調に進んでいます。

会社のムードは、一歩踏み出すことで変えられる

今回のケースは、何がよかったのでしょうか。

第一に言えることは、「社長自らが覚悟を決めて本音を語られた」ということです。

先も見えず重い雰囲気だった幹部全体を目覚めさせたのは、自らの覚悟と意志を乗せて発した「社長自身の言葉」です。言葉に込めらたエネルギーが、全体に伝わったのです。

2時間という限られた時間の中で、局面をこのように変えたのは、もはや奇跡としか言いようがありません。経営者やリーダーの発する言葉には、このような不思議な力があるのだと思います。

しかし、ただ言葉を発すればいいのかというと、決してそうではありません。大切なことは、内から発する言葉なのかどうか、ということです。そして、その想いのエネルギーを聞き手全体でシェアし合う場を持つことです。

  • 自分が一番大切にしたいと思う「意志」と繋がること
  • その意志と繋がるために、自己内省や他者からの支援を受けて「自らを探求する」こと
  • 自分の意志に気づいたら、その「意志と繋がりながら言葉を発する」こと
  • その言霊を受け取った聴き手全体で感想をシェアしあい、「想いのエネルギーを深め広げる」こと
  • 気持ちが高まったところから、「未来についてシェアし合う」こと

今回は、社長がご自身に向き合って本音を語られたことが、エネルギーとなりました。しかし、それで終わっては、本当の意味でのシェアにはならずに終わったかもしれません。受け止め感動しシェアする幹部があったからこそ、ムードを変えることができたのだと思います。

それは奇跡ではありますが、どの組織にもそのような奇跡が起こり得るのです。だから、それを信じて一歩踏み出してください。社長でなくてもいい。変わりたいと強く思う誰かが、一歩を踏み出すのです。

このレポートの解説者

江畑 直樹(えばた なおき)
株式会社日本経営 参与 株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事する。約2年間にわたる医療・福祉のグループ法人への出向を含め、これまでに100以上の医療法人、社会福祉法人の支援実績を有する。
2018年に株式会社ミライバを設立し、組織の風土改革や次世代リーダーの育成、幹部・管理職の視座の向上等をテーマとする組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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