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問われる意思決定、新型コロナ「危険手当」を支給する

  • 業種 病院・診療所・歯科
    介護福祉施設経営
  • 種別 レポート

新型コロナ「危険手当」はいくら支給するのが妥当か

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「危険手当」に対する意思決定  解説

株式会社日本経営 / 取締役 橋本 竜也

医療関連機関の皆様は、新型コロナの感染拡大に心身ともに過酷な状況で戦っておられることと存じます。命がけで取り組んでおられることに心より感謝申し上げます。

さて、このような中で、「新型コロナウィルス患者の対応や発熱外来等に従事する職員に危険手当を支給する場合、いくらくらい支給するのが妥当なのか」という相談を受けることが増えてきました。

皆様の事業所でも検討課題になっているでしょうか?

「社会的価値」と「貨幣的価値」

人の行動を支えるものの捉え方に、「社会規範」と「市場規範」というものがあります。これをわかりやすくするために、私はそれぞれ「社会的価値」「貨幣的価値」と言い換えています。意味は言葉の通りですが、例を挙げたいと思います。

Aさんは好意で友人のキャリアの相談に乗ってあげたら、とても喜んでくれたから、ほかの友人にもいろいろと相談に乗ってあげるようになった。

評判を聞き付けたほかの友人が、「私の相談にも乗ってくれる? 謝礼として1,000円払うからさ。」と持ちかけた。

その途端、Aさんは興ざめしてしまい、相談に乗るのをやめてしまった・・・。

Aさんに、何が起こったのでしょうか。

「1,000円払う」という申し出がいけなかったことは、明らかです。

「お金のためにやっているわけじゃない」「喜んでもらえたからやりがいがあったのに」「これだけ相談に乗って、たったの1,000円? 時給にしたら250円!?」このように、金額に換算してみることを「貨幣的価値」と言います。

ところが最初のうちは、「あなたのおかげで、上司との関係がうまくいったよ。」「本当に助かった。あの時は実はすごく深刻だったんだ。」相談した友人がフィードバックしていたのです。Aさんは喜びを感じ、モチベーションが上がる。このようなことが「社会的価値」の実感です。

危険手当が引き起こす危険

多くの場合、社会的価値と価格的価値は、どちらかだけということはなく、どちらかが優勢な状態にあるものです。問題は、社会的価値が圧倒的に優勢な状態において、価格的価値が入り込むと、人は急激にやる気を失ったり、楽しくなくなったり、場合によっては虚しさすら感じてしまう、ということです。

今、医療関連で危険な状況の最前線で懸命を尽くされている方々は、まさに社会的価値の中で取り組んでおられるはずです。「自分たちがやらなければ、誰がやるのか。」「本当は私も休みたい。でも、これが私たちの使命なんだ。」「苦しんでいる患者さんを放っておけるわけがない。」このような気持ちではないでしょうか。本当に頭が下がります。

ここに、当然病院として配慮の気持ちで手当を出すことを考えられると思いますが、それをいくらにしたところで、「命がけで尽くして、たったこれだけ?」「手当があれば働くと思っているの?」「お金のために働いているわけじゃない」など、いろいろなネガティブな感情を引き起こしてしまいかねません。ギリギリで保っている精神の緊張状態も、一気に切れてしまうでしょう。

まさに、「危険手当が引き起こす危険」です。

ですので結論として、私は「支給しない」ことをお勧めしています。

社会的価値を支え、安心を提供する

現在進行形の今の状態で、手当を支給することはお勧めできません。

では、どうすればいいのでしょうか?

重要なことは、「社会的価値を支える」ことです。ですので、例えば、次のようなことが考えられます。

  • 毎日感謝を伝える(激励ではなく)
  • 特に危険な勤務に就く職員を、拍手で送り出す
  • 病院から、職員のご家族に感謝と病院の対策を綴った手紙をお送りする
  • 徹底的に地域に情報発信し、ホームページ等で応援メッセージを募る

さらには、危険な状態で仕事をしているので、「安心を提供する」ことに全力を注ぐことです。 例えば、次のようなことが考えられます。

  • 万が一感染し、休業を余儀なくされた場合、100%給与を保証することを宣言する
  • 万が一感染したら、最優先で治療にあたることを宣言する
  • 感染対策マニュアルを最新にし、院内に徹底するとともに、ホームページに公開したり、関連事業者にも配布する
  • ホテル等で自己隔離をするのであれば、その費用を病院が負担すると伝える

つまり、感謝を伝えること、安心を伝えることが重要です。

(ところで、「日本看護協会が危険手当を要望」という報道もありますが、これは正しいでしょうか? 言葉は「危険手当」でも、求めているのは、安心して仕事ができるようにしてほしいといことだと理解できます。単にお金をくれということではないですね。この本質が大事だと思います。「危険手当を要望」などと報道されてしまうと、お金を要求しているように思われて、本質を見失ってしまうと思います。)

命がけの貢献に、値付けはできない

私は、まったく手当が意味がないと言っているわけではありません。「社会的価値を支えつつ手当を出す」ということも、法人の判断としてあり得ると思います。

ただ、「普段支給している危険手当」とは分けて考える必要があります。普段の法人と従業員との信頼関係も大きく影響することでしょう。

では、具体的にどのような方法が効果的でしょうか。

先にお金の話をするから、貨幣的価値が社会的価値を侵害するのです。

もし支給するのであれば、ある程度収束が見えた段階で、皆さんに特別感謝表彰などをして、金一封を設ければいいのではないでしょうか。

表彰されたことは報われ感、金一封はおまけになりますから、「なんだ、これっぽっちか」という感情は最小限で抑えられると思います。

一般の企業で手当やボーナスを支給するニュースも出ています。しかし、一般の企業は社会的価値で出勤しているわけではありません。

医療従事者の方々、介護従事者の方々、現在の懸命な取り組みは、まさに社会的規範の割合が最大限になっている状況です。危険手当の支給は十分にご検討のうえ、ご判断いただければと思います。

「命がけの貢献に、値付けはできない」

このレポートの解説者

橋本竜也(はしもと たつや)
株式会社 日本経営 取締役

入社以来、人事コンサルティング部門にて、一貫して病院・企業の人事制度改革に携わる。2006年には調剤薬局に出向し、収益改善と組織改革を実現。コンサルティングにおいては、人事改革、組織改革のほか、赤字病院の経営再建にも従事。2013年1月福岡オフィス長に就任。2017年10月より株式会社日本経営取締役。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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