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病院の経費削減に繋がる具体策とは?収支改善を実現させるための取り組み方

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

近年、政府は、増大する国民医療費を抑制するため、診療報酬改定、包括払い(DPC/PDPS)への移行促進などの施策を実施しており、医療機関には、コストを抑制しながら質の高い医療を提供すること(生産性向上)が求められています。

また、医療機関の赤字傾向は続いており、収支改善のためにも生産性向上などの取り組みの必要性が高まっています。

そこで、この記事では、病院のコスト削減・経費削減に繋がる具体的な施策とその取り組み方についてご紹介します。

病院のコスト削減・経費削減の重要性

病院の主な収入源である診療報酬は、2016年の改定以降、診療報酬本体は0.5%前後のプラス改定、薬価等は1.0~1.5%程度のマイナス改定が続いているため、全体としては毎回マイナス改定になっています。

さらに、2020年からは、全国的な新型コロナウイルス(COVID‑19)の感染拡大による患者数減少の影響により、収入が減少した病院も多くあります。

費用については、人件費の増加とそれに伴う委託費の増加、消費税の増税、世界的な物流の混乱によって、一部の材料の仕入価格が大幅に増加しています。収入は、診療報酬や新型コロナウイルス(COVID‑19)の影響によって減少傾向にある一方で、費用は人件費や委託費、購入価格が増加傾向にあります。

その結果として、2020年度の決算状況が公表されている統計や弊社のお客様のデータ等から見ると、新型コロナウイルス関連の補助金の影響を除けば、多くの病院において利益率が低下しています。

各病院において、既に収入の増加や費用の削減には取り組みをされていると思いますが、これまではどちらかというと、診療報酬の算定や施設基準の取得など、収入面の増加に重点が置かれてきた傾向があるのではないでしょうか。

しかし、診療報酬改定や患者数によって影響を受ける収入の増加は、外部要因による影響が大きく、各病院でコントロールできる範囲は機能や規模などにもよりますが限定的です。そこで、各病院の主体的な取り組みによって改善が期待できるコスト削減を目指すことが、病院経営における重要なテーマとなっています。

病院のコスト構造

病院のコスト構造は、機能によって違いがあり、大きな分類では、一般病院、療養型病院、精神科病院に分けられます。

一般病院

一般病院では、医業収益に対する構成比でみると、人件費が約50%、材料費が約20%、経費が約14%、委託費が約6%、減価償却費が約5%となっています。

療養型病院

人件費が約60%、材料費が約10%、経費が約13%、委託費約7%、減価償却費が約5%となっています。

精神科病院

人件費が約60%、材料費が約10%、経費が約16%、委託費が約4%、減価償却費が約5%となっています。

共通するのは、一般病院、療養型病院、精神科病院のいずれにおいても、医業収益に対する人件費の割合は50~60%程度もあり、病院のコストの半分以上を占めます。

人件費

給与、賞与、退職金、法定福利費が主な内容です。

人件費に関連するものとして、医師や看護師をはじめとした専門職の人員確保、教育と人材育成、人事評価制度など、様々な取り組みが行われています。

これはひとつの重要なテーマですが、本稿では、コスト削減の範囲として取り扱うのは、材料費、経費、委託費、減価償却費としています。

医業収益に対する構成比では、材料費、経費、委託費、減価償却費を合わせて約35~45%あり、削減した金額は全て利益の増加につながることから、大きな成果が得られる可能性があります。さらに、項目によっては、比較的容易に削減できるものも含まれているため、各病院において検討を行っていただきたい内容です。

コストの種類

費用の適正化の範囲として取り扱うのは、医業収益対比で約35~45%の材料費、経費、委託費、減価償却費です。これらを分解して、内容を見ていくこととします。

材料費

まず、材料費には、医薬品費、診療材料費、給食材料費などがあります。材料費のうち、医薬品費、診療材料費は、特に一般病院では医業収益対比で20%近くになることから大きな割合を占めます。

経費

経費には、リース料、福利厚生費、旅費交通費、職員被服費、通信費、広告宣伝費、消耗品費、消耗器具備品費、会議費、水道光熱費、保険料、交際費、諸会費、租税公課、雑費などがあります。

経費は、各機能別の医業収益対比で約13~16%を占めますが、項目数が多く、各科目では金額の少ないものも含まれています。主な内容として、リース料は医療機器や車両等のリースに伴うものがあり、通信費は電話やインターネット契約、水道光熱費は電気、ガス、水道の料金、保険料には役員等の生命保険、病院の建物火災保険、医療行為等の賠償責任保険などがあります。

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委託費

委託費には、検査委託費、給食委託費、清掃委託費、医事委託費、警備委託費、寝具委託費などがあります。

減価償却費

減価償却費には、建物関係、医療機器、情報システムなどがあります。委託費は、各機能別の医業収益対比で約4~7%を占めます。

各病院で、何を委託として利用するかどうかの判断によりますが、一般的には既述のとおり、検査、給食、清掃、医事、警備、寝具などを委託しているケースが見られます。減価償却費は、各機能別の医業収益対比で約5%を占めますが、建物関係の設備投資、医療機器関係の設備投資、電子カルテなどの情報システム関係の設備投資を償却計上しています。

病院でコスト削減・経費削減に取り組むべき費用

コスト削減に取り組む項目の設定には、費用対効果の視点が重要です。
費用を下げるための労力が効果を上回るようでは、コスト削減の意味はありません。

この観点から、病院においてコスト削減の費用対効果が大きい項目に絞って内容を記載します。

医薬品費、診療材料費の購入価格の適正化

コスト削減において、まず、効果が大きいのは、医薬品費、診療材料費の購入価格の適正化です。

通常は、メーカーからの直接購入よりも卸会社を経由して仕入れるのが大半で、医薬品も診療材料も規格に則ったものを購入しています。従って、機能自体は決まっているものに対して、購入数量、購入頻度、仕入れルート、他の病院の購入価格とのベンチマーク等を検討することで、購入価格を交渉することがメインです。

委託費

委託費は単純な価格の交渉だけでなく、仕様の見直しも含めた交渉により、価格と品質の両方の交渉が重要です。

委託契約には、それぞれ契約の更新時期があるので、その時期を見据えながら、契約更新の前に見直しのための検討をしておくことが重要です。

委託先の企業候補の選定、仕様の内容による品質と人員の配置、関係する部門とのオペレーションの整理などを踏まえ、複数社から価格と内容のバランスにより交渉を進めていきます。

経費

経費は、項目数は多くありますが、通信費、水道光熱費、保険料は、費用対効果が良く、見直しの検討が進めやすい項目として注目されています。

減価償却費は、建物関係は金額が非常に大きいですが、建物関係の減価償却費は建築時点の影響が大部分となるので、本稿では検討の対象外とします。減価償却費のうち、医療機器については、必要な機能、購入価格、保守費も含めた交渉が有効な手段となります。

コスト削減・経費削減に繋がる対策と注意点

コスト削減の検討の際には、医療現場でのオペレーションに影響しないものと医療現場でのオペレーションに直接に影響するものがあります。

医療現場のオペレーションに影響しないものは、比較的に院内の調整も少なく、交渉や決定までスムーズに進めやすい内容です。

①医薬品と診療材料の価格交渉

オペレーションに影響しないものでは、医薬品の価格交渉や診療材料の価格交渉があります。

医薬品については、毎年4月頃から交渉を開始し、その年度の価格を妥結するまで数回の交渉を行うのが通常です。あまりに多くの卸会社に仕入が分散しているケースでは、価格交渉と同時に仕入先自体を絞って1社あたりの取引金額の増加と価格の値引きを交渉するようなことも有効です。

医薬品については、薬価が設定されているものが大部分であることから、あらかじめ交渉の目標値として、例えば、薬価差益に対して15%引きなどの設定をして、仕入価格の交渉に取り組みます。

②分析システムを利用した比較分析

診療材料については、弊社では各病院の購入データをお預かりして、分析システムを利用し単品単価の購入価格の比較分析を行っています。

分析システムは、各病院で独自に導入しているケースもあり、診療材料の価格比較自体は一般的になりつつあります。

分析システムを利用する場合は、購入金額の上位品目で且つ、他病院の購入価格より高いものをリストアップし、リストの上位品目から交渉を行っていきます。

診療材料は価格交渉によって、1病院あたりで数百万円から1千万円以上の仕入の削減につながるケースもあります。

医薬品との大きな違いは、医師により使用する手術材料が異なることが多く、また、仕入先の卸会社の整理が難しい品目があるなど、交渉相手先の卸会社が多数になる場合があり、基本的に1品ごとに価格を交渉していきます。そのため、年間で10~20品目程度の交渉が一般的な水準です。

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通信費、水道光熱費、保険料の見直し

最近では、通信費、水道光熱費、保険料などの見直しも医療現場のオペレーションに直接の影響がない項目として見直しが進んでいます。

通信費では使っていない電話回線の整理、インターネット契約の見直しによって削減ができることがあり、契約の見直しのみで費用の削減が可能な項目です。水道光熱費の中でも契約の見直しのみで費用の削減が可能なものが電気代です。

新電力会社への契約の切り替え、相見積もりによる既存の電力会社との価格交渉などで成果を挙げている病院があります。

そして、保険の見直しでは、保険によってカバーする範囲が過剰で保険料が高額になっているものを適正に見直すことで、費用の削減につながることがあります。

④委託費の見直し

委託費については、各項目によって交渉内容は異なりますが、給食委託、清掃委託、医事委託、警備委託などでは、仕様の内容と委託会社側での人員配置が価格に大きく影響しています。

それぞれ実際に必要な範囲での委託内容となっているのか、業務自体の見直しによって内容の削減が可能なのかを検討し、最終的に委託側での人員配置の減少につながるような形での交渉を行っていきます。

委託内容は、関係する部門の業務にも直接的に影響があるため、十分な事前の検討がないと、価格は下がっても現場が混乱する事態も起こりかねません。

このような事前の検討段階を踏まえると、委託契約の見直しについては、契約更新の半年から1年前ぐらいから関係者と準備を進めていくような内容もあります。

また、仕様内容自体にそれほど大きな変更要素がない場合には、既存の委託先と規模が異なる企業、新たに自院の立地する地域への進出を計画している企業の情報を入手し、相見積もりを得ることも効果があります。実際に同じ仕様でも年間数百万円単位で価格が下がるようなケースも見られます。

⑤医療機器のリストアップと管理

医療機器については、購入対象となる医療機器を病院全体で整理し、リストアップして管理することが基本です。

毎年度、当該リストから更新する機器を選定し、概算の設備投資額を予算化します。そこから、各機器において必要な機能の設定、候補となる機種を選定し、それぞれの購入価格と保守費のバランスを見ながら、見積もりを複数社から取得して購入を決定します。

医療機器については、どのタイミングで何を購入するのかという購入対象の整理から開始するので、具体的な購入の交渉に入る前段階からの準備も重要です。また、最近では使用しなくなった機器を専門業者に売却することも見られます。

病院のコスト削減・経費削減に取り組む上で大切なこと

コスト削減において大切なことは、交渉における判断軸を持つこと、そして継続して取り組むことです。
まず、規格が決まっている品目の購入では、基本的に金額面での判断軸を重視します。本稿に記載した内容では、医薬品、診療材料、通信費、電気料金などが該当します。

しかし、これらも単純に金額だけでなく緊急時の対応などもあるので、その点は留意が必要です。一方で、特に委託費では、金額の交渉の前に仕様内容の見直しを院内で調整することが必要です。

このように、コスト削減に取り組むにあたっては、各内容について金額を重視するのか、内容も含めて見直しが必要なのかの判断軸をしっかりと整理して進めていきます。

もし、事前の判断を誤ると、院内に大きな問題が発生する可能性があります。
また、コスト削減は、交渉して一回で終わるものではなく、継続して取り組むことが重要です。

様々な社会情勢によって、価格も変化する可能性があります。変化に対応していくためには、常に情報収集をすることが重要ですが、これは一部の経営陣や管理部門だけの役割ではありません。医療現場のオペレーションに関係する内容や医療現場の職員の人的なつながりからの情報収集も採り入れるには、多くの職員の協力が必要です。

そのためには、職員一人一人のコスト意識を高めて、職員自らが改善を進めていこうとする組織文化が重要です。また、卸会社など普段から協力していただける企業に対しても、職員全体の取り組みが伝わることで、良い提案等をいただけることもあります。有事の際だけでなく普段から協力的な関係性作りも重要と考えます。

まずは、短期的にどれだけコスト削減効果が得られるのか、目利きするところからがスタートです。
コスト削減に向けた効果的な進め方など、専門家によるオンライン解説・無料相談も承っております。お気軽にお問合せください。

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