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ファミリー経営の「強み」を活かす/組織開発のアプローチ

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 ホワイトペーパー

医療法人はファミリー経営をされているケースが多いかと思います。本稿では組織開発のアプローチから、ファミリー経営の強み・弱みを考え、経営と組織を上手く推進していくためのポイントを考えてみたいと思います。

ファミリー経営の「強み」

ファミリー経営の強みは何でしょうか。3つ挙げてみたいと思います。

経営理念の継承

1点目は、経営理念の継承です。

血縁者が経営を継承すると、創業者や歴代経営者を敬う気持ちがトップに芽生えますので、これまでの歴史や、創業精神などが受け継がれていきます。理念とは組織の存在意義であり、過去から未来へとバトンを渡し続けていく最も重要な精神です。

ここがブレブレになってしまうと、創業から積み重ねてきた組織のブランドや地域からの信頼を損ねてしまうリスクがあります。ファミリー経営では理念をつないでいく流れが起きやすいことは、大きな強みと言えるでしょう。

経営の永続性

2点目は、経営の永続性です。

わが国でも組織合併の件数が年々増加しています。これは経済的な理由や地域の人口動態など、様々な背景があってのことですが、ファミリー経営のトップは、過去から受け継いできた流れを大切にする精神が根付いているため、「自分の代で終わらせてはならない。次の子らの世代に継承していく」とする責任意識と覚悟が強いのではないでしょうか。危機的な状況に陥っても、打開の道を探ろうと最後まで粘り強く向き合います。レジリエンス(自己回復力)が高いことは、ファミリー経営の強みと言えるでしょう。

ガバナンスの醸成

3点目は、ガバナンスがしやすい点です。

ファミリー経営をしている組織は、「血族が経営をするものだ」とする認識が全体に生まれるため、現場職員は、血族の指示・命令に従おうとする意識が芽生えます。

病院組織は様々な専門職が属しているため、バラバラになりやすい傾向がありますが、ファミリー経営の場合は、秩序とまとまりを形成しやすいでしょう。跡取りとなる次世代経営者に対する敬意も、生まれ易いでしょう。

ファミリー経営の「弱み」

続いて、ファミリー経営の弱みを3点挙げます。

同族争い

1点目は、同族争いです。

血縁関係による争いは根深い問題になりやすく、手がつけられなくなるほどの大きな問題に発展しかねません。特にトップ間、すなわち先代理事長と現理事長の関係がこじれていると、戦略や人事といった経営の存続に関わる重大テーマから、日々の現場の意思決定に関わる細かなテーマまで、あらゆる事柄について意見の食い違いが起きてしまいます。すると決断が割れてまとまらなかったり、意思決定が遅れたりしてしまいます。

このような状況が続くと、現場の士気にもマイナス影響を与えたり、先代派と新トップ派といったように派閥が生まれてしまうことにもつながります。

また、関係が悪くないにせよ、先代が影響力を保持したまま理事長ポストを次世代に継承するケースもあります。これが良い流れにつながることもあるのですが、よくあるケースは、新理事長が力を発揮できず、「影響力がない理事長」として全体に認知されてしまい、トップも自信を失ってしまうことです。長い目で見てみると健全な承継とは言えません。

経営層の力量不足

2点目は、経営層の力量不足です。

「血族が重要ポストに就任すること」が前提になると、経営者や経営幹部としてのスキルや視座を十分に習得していない方が重要ポストに就任することにもなりかねません。

すると、先代の経営者・経営幹部が当たり前のように行ってきた意思決定やガバナンスができなくなり、経営や組織が短期間のうちに悪化・停滞してしまうということにもなりかねません。

ポストを任された当人からしても、充分な準備期間がない中でポストに就くため、戸惑いを隠せず、周囲の期待に応えられなかったり、影響力を発揮できないことに不安やストレスを抱えてしまうことになります。継承のタイミングにはリスクが伴うということです。

変化への適応遅れ

3点目は、変化への適応の遅れです。

ファミリー経営は、先代からの伝統を守るというスタンスが強くなりやすく、これまでの流れを大きく変えていくような革新を起こすことが難しいかもしれません。

ところが以前にも増して変化の激しい時代となり、新たな動きが生まれ続けています。過去からの伝統を継承し続けるスタンスだけでは、社会の変化に適応していくことはもはや不可能です。

ファミリー経営はどうすればいいのか

では、ファミリー経営を上手に推進していくためにはどうすればいいのでしょうか。強みを伸ばし、弱みは解消する。そのための取り組みを行うことになります。

ファミリー会議による「対話」

1点目は、ファミリー会議による「対話」です。

同族争いは根深いものになると解決が難しくなり、当事者のみで和解することも難しくなっていきます。

しかし最も大きな問題は、「本当に伝えたいことを、お互いに話せていない」ということです。

いつも感情的なぶつかり合いになってしまい、受け止めて欲しいこと、わかって欲しいこと、願っていることを伝える機会がなく、お互いに非難をし合ってしまいます。このようなやりとりでは、話をすればするほど逆効果です。

大切なことは、双方が自らの内側とつながり、「自分が本当に大切にしていることは何か」に気づき、伝えること。また相手の奥底にある気持ちに関心を払い、受容し、気づこうと努めることです

関係性が近くなるほど「期待値」や「やってもらうのが当然だ」とするエゴが生まれてしまうので、つい相手を責める気持ちが強まってしまいます。だからこそ、お互いが心を開き、自分の内側の奥底にある気持ちをシェアし、受け止め合っていく。心や気持ちのやりとりの「対話」が重要となります。

このやりとりは短期間で解決できるものでもないので、毎月1回ファミリー会議を開き、第3者を交えるなどして、時間をかけて取り組んでいく必要があります。

経営スキルやリーダーシップを磨く

2点目は、経営スキルやリーダーシップをしっかりと磨いていくことです。

重要ポストに就任した血族は、その瞬間から、経営者や経営幹部としてのスキルやリーダーシップが問われてきます。正しい意思決定と判断を行い、影響力を発揮していかなければなりません。

しかし多くの方は、それに関連する学習の機会と経験値を積まないまま重要ポストに任命されてしまいます。これではうまく役割をこなせるはずがありません。

これらのスキルは、闇雲に勉強すれば良いというものでもなく、「良質な学び」が必要です。

経営スキルについて言えば、①人・モノ・金・戦略等に関わる基本的なスキルを学習し、②それを自院に当てはめて特徴(強み・課題)を掴み、今後の方向性を見出すことです。

リーダーシップについて言えば、③内省やワークなどを通して自己を深め、自分自身のリーダーシップに気づき、当事者意識・主体性を高めること、④その意識の高さと勇気を持って、具体的なテーマを定め、現場に踏み込む実践を積み重ねていくことです。

これらのスキルを体系的に学習し、実践し続けられる学習環境が必要ですが、そのようなプログラムはなかなかありません。私どもが取り組んでいる「経営者・経営幹部向けの9ヶ月間プログラム」は、このような後継者の方々の覚醒を応援するプログラムです。

組織の構造改革

3点目は、組織を構造改革することです。

変化に対応していくためには、現場の主体性を高め、変化にスピーディーに適応していく力を養っていく必要があります。

「変革が問われる時代」には、柔軟さ・しなやかさと、スピーディーな意思決定・対応力が求められます。ファミリーだけで多岐にわたるテーマに対して意思決定や判断をしていては、変化についていくことは困難です。現場の力を底上げし、経営に参画する幹部を増やすこと、また管理職のリーダーシップ力を引き上げていく必要があります。

そのために行う組織の構造改革とは、ファミリーと幹部が集う「場」を作り、距離を縮めて意思決定力の質とスピードを高めていくこと、また管理職のリーダーシップを磨くトレーニングの「場」を作り、主体性と創造性を開花させることです。

ファミリー経営には「強み」があります。弱みを解消し、強みをフルに活かす流れは、必ず創り出せるはずです。

出逢いと交流は、必ずや人生の財産になる。

リーダーシップ向上プログラム

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組織開発というアプローチ

本稿の執筆者

江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。

株式会社ミライバ/株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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