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「新認定医療法人」の要件と、病院事業承継の予備調査

2017.07.13

  • 平成29年度の税制改正において、「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の延長等」が施行された。いわゆる「新認定医療法人」制度である。
  • 「新認定医療法人」制度は、平成26年度の税制改正で創設された「認定医療法人」制度の要件等を見直し延長したもので、社会保障審議会・医療部会にて、加納繁照委員(日本医療法人協会会長)や山崎學委員(日本精神科病院協会会長)からも、「画期的な前進である」と賞賛された制度。
  • すでに全国の病院で予備調査や対策立案がスタートしているが、ウィル税理士法人の大坪洋一(社員税理士)と、税理士法人日本経営の山本忍(部長)に、予備調査を進める上でのポイントを尋ねた。

 

― 「画期的」と賞賛される新認定医療法人だが、旧来の認定医療法人と比べてどこが画期的なのか


DSC07801大坪
 現在の認定医療法人は、平成26年の税制改正に伴い創設されたものです。通常、持分あり医療法人の出資者がお亡くなりになると、その出資持分に対して相続税がかかったり、持分の払い戻し請求が起こったりします。しかし、何億、何十億もの相続税の課税や払い戻し請求が起こると、医療法人が存続できない事態に陥りかねません。そこで、持分なし医療法人への移行を計画的に促すため、認定医療法人制度が創設されたのです。

しかし、認定医療法人制度によって持分のない医療法人へ移行すると、出資者の相続に係る相続税や、出資者間のみなし贈与税は猶予・免除されるのですが、原則として医療法人には贈与税が課されるのです。医療法人の贈与税も非課税とするためにはハードルの高い要件があり、移行が進まない要因ともなっていました。

今回の税制改正では、これらの要件が結果的に緩和され、持分なし医療法人への移行がし易くなったと言われています。例えば、従来ですと、贈与税の非課税基準に「理事6人以上、監事2人以上。役員のうち親族は三分の一以下」などの基準がありました。つまり、持分を放棄するだけでなく、非同族経営に移行しなければならなかったわけです。「新」認定医療法人制度では、「医療法人に対して贈与税は課されない」ことになり、替わりに認定要件が追加されることになったのですが、結果的に緩和され、要件がクリアしやすくなったとされています。

 

― 要件が緩和されたことで、病院の事業承継対策は一気に進むか


大坪
 新認定医療法人の要件については、まだ詳細は分からないのですが、端的に言うと、認定要件は緩和されたとしても、クリアするためには時間を要すると思っています。例えば、「法人関係者に特別の利益供与をしないこと」などが追加される予定です。MS法人や役員との取引を指したものですが、例えばMS法人との賃貸借契約や、医療法人からオーナーに対する多額の貸付金などは、これをどう整理するか、場合によっては大きな決断をしなければならない場合もあるでしょう。このように、新認定医療法人に移行したくても、すぐに認定されない可能性があるので、現段階で予備調査や対策立案をスタートしているというのが実情です。

 

― 事業承継対策に苦慮している医療法人が多い一方、「出資持分は財産権である。放棄したくない」という意見もあると聞く。


山本
DSC08781 ご自身で創業された理事長などは、出資持分の放棄に難色を示されたりすることがあります。出資してここまで大きくしてきたのに、なぜ放棄しなければならないのだ、ということです。しかし、後継者であるご子息は頭を抱えているわけです。純資産40億とあっても、大半が施設や医療機器。現預金は僅かしかないのに、それに対して20億の相続税を払わなければならない。そんなお金がどこにあるのか、ということです。

しかし、一方で親族に後継者がおられない場合は、将来M&Aをする可能性もあるでしょう。その場合は、持分があったほうが選択肢は広がるかもしれない。持分を放棄するほうがよいのか、しないほうがよいのか、まず目利きが必要になります。

ただ、中には、出資持分に大変なリスクを抱えながらも、それに気づいていない、検討できていないという医療法人があります。後継者も事務長も、「大丈夫だろうか」と不安には思っているわけです。しかし、口に出して理事長に進言することは、なかなかできない。シミュレーションをしてみて、愕然とされるケースもあります。

 

― 医療法人の出資持分に対するリスクを洗い出したり、新認定医療法人の予備調査を受けるためには、どうすればよいか。予算やスケジュールはどうなるか。


大坪 
持分のある医療法人である限り、代々、出資金対策を考えなければならないわけです。ですので、持分のない医療法人に移行して出資持分に悩む必要がなくなるということは、事業継続において大きなメリットです。しかし、新認定医療法人に移行後、6年間は認定要件を維持しなければなりません。ですから、要件を満たせるのかどうか、維持できるのかどうか、その場合の経済的なメリットはどれくらいあるのかを、まず目利きする必要があります。また、例えば、先ほど「法人関係者に特別の利益供与をしないこと」を要件の1つとして挙げましたが、これだけ見ても、どこまで求められるのか分かりません。ですので、社会医療法人や特定医療法人で求められる要件を参考に、予備調査を行います。

現在、全国の医療法人でこの予備調査をスタートしているのですが、通常の調査であれば150万円(消費税別)。税務・労務・運営の各パートを2日ほどかけて、規定など資料調査と現地調査をした上で報告書をまとめ、報告会を実施します。「出資持分を放棄しないほうがよい」、「新認定医療法人の要件クリアは難しい、ほかの対策を検討する必要がある」などと診断される場合も、もちろんあります。ご相談には最優先で対応しているのですが、スケジュールによっては、少しお待ちいただくかもしれません。

 

― 理事長や出資者にとって、新認定医療法人による持分放棄は、何かデメリットはあるか。


山本 理事長や出資者にとってのメリット・デメリットも、予備調査における重要なポイントです。出資金のすべてを理事長が所有されていれば、意思決定は早いでしょうが、ご兄弟やご親戚が出資者として名を連ねているなど、出資金を放棄するとしても承継するとしても、大きなリスクがある場合も少なくありません。事業承継は病院にとって最大の難関の一つで、理事長にとっては最大の仕事と言えるでしょう。やるなら、早いほうがよい。どのようなリスクも課題も、時間さえあれば一歩一歩、必ずクリアしていけると信じています。

 

本稿はインタビュー時点の情報等に照らして一般的な内容を分かりやすくまとめたものです。実際の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

 

 

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