行動発揮に影響する心理要因/チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論vol.04
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業種
病院・診療所・歯科
介護福祉施設
企業経営
- 種別 レポート
行動発揮に影響する心理要因
株式会社日本経営 / 取締役 橋本 竜也
本稿は、株式会社ビジネスパブリッシング「月間人事マネジメント8月号」に「 チームパフォーマンスを高める組織強化の方法論<4>チームパフォーマンスに影響を与える心理要因(2)」として掲載されたものです。
心理要因の内容・ポイント(後半⑥~⑨)
チームパフォーマンスとは、チームの成果につながる主体的行動の発揮度合いである。
これまでの連載では、この主体的行動として8項目を挙げ、その発揮に影響を与える心理要因が9つあることを紹介してきた。
前回は、心理要因のうち、①心理的安全性、②チームへの愛着、③目標共有、④メンバー信頼、⑤チャレンジ精神、を取り上げた。今回も引き続き、心理要因と向上のポイントを解説する。
6.仕事のやりがい
担当している仕事の充実感、意義を感じている度合い。
これは特に「最善行動」「顧客貢献行動」「チーム運営向上行動」に影響を与える。やりがいを感じているからこそ、より積極的に行動しようとする面があるだろう。
やりがいを高めるというのは非常に難しい課題だが、金銭的報酬だけでは相当難しい事情は、すでに、人事関係者には常識だろう。やはり、仕事そのものの面白さ、奥深さ、達成感、成長実感、貢献実感などが得られるようにすることがポイントである。
特に、最近では若者を中心に、自分の仕事がどのように社会に貢献しているかを非常に重視する傾向もあり、仕事の意義付けが重要なカギを握る。
また、やりがいは「今」だけで捉えると十分ではないことにも気を付けたい。
「この仕事を続けた先に何があるのか」という、未来への視点も重要で、つまり、将来性や成長性が見えるようにすれば、今が苦しくてもやりがいを感じるという面がある。この仕事を通じて何が実現できるのかを示していくことは、人事部門・リーダーともに重要だろう。
7.プロセス重視
仕事のプロセスをチームとして大切にしていると感じる度合い。
これは特に「プロセス改善行動」に影響を与えるが、「チーム運営向上行動」「メンバー支援行動」「チーム力活用行動」にも影響を与える。
チームが結果至上主義ではなく、プロセスも重視していると感じられれば、自分の仕事の改善に加え、チームやメンバーの向上にも主体的に取り組むようになるという現象は興味深い。
チームが結果を出すことは絶対的に重要である。
しかし、結果が良くても悪くても進め方を振り返り、良い結果を出すには良いプロセスが必要だということをリーダーが説いたり、結果が悪ければ徹底してプロセスを見直したりするなど、プロセスを重視したチーム運営は、多くの面でチームに良い影響をもたらす。
結果重視のマネジメントは時にメンバーを委縮させるが、プロセス重視のマネジメントならメンバーの主体的行動を引き出せる。
また、プロセス重視のマネジメントは、心理的安全性にも良い影響を与える。
結果で追求されるのではなく、どう取り組んだかを問われる。これはこれで厳しいが、組織全体がこうした風土になれば、働く人のマインドセットもポジティブに変化していくことが期待できる。
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8.顧客重視
自分たちにとっての顧客は誰で、どのようにその顧客に役立っていくのかを意識している度合い。
これは特に「顧客貢献行動」「最善行動」「プロセス改善行動」に影響を与える。
顧客貢献に向けた取り組みを引き出したいのであれば、「顧客は誰か、どのように役立とうとしているのか」を明確にし、メンバーに意識付けたい。
直接部門の場合は顧客を明確にしやすいが、それでも一般化されすぎていて顧客像が明確にイメージできないこともあるので注意したい。
例えば、“コーヒーを飲みたい人”とするよりも、“コーヒーを飲みながら仕事の合間にリラックスしたい人”としたほうが、自分たちが何をすべきかがより明確になるだろう。
より難しいのが間接部門だ。筆者の経験からすると、間接部門の顧客像は安易に内部顧客に絞らないほうが、メンバーのモチベーションが高い印象がある。
例えば、人事部の顧客は「従業員」「経営陣」「会社そのもの」としがちだ。間違いではないが、それよりも、事業の直接的な顧客を捉えたうえで、人材面から最高のサービスを提供するという使命に読み替えたほうが、人事施策の研究や教育制度の充実などにより積極的に行動できている(意識が高い)ケースが多い。
顧客は1種類とは限らない。自分たちが取り組むことは、誰のために、どのように役立つかをメンバーが理解できるようにすることがポイントである。
9.チーム貢献への自信
メンバーとしてチームの様々な活動の場面(業務改善など)で役立てると感じる自信の度合い。
この項目は特に発信行動に影響を与える。
これを高めるには、「意見や提案が必要だ」というメッセージを発信すること、上司や他のメンバーが相談を投げかけることなどがポイントである。つまり、“本人の自信”もさることながら、“必要とされている実感”が重要である。
なお、前回、心理要因はチームの雰囲気に影響を受けると述べたが、実は、チーム貢献の自信はチーム全体の影響はあまり受けない。言い換えると、個人間のコミュニケーションや面談などでの働きかけが効果的である。
チームの課題に応じた支援を
図表 成果実現のための主体的行動
前回と今回で解説した心理要因が特に影響を与える主体的行動を一覧で整理した(図表)。
どの心理要因も行動に影響があるが、特に効果が期待できる部分に〇を付けている。この関係は、業種等によって多少の違いは生じるが、ある程度共通しているので、活かし方次第で、チームの課題に応じて人事部が支援するということも可能である。
例えば、慣れやマンネリのためか、どうも仕事がほどほどで活気がないというチームの場合、「最善行動」に課題があると考えられる。
そうであれば、「目標共有」「仕事のやりがい」「顧客重視」などを重点的に取り組んでみるとよい。
チームの連携がしっくりしていない場合は、「メンバー支援行動」に課題があると考えられる。
そうであれば、「心理的安全性」「目標共有」「チャレンジ精神」「プロセス重視」などを重点的に取り組んでみる。
支援のポイントはここまで解説してきた通りで、より具体的には、研修の形で提供したり、 リーダーのマネジメントを個別に支援したりすることなどが考えられる。
このレポートの解説者
橋本竜也(はしもと たつや)
株式会社 日本経営 取締役
入社以来、人事コンサルティング部門にて、一貫して病院・企業の人事制度改革に携わる。2006年には調剤薬局に出向し、収益改善と組織改革を実現。コンサルティングにおいては、人事改革、組織改革のほか、赤字病院の経営再建にも従事。2013年1月福岡オフィス長に就任。2017年10月より株式会社日本経営取締役。
本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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