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介護福祉の会計・財務レポート「社会福祉法人における内部統制Vol.01」

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

社会福祉法が求める内部統制(概要)

  • 企業統治の枠組みに魂をいれて動かしていくのが内部統制であり、 内部統制を整備・運用するのは経営者自身である。
  • 本レポートでは、社会福祉法人における内部統制についてお伝えする。

内部統制の導入が進んでいるとは言いがたい状況

日本を代表する一流企業での不祥事や、大手企業の従業員による多額の資金の横領がたびたび発生している。それを止められなかった取締役や管理者の監督に油断があるわけだが、大企業といえども個人の管理能力には限界がある。

社会福祉法人についてはどうか。自分たちには関係ないと言い切れるだろうか。たとえば、次のようなことはないか。

  • 職員が自由に建設的な意見を言えない雰囲気がある。
  • 管理部門など特定の職員に負担が集中している。
  • 事業拡大が続き、財務状況に不安がある。
  • 幹部同士の仲が悪く、対立している。
  • 他法人との統合・譲渡を検討しているが、価値を上げるには相当な努力が必要。

これらのことで、頭を悩ませている経営層はいないだろうか。

近年、コンプライアンス、コーポレートガバナンスという言葉が認知されている。

では、内部統制はどうだろう。聞いたことはあるけど、よく知らないというのが実態ではないか。

上記のガバナンスなどは、企業統治の枠組みを法律で規制したものである。これに魂をいれて動かしていくのが内部統制であり、整備・運用するのは経営者自身である。

しかし、多くの組織で、不正や不法行為は真面目な自分の法人とは関係がないと思い込んでいるため、内部統制の導入が進んでいるとは言いがたい状況である。

社会福祉法人において求められる内部統制の整備

一方で改正社会福祉法では、内部統制の整備を理事会で決定することを規定している(社会福祉法第45条の13第4項第5号)。

社会福祉法人では、公金の適正かつ効果的使用により地域における公益的な取組みについて責任を負っている。

したがって社会的責任・公益保護の観点では、営利法人よりも、一層、重いといえる。

つまり、適切な内部統制を整備して組織活動を的確にコントロールすることがいずれの社会福祉法人においても求められるのである。

コントロールしていく仕組みを整備・運用する

内部統制が認知されないのは、その定義が難しすぎて、直感でわからないためである。

誤解を恐れず言うならば、理事長から職員に至るまで、誰からも監督されない状況で、自らを律して正しい判断をし、合理的な行動ができる人がいるだろうか。あるいは、誤った判断、誤った処理、怠けてしまうこと、想定外の事実の発生など、全くないといえるだろうか。

すなわち、人間のすることには必ずリスクが伴う。

それを個人の努力だけではなく、各部署において、あるいは他部署の協力を得て、法人内部で自らコントロールしていく仕組みを整備・運用することが内部統制である。

この内部統制の整備・運用は、法人全般の統制、各事業所の業務実施に関する統制、経理決算体制に関する統制に区分して行う。

たとえば、法人全般に関して、経営者の判断の誤りは、組織の存続に影響を与える。

決断するのは経営者であり、その熱意は大事だが、思い込みではいけない。

だからこそ、経営者は合理的な判断・行動を行い、自らを律するため、進んで厳しいガバナンスによりチェックを受けることが必要だ。

そして限りある資源において、利用者へのサービスを最大化できるよう組織のルールを整備し、運用しなければならない。

事業所での業務実施においてもリスクがある

現場は多忙だと主張する。しかし一方では、長年の慣習により非効率な作業や属人的な作業が継続されている。

ところで、事業所での業務実施、利用者へのサービスを提供するのは現場の職員である。その業務の実施においても、さまざまなリスクがある。たとえば、

  • 利用者へのサービス提供に関する請求・回収業務に関するリスク
  • 介護物品の購入業務に関するリスク
  • 職員の雇用・人件費支払いに関するリスク
  • 資金の取扱いに関するリスク、情報流出のリスク ・・・など

これらのリスクが具体的にイメージできれば、十分な内部統制が整備できるはずだ。

各現場の業務を適切に、効率的に行うのは個人だけの力では限界がある。職員がミスや不正を起こすような誘引を排除する仕組みを構築することが、内部統制である。

すなわち、事業所内での職員同士のチェック、上司によるチェック、他部署からのチェック、業務の実施における手入力の防止、職員に現金を触れさせないなど、さまざまな局面で、統制の方法がある。

次回以降、これらの内部統制の具体的な内容について解説する。

レポートの執筆者

田島一志(たじま かずし)
日本経営ウィル税理士法人 公認会計士・税理士

大手監査法人で、上場会社や医療法人の監査、財務コンサルティング、IPO支援等を、公的機関で中小企業の再生支援に従事したあと、2017年に日本経営ウィル税理士法人に入社。現在、社会福祉法人での会計指導、内部統制支援を担当する。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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