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介護福祉経営コンサルティングレポート「稼働率を向上させるVol.05」

  • 業種 介護福祉施設経営
  • 種別 レポート

地域包括ケアシステムを理解し活用する

  • 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントについて、現場のコンサルティングの実例を踏まえてお伝えする。
  • まずは複数回にわたり、介護施設の稼働率向上について具体策を交えたポイントを解説する。

地域包括ケアシステム沿った営業活動をする

管理者や相談員が忙しい業務の合間を縫って外に出て行くのは営業活動のためであるが、その本質とは「地域との関係作り」である。営業活動を「施設に利用者を紹介してくれるよう、窓口に働きかけるためのもの」と解釈しているうちは、本当の意味での地域との関係作りにならない。

「人に必要とされるから使ってもらえる」とはサービス業の基本であるが、その考え方は営業活動でも同様である。地域に必要と思ってもらえる営業活動としなければ、時間を割いたとしても成果に繋がらないのである。

では、地域に必要とされる営業活動とはどのようなものか。それは介護事業である以上、「地域の社会資源にかかわる人のお役立ちになることを通じて、地域高齢者のお役立ちにつながる活動をすること」である。

一見、営業の範疇を超える活動のように聞こえる部分もあるかもしれないが、言い換えれば「地域包括ケアシステムを理解し、その考え方に沿った営業(窓口訪問)の工夫をすればよい」というだけのことである。

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「健康とは何か」という問いかけ

では、それはいったい、どのようなことなのだろうか。

地域包括ケアシステムとは、「高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる」ような地域の包括的な支援・サービス提供体制と説いている。

つまり、誰もが自分の居場所作り、「私はここにいてよいのだ」と思える環境を、家庭・地域を含めて整えていくことである。

この考え方は、地域包括ケアシステムの土台となったWHO提唱のICF(国際生活機能分類)の考え方にも通じている。

ICFの考え方を簡単に整理すると、「健康とは何か」という問いかけに通じる。

例えば、数年前に脳梗塞を発症し利き腕が麻痺になってしまったA氏がいるとする。

A氏は生活において不便な状態にあり、健常な人たちの視点からすると明らかに「不健康」に見える。

しかしA氏からすると、生活費は年金だけで十分に間に合い、食事準備など細かい家事をヘルパーや宅配食に手伝ってもらう以外は、何でも自分でできる。趣味であったカラオケも、行きつけのスナックに行くことができて、馴染みの仲間に手伝ってもらいながら存分に楽しむことができている今の生活は、あまり苦労をしているとは感じられていない。

つまり、A氏からすると、至って「健康」的な生活を送ることができているのだ。

望む生活が送れているか否か

一方、別の同世代のB氏はというと、特に大きな病気を患ってはおらず五体満足、大きな一軒家にも住んでいて、肉体的にも経済的にもいわゆる「健康」状態に見える方である。

しかし会社経営をしていた夫に先立たれ、後継者のいなかった会社を清算するのに私財を使い切ってしまった。

借金までは残らず、自宅も手元に残り、年金受給で最低限の生活には困らないはずなのだが、生活の質を落としたショックと気恥ずかしさで他者との交流を断ち、家に引きこもったままとなった。

そして、在りし日の豊かだった生活のことばかりを思い浮かべては、何をする気力もなく呆然と日常を過ごしている……。

このB氏の状態は、本当に「健康」であると言えるだろうか。

この二人の事例から見えてくるのは、人にとって健康とは、「身体に異常がない状態」だけを指すものではない、ということだろう。

私たちが本当に求めている健康とは、「望む生活が送れているか否か」にかかっていると言っても過言ではない。


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あらゆる選択肢を提供できる営業

その方の「健康」を考えようとした時に、病気や怪我に着目をする「医療中心モデル」から、生活環境も含めた総合的な視点で健康状態を捉えようとする「生活中心モデル」へと、考え方の転換が求められている。

私たち「介護」という仕事に携わる者の考え方としては、少なくともこの「生活中心モデル」への切り替えが特に重要になる。

医療的な技術・設備があり、目に見える病気や怪我が治りさえすればその方が健康になるという考え方から、その方が本当に望む生活を取り戻すことができてはじめて健康を取り戻したと捉える考え方へ。

介護サービスにおける営業活動とは、この「生活中心モデル」が実現されるために、医療以外のサービスが(自施設を中心に)地域に存在することを知ってもらい、使いこなしてもらうための手助けをすることに他ならない。

だから、必要のない方に自施設を売りつけるような技術は必要とされない。

地域の誰が何を必要としているかを知り、そこに本当に必要なサービスのみが行き届くような、精緻なマッチング力が必要とされるのだ。

自施設のみを紹介していたのでは、それは実現できない。地域のサービス全般を知り、あらゆる選択肢を提供できる営業を行う必要がある。

それこそが営業活動であり、地域包括ケアシステムを推進していく役割でもあり、最終的に地域のお年寄りのお役立ちに繋がっていくのだ。

では、一事業所の営業担当者でありながら、地域包括ケアシステム推進も両立させるような営業活動とは、どのように行えばよいのか。次回よりそのポイントを解説していく。

レポートの執筆者

沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント

株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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