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介護DXのメリットとは?DXを推進する理由と効果的に進めるための3つのステップ 

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

介護DXのメリットとは?DXを推進する理由と効果的に進めるための3つのステップ

記事監修:株式会社大塚商会

執筆者:株式会社日本経営/沼田 潤


介護業界では、介護報酬改定等による介護事業周辺の環境変化の動向に敏感になっています。

特に、2025年の大きな変化に向けては、ロボット・AI・ICTの実用化推進による人員基準要件緩和への対応など、環境変化が起きるのではないかと考えられています。

これらの環境変化に適応できるか否かが、これからの日本において介護事業者が生き残るための必須条件になることは間違いありません。そして、そのような適応を、人口減少時代に行うためには、「介護DX」の活用が必要となっています。

この記事では、DXを推進する理由やメリット、介護施設におけるDXの課題、介護DXを効果的に進めるための3つのステップについて詳しく解説していきます。

介護DXとは

介護DXとは、介護現場にAI・IOT・ICTのデジタル技術を取り入れ、介護業務のワークフローを変革し、利用者と職員を笑顔にするのが、介護DXです。

介護保険法の総則では、「加齢に伴って介護が必要になった時、要介護者の尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付をおこなう」とあります。

非常に厳しい時代の最中ではありますが、介護DXを実現することで、利用者と職員の皆さんが笑顔になっていくことが何よりも求められているのです。

DX化のメリット

DX化にはあらゆる視点からのメリットがあります。

経営者視点からのDX化のメリット

経営者視点からのDX化のメリットは、現場業務の効率化による職員配置のスリム化です。
つまり採用難時代の対策としての効果が最も期待されるところでしょう。

近年の介護職員の採用難は深刻の一言に尽き、マンパワー不足による現場からの悲鳴は後を絶ちません。介護の仕事は人間だけにしかできないものばかりではありませんので、機械的に対応できるところはICTなどに任せ、人の力が本当に必要な部分だけに注力できるようになることが望ましいと言えるでしょう。

現場の介護職員視点からのDX化のメリット

現場の介護職員視点からのDX化のメリットは、考える仕事を補ってもらえることです。
介護の現場は非常に頭を使いますが、身体を動かす仕事が忙しいと頭を使う仕事が時間外にまで回されてしまいます。

記録をまとめる、利用者のことを分析する、知識を増やすなどはDX化の得意分野ですから、使いこなすことができるようになると、現場業務はよりスムーズに取り組みやすくなります。

介護DX導入を効果的に進めるためのポイント活用事例について、
上記フォームよりダウンロードいただけます。

介護DX活用事例!推進する理由

介護事業がこれらの環境の変化に対応していくために超えなければならない重点課題は、①職員確保(離職率の低減)、②制度対応(LIFEをはじめとする)と言えるでしょう。

それぞれの場面では、すでに先行して「介護DX」が導入されてきた事例があります。

これからの介護DXの活用に向けて、現時点での介護DX活用の振り返りを行っていきましょう。

①職員確保(離職率の低減)

職員確保については、理想は採用した職員が若手から中堅へと成長し、選び抜かれた新しい職員を少数精鋭で採用していくという正のサイクルができることが理想と言えます。

これが実現できれば、職員のスキルも年を追うごとに向上し、より良いサービスが常に提供できるようになります。

しかし現実は、高い離職率に頭をかかえ、多くの新規採用に奔走することになり、職員の育成が追い付かないことからサービス力が低下し、現場の達成感が得られず、不満が溜まり離職につながるという負のサイクルに繋がっているのです。

さて、「介護DX」と一括りでまとめても、その内容は様々ですし、解決できる領域もまた無限大であると言えます。しかし、現時点で「介護DX」に求められているのは、シンプルに「職員の仕事が楽になるのか否か」。

効果も可能性もまだまだ見えにくジャンルであるがゆえに、とにかく「すぐに職員の助けになるか」が現時点での導入のカギになっていることは否めません。そして、その限られた「介護DX」活用の場面のひとつが、この「現役職員の離職防止」という役割になります。

離職の要因の上位には、毎年必ず人間関係によるものがランクインしています。

人間関係を円滑にするために必要なことは、まずはコミュニケーションが円滑に取れているか否かです。特に世代間のスムーズな連携が求められる介護現場においては、それらの間でのコミュニケーションをどのように行うかがが離職防止の鍵となります。

そこで大活躍をしたのがICT機器の導入です。

まず、直接的なコミュニケーションという点では、インカムの導入が大きな役割を果たしました。介護現場はチームプレイと言いつつ動きは個人です。二人同時に同じ場所で働くことすら稀な環境であり、一日働いても会話がままならないということも多くありましたが、インカム導入施設ではそのような距離によるコミュニケーションの齟齬を解消しました。

また、タブレット機器における記録の入力により、文字情報の齟齬も減りました。文字そのものの読みやすさ、同じ選択肢の中から言葉を選べるなど、年代を超えた共通言語を用いることができることに、スムーズな情報伝達を可能としました。

介護DXでは、より情報の共有を進めて職員間のコニュニケーションが上がり、より働きやすい環境(楽ではなく、楽しい)を構築していくことが求められるようになっています。

②制度対応(LIFEをはじめとする)

制度対応について、LIFEの運用が始まって苦労されているという声をよく聞きます。

しかし、記録業務をデジタル入力し、適切な介護ソフトとの連携ができていれば、普段の記録やモニタリングからほぼ自動的にLIFEデータは生成されるようになります。

経営的に言えば、LIFE加算の取得は介護事業所運営にとって死活問題です。加算取得条件をクリアしていなければ、そちらに多くの時間を割かざるを得なくなります。

より良い環境で利用者への質の高いサービスを実施するためには、LIFEに時間を割かずに済む入力環境を作り上げていく必要があるのです。また、LIFEデータをどんどん提供し、フィードバックデータもしっかり活かせるようになることで、介護サービスの質は高まっていくというのが本来のLIFEの在り方です。

LIFEデータがどんどん蓄積され、AIで利用者の体調変化の予兆を検知できる様になる日も近いのかもしれません。その時にLIFEデータ提供がままならい状況では、適格なフィードバックが受けられない状況に陥るかもしれません。

介護施設におけるDXの課題

介護DXを含め、新しい取り組みは成果が上がって初めて評価をされるという傾向があります。

新たに仕事増えたにもかかわらず、成果が上がらなかった場合には、導入そのものが現場から酷評されてしまうのです。

チャレンジをしたことに意義があったとはなかなかならないようです。そうすると、せっかく費用をかけて導入した機材、システムが「使われない」で放置されてしまうということも、現場では起きているのです。

改めて、介護DX導入にあたっての課題を整理していきましょう。

現場がついてこない

介護DXを使うのは現場職員ですが、前述のように現場は仕事が増えることを嫌いますので、導入した以上はすぐに成果が求められます。当然、介護DXとはいえ、すぐに成果が出るとは限りません。冒頭から逆風の中でシステムの定着を目指し、徐々に成果と信頼を勝ち取っていかなければならない中で、覚悟をもって運用を続けられるかが鍵と言えるでしょう。

費用対効果がシビア

介護DXは、基本的に現場の効率運用のためのシステムであるため、はっきりと利益貢献が数字で表れにくく、費用対効果を求めることが難しいという壁に突き当たります。導入する経営者・管理者側も、成果が出ていると分かれば余裕をもって、長い目で運用を現場に任せられますが、成果が出ている実感がなければ現場にしっかりと運用することを求めざるを得なくなります。そうすると、過度な要求に現場が疲弊してしまうという結果にもつながってしまうのです。

システム単体では成果を出しにくい

介護DXは、介護現場の総合的な業務の一部分を担う仕組みですので、それ単体が優れているからと言って大きな効果を発揮するとは限りません。むしろ、システムの能力そのものよりも、全体とのシナジーがどれほどあるかが重要である場合が多いくらいです。それゆえに、介護DXの選択は非常に難しいものと言えるのです。

介護DX導入を効果的に進めるための3つのステップ

ここから、介護DX導入を効果的に進めるための3つのステップについて解説します。

①TOPの取組みへの強い意志

変革には負荷が伴い、成果が出るまでに時間を要します。トップが短期的な成果に右往左往するのではなく、やると決めた以上は腰を据えて成果を出しに行くという姿勢こそ大切になってくるのです。

具体的に求められるのは、キーマンへの権限移譲と、時間の保証(賃金含む)です。

②事業所の課題の明確化

TOPの意志を実現するにあたり、何が実現可能か、何が障壁となるかを明らかにするため、現状の把握と課題の洗い出しを行う必要があります。介護DX導入の場合、介護現場のどのような課題を解決させるために導入するのかを明らかにしなければ、闇雲で無目的な投資となってしまいます。必ず初期の現状分析を行い、まずは課題を明らかにしなければなりません。

介護現場の現状分析では、業務量調査として現場業務を項目、分類、所要時間などの視点で細かく洗い出し、業務負担の大きい時間、余裕のある時間、直接業務(利用者と直接かかわる業務)と間接業務(利用者と直接かかわらない業務)の割合を見ながら、配置人数でできる範囲内で業務の遂行ができるように効率化すべき部分を明らかにします。

現場で効率化すべき部分が明らかになることで、介護DXにより改善すべき内容と目標が立てられるようになるのです。

③予算計画

介護DXでは機器の購入やシステム導入費用、利用料等が発生します。それらを回収するにしても、明確な売り上げ貢献がない中では計算は非常に難しくなります。

まず少なくとも予算計画を立て、無駄な費用を使わない計算が必要になりますが、加えて専門家のアドバイスを聞きながら、最適なシステムの選定、補助金の活用などを積極的に入れていくことも必要となります。

また介護DXはシステムそのものの選択よりも、部分最適でなく全体最適で併走してくれるアドバイザーを選択することの方が重要となります。

むしろ、介護DXはこれと決めつけて使うのではなく、状況に合わせて使い分けるくらいでなければ成果に繋がらないことも多くあります。介護現場の経験も豊富なアドバイザーを見つけるところから、介護DXの導入は始まっています。

介護サービスの質の向上と働きやすい職場環境の実現へ

介護DX導入の最終目的とは、利用者・職員の方が「楽」ではなく、「楽しく」なることにあります。

介護DXが直接、利用者にとっての必要な介護を肩代わりをしてくれるわけではありません。

あくまでも介護業務の主体者として介護職員があり、その介護職員が気持ちよく前向きに働ける環境づくりをサポートするために、介護DXは存在するのです。

とはいえ、その役割こそが介護現場にとって重要です。介護の仕事はストレスや疲労との戦いであり、介護サービスの質とは職員のスキル以上にメンタル面での余裕やストレスのない環境が大きく関わってきていると言っても過言ではありません。

そこをサポートする役割にある介護DXの果たす役割とは、介護現場において非常に大きいものであることは間違いないのです。

介護現場職員の少数精鋭化時代、介護DXの導入によりサービスの質の向上と働きやすい職場環境を実現させ、地域に必要とされる施設運営を永続的に続けていく体制づくりを進めていきましょう。

収益改善・サービスの質向上・働きやすい環境が実現できる

本稿の執筆者

沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社日本経営 介護福祉コンサルタント

株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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