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定年延長はしない方がいい?どうする高齢者雇用安定法の対応とモチベーション

  • 業種 企業経営
  • 種別 レポート

定年延長はしない方がいい?
どうする高齢者雇用安定法の対応とモチベーション  解説

株式会社日本経営/チームリーダー 植田 なつき

関連セミナー:【Web受講 21/10/13】70歳までの雇用確保措置義務化における人事制度戦略セミナー

人生100年時代、求められるシニア世代の雇用維持

65歳までの雇用確保は既に全企業に義務化されていますが、高齢者雇用安定法の改正により、令和3年4月1日から、以下5つの就業機会確保が努力義務化されました。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 70歳までの継続雇用制度の導入
  3. 定年の廃止
  4. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に a.事業主が自ら実施する
    社会貢献事業 b.事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入

「人材確保」がこれからの企業経営において、重要課題となる組織は多いでしょう。しかし、だからといって総額人件費を上げられる訳ではない。もっというなら、 既に義務化されている65歳までの雇用確保措置への対応ですら簡単ではなく、シニア世代の従業員の体力・モチベーション等のマネジメントについても課題は山積しています。

昨今では、「人生100年時代」という名のもと、シニア世代の雇用維持が企業には求められている一方で、新型コロナウイルスの影響が長期化し、人員削減・人材の流動性促進のため「早期退職」を募る企業のニュースも多く目にするようになってきました。

シニア世代のモチベーション課題

最近「50代以上の従業員のモチベーションが低く、若手・中堅世代へも悪影響を与えている。どうにかならないか」という相談を頂くことが増えてきました。当然、モチベーションの問題というのは、年齢に関わらず起きることであり、一概に論じることはできません。

しかし、明確な特徴としては、やはり体力低下に伴う生産性低下は多くの場合において避けられないでしょう。また、同じ「低いモチベーション」といっても、若手社員とベテラン社員では、チーム・組織全体に与える影響は全く異なる上、当然、若手社員と同じように指導しても受け入れてもらえないことも多く、上司の高いマネジメント力が求められる点でもあります。

では、なぜこの「モチベーションの低下」ということが起きるのかを考えてみると、一つには「人は終わりに向けてペースダウンするもの」という考えができます。つまり、「定年=職業人生の終わり」と捉えると、頑張る意欲が持ちにくいのは想像しやすいかと思います。

定年延長はしない方がいいのか!?

では、定年延長してゴールを伸ばしてはどうか?という考えもある訳ですが、結論から申し上げますと、ゴールが伸びてもモチベーションは上がりません。そのため、定年延長は人材確保が経営の最重要課題となっている企業にとっては有効な手段だと思います。

しかし、それは「全ての従業員の雇用が延長される」ということであり、企業側が対象者を選ぶことはできません。そういった点で、定年延長は運用の柔軟性に欠く部分があることに注意が必要です。

また、定年を延長した結果、退職金の支給年齢が引き上がる(60歳でもらえるはずだった退職金が70歳になる等)場合は、従業員がライフプランの変更を余儀なくされる場合もあり、不利益改定と捉えられる可能性もあります。処遇面に関しては慎重な議論が必要でしょう。

シニア活躍のための人事制度設計のポイント

では、どのようにして「終わりに向けたペースダウン」から「終わりに向けたラストスパート」に変えていくのか。そこには人事制度の仕掛けが必要です。ここでは、多くの企業が選択している60歳定年制を維持した上での、再雇用制度整備を前提としてポイントをご紹介します。

「終わりに向けてラストスパート」ができるのは、それによって最終成績が変わる可能性があるなど「努力」が「未来」にどうつながるかイメージできる状態がつくられるからです。

再雇用時の処遇ルートを複数設計し、定年前直近2カ年の人事評価結果がコース選択の条件の一部になっていたり、退職金支給額へ影響を与えるといった施策は、努力を未来へつなげる一つの手段でしょう。

この時の注意としては、定年後の働き方(処遇ルート)を59歳、定年間際になってからから考えるのでは間に合わないということです。50代半ばの時点で、予想される退職金、年金支給と生活費の概要等の資料をもとにライフプランを考える必要性を従業員に伝えておきましょう。

また、再雇用後「自分のペースで仕事をしており周囲の優先順位にあわせてくれない」といった課題もみられます。これは自己の影響力に対する無自覚が大きな要因となっていることが多く、企業によっては「役割リセット研修」と称して、これまでと何が変わり、何が変わらないのか、組織からの期待、周囲からの目を伝える場を設けるケースも増えてきました。

「シニア層のモチベーションは仕方ない」で片づけてしまうと、それは若手社員のモチベーション・組織エンゲージメントの低下につながる可能性もあります。まずは組織として求めている「役割」「期待」を明確に伝える体制を整えましょう。

処遇検討時は同一労働同一賃金対応に注意して

最後に処遇の検討ですが、ここでは同一労働同一賃金の対応(労契法20条違反)に注意する必要があります。

平成30年の最高裁判決長澤運輸事件では、定年再雇用者の基本給等、住宅手当、家族手当、役付手当、賞与に関する労働条件は正社員時と比較して一定の差を設けることは認められています。

しかし、その後の令和2年名古屋地裁名古屋自動車学校(再雇用)事件では、その差が大きすぎるとして、定年前との労働条件の差は不合理と認められました。

実際、長澤運輸事件では嘱託社員の賞与を含めた年収は、定年前の79%程度であったのに対して、名古屋自動車学校事件では、嘱託社員時の基本給は48.8%以下であり、定年退職時の基本給60%を下回る限度で労契法20条にいう「不合理性」に当たるとの見解が示されました。

このように処遇に関しては、企業によっては、定年退職時一律5割カット等にしているところもみられますが、安易な設定は不要な労使トラブルを引き起こしかねません。

不要なトラブルを避けるためにも、職務内容及びその変更の範囲を整理した上で、慎重な議論が必要となります。

このレポートの解説者

植田なつき(うえだ なつき)
株式会社 日本経営 組織人事コンサルティング

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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