事業計画はなぜ必要か、計画を立てることの意味をどう考えるか/病院経営の指標・読み方Vol.14
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 ホワイトペーパー
事業計画はなぜ必要なのでしょうか。未来のことなど分からないのに、想像で計画を立てて、どのような意味があるのでしょうか。
未来の方向性とギャップを明確にする
事業計画というと、収益計画や利益計画を思い浮かべがちですが、それは結果論であって、その前に自分たちのポジションを明確にする必要があります。そのために特に必要となる分析事項としては、次の3点が挙げられます。
1点目はマーケット分析です。
地域の中でどのような医療・介護が必要とされているかを把握し、法人としてどのようなポジション・役割を目指すのかを、長期的な視点で検討します。地域住民の年齢構成や疾患構成等の変化を見越して、将来の方向性を検討することがポイントです。
2点目は財務分析です。
貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書を用いて過去3期から5期の傾向を分析します。毎年利益が積み上がっているか、積み上がっていないとしたら投資効果が本当に出ていたのかを振り返ります。それを踏まえて、この先何を選択してどこに集中するのか、利益の使い方を検討することがポイントです。
3点目は病院機能分析です。
マーケット分析や財務分析を踏まえて、現状の医療・介護機能の課題を把握します。診療科目、病棟機能、診療報酬の算定状況等、現状の把握と目指す姿に対してギャップがどこにあるのかを明確にすることがポイントです。
このように「事業計画を立てる」プロセスで、将来の方向性と現状とのギャップを明確にできることが、事業計画の大きな「意味」です。
進捗や環境変化を踏まえて、経営を柔軟に改善していく
事業計画に落とし込んだ後は、どうでしょうか。
計画は立てただけでは実現できません。「継続して事業計画の実行状況を確認する仕組み」や「課題点を改善できる仕組み」が必要になります。
まず重要になるのが、毎月実施している「経営会議」です。経営指標を管理するだけでなく、進捗が思わしくない場合には、管理職が改善に向けてサポートしていくような柔軟な仕組みでなければなりません。これは仕組みの問題です。
診療報酬改定等の制度改正についても、制度が変われば従来のやり方は通用しなくなります。事業計画そのものから、柔軟に見直す必要があります。
このように「事業計画を立てる」ことで、計画の進捗状況や環境変化を踏まえて、経営を柔軟に改善していくことが求められるようになります。計画がなければギャップが明確にならず、なにをどう改善するかという発想にならないかもしれません。
事業計画の大きな「意味」は、思い通りにいかないからこそ、いまのまま「ただ頑張る」のではなく、一歩踏み出して柔軟に変わっていこうとする機運を、皆が持つことにあるのではないでしょうか。
変わることができる組織であるためにも、「事業計画」は欠かせないのだと考えます。
執筆者/日本経営ウィル税理士法人 辻秀也
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日本経営ウィル税理士法人/NKGRコンサルティング株式会社/株式会社日本経営
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