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診療報酬改定は医療機関の経営戦略マップ/病院経営の指標・読み方Vol.08

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

企業であれば、今後自社はどのような商品開発をするべきか、どこに潜在的な需要があるか、そのための設備投資はいくらするべきかを日々考える必要があります。しかし、医療機関は…

蓋を開けてみるとかなり影響が大きい

先日、1月26日に2022年診療報酬改定の所謂『短冊』が公開され、2月9日(水)には答申が発表される予定です(この原稿は2月7日時点で書いていますので皆さんに読んで頂く日には既に点数が発表されていると思います)。

今回の改定は昨年12月に発表された改定率が本体0.43%プラスでしたので、率だけみるとあまり影響が無いようにも思いましたが、蓋を開けてみるとかなり影響が大きい項目の改定が多くあったことに大変驚いています。

この2年間のコロナ禍での医療機関の真摯な対応に対しては、これまで補助金等で十分に労っているかのように、しっかりと絞めるところを絞めているという印象です。出来るだけ次世代に課題を残さないようにという思いなのかもしれません。

大きな医療機関経営戦略は国が考えてくれる

さて、話は変わりますが診療報酬改定は小泉政権時代では、本体部分も薬価部分も共にマイナス改定でした。全体の改定率は相当大きな数字でした(2006年の改定率は最も大きくマイナス3.16%)。

その後、本体部分はプラス改定、薬価部分はマイナス改定として、全体ではマイナス改定になることが2016年以降8年間続いています(つまり4回の改定)。

ここで大切なことは「本体価格のプラス改定によって恩恵を受けるのは、政策誘導通りの医療提供体制を整えた医療機関である」ということです。

政策誘導とは、時代を反映して、必要な医療とその提供体制を整える方向に舵を切るため、「こっちの方向へ進んでください」という答えを国が教えてくれているという見方が必要だと思います。

企業であれば、今後自社はどのような商品開発をするべきか、どこに潜在的な需要があるか、そのための設備投資はいくらするべきかを日々考える必要があります。

しかし医療業界は医療財源の配分を国が握っている代わりに、大きな医療機関経営戦略も国が考えてくれるという極めて特殊な世界であると思うのです。

医療機関の収益が伸びないのは改定の影響

医療機関経営戦略の方向性とは、具体的には診療報酬上で厚く配点されている項目や新設されている項目のことです。また変更された施設基準の中身です。

これらの内容は医療の機能別にすべての医療機関の収益(=売上)に影響します。当たり前の事ですが、診療報酬が手厚く配点されている報酬項目が算定できるように、施設基準や算定要件を合わせていくことが間違いのない増収手法です。米国のようにドクターフィー制度がない日本では、医師の専門性やキャリアの差では収益に差は出せないからです。

コメディカルスタッフの多さによって手厚い医療や看護を提供していても、これらのコストは一定の範囲で診療報酬に反映されていますが、それ以上の配置はすべて医療機関の持ち出しとなります。

診療報酬改定のたびに「医療機関の収益が伸びないのは改定の影響だ」という声をよく聞きますが、それは自院の医療が国や地域が求める役割を担っていないことの表れです。ここは重要な点だと思います。

診療報酬改定があろうが無かろうが

改定の意向に沿った医療体制を整えていくために、現状と改定内容のギャップを把握し、獲得できる収益の試算をしてください。場合によっては抜本的な収益施策を検討する必要も出てくると思います。それは一般企業も同様です。

またそれに合わせたコストコントロールを実施する期間を決めて実行してください。増収になる場合は、相応の追加コストがかかると思います。逆に減収になる場合は、これまで当たり前のように費消していたコストの中身を見直し、削減するものと、そのコストを使って新しい収益を生み出す活用の仕方を考えてください。

そして最後に、本当に重要な点は、診療報酬改定があろうが無かろうが、そもそも不必要な過大投資や、不必要で過剰な人員配置をしていないか、医事課の診療報酬に対する知識は安心できるレベルか、遊んでいるベッドや高額医療機器は無いか等のチェックが日々必要であることは言うまでもありません。

病院経営の健全化のために、いま必要な意思決定を議論します。

本稿の執筆者

藤原ますみ(ふじわら ますみ)
NKGRコンサルティング株式会社 取締役

クリニック・病院・社会福祉法人の財務会計に従事し、有料老人ホームの立ち上げにも参画する。現在は、病院の財務・管理会計の導入を通じた経営改善も担う財務のプロフェッショナル。公的機関主催の研修でも講師を多数務め、数字に苦手な受講者でも「今までで一番分かりやすかった」と、絶大な支持を得ている。

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本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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