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グループガバナンスを高める医師マネジメント

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

弊社ではこれまで1,500件以上の病院経営コンサルティングに携わり(2023年3月時点)、うち医師人事制度構築については、150件以上のご支援(2023年4月時点)をして参りました。

こうした中で体験してきた、病院経営のトレンドをまとめてみたいと思います。

今回は、再編・統合で生まれている「グループ病院におけるガバナンス」の視点で解説します。

人口減少社会の中ではリソース確保・リソース効率が重要

病院の事業構造を考えると売上(医業収益)向上のポイントは以下のようになります。

病院経営における売上向上のポイント

日本全体を見渡してみると既に高齢者人口がピークアウトしている地域もありますが、大都市部や各県の県庁所在地などでは、まだ高齢者人口は増加しています。

一方、15歳~64歳の生産年齢人口は、一部の大都市部を除くと大半の地域で、この先(今後)急減すると予想されています。

医療需要は増えるのに、リソース不足により対応できないという需給ギャップの面での課題が拡大していきます。そのため、各種リソースを調達することが病院経営を持続させる上で重要になっていきます。

三位一体の取り組みと2040年問題が再編・統合を促進

ご承知のように、病院業界では地域医療構想・医師偏在対策・医師働き方改革の三位一体の取り組みが進んでいます。これに加えて15歳~64歳の生産年齢人口が急減する2040年問題が加わってきています。

  • 医師偏在対策では、特に新専門医制度により専門医取得前の若い医師の派遣先が専門医プログラムの基幹・連携施設へ選別・集約されています。
  • 医師働き方改革では、宿日直許可を得ていない病院へ夜間の医師の宿直アルバイトを派遣することが労務管理上難しくなります。

この結果、医師の供給体制が変化し、採用が難しくなっています。

また、2040年問題により看護師の供給が変化し、採用が難しくなっています。

つまり、三位一体の取り組みは2040年問題と一体となり、下記メカニズムで病院の再編・統合を促進することにつながっています。

病院経営を永続するには、リソースを過不足なく調達することが重要になります。そこで、こうしたリソース確保のためにM&Aや地域医療連携推進法人の活用の検討が進んでいます。

M&Aや地域医療連携推進法人は、単にリソースを確保することが目的ではありません。

購入量を増やすことで仕入れ先との価格交渉力を強化したり、事務などの間接貢献部門のコストを共有(シェアリング)したりして、規模・範囲・密度の経済性を活かすことができます。

このようにして「リソース効率を上げる」ことで、コスト構造を変革することも大きな目的です。まさに「リソース確保」と「リソース効率を上げる」ことが目的となります。

リソース効率を上げるための「標準化」

リソース効率を上げるには、一つ重要なポイントがあります。それは「標準化する」ことです。

前述したように購入量を増やして仕入先との価格交渉力を高めるには、同一薬効の薬剤を統一したり、購入サイクルを同期化したり、複数施設の事務を一ヵ所に集約して集中処理するために業務手順を共通化するなど、標準化が必要になります。

余談ですが、リソース効率という課題に関して、コスト構造を変革する病院DXのコラムも執筆していますので、ぜひご参照ください。

【コラム】病院DXは、病院ダイエット?

標準化を阻害する「ワガママ行動」

標準化をすることで、規模・範囲・密度の経済性が効き、リソース効率が高まり、コスト構造改革が可能になります。

しかし、そこで障害となるのが、「標準化」を徹底しない「我流へのこだわり」です。

同一薬効にも関わらず、医師の好みでバラバラのメーカーの薬剤を購入したり、グループ内各病院の電子カルテシステムを統一できないといったようなことが生じると、標準化ができず、リソース効率が上がりません。その結果、規模・範囲・密度の経済性が効かず、コスト構造が悪化します。

グループ病院に限らず、よく耳にする内容として「医師の我流へのこだわり」があります。

こだわりは医師だけで起きているだけではありませんが、医療現場において決定権・影響力の大きな医師が我流を貫くと、周りへの影響は甚大となります。

オレ流と笑っていられなくなります。もはや「ワガママ行動」でしかありません。

医師の納得、経営の目線で言えば、医師のガバナンスの向上が、グループガバナンスの上でも重要になってくるのです。

グループ病院はリソース効率が悪化しやすい?

三位一体の取り組みや2040年問題を受けて進んでいる、病院の再編・統合(グループ化)ですが、グループ化することでリソースは確保しやすくなりますが、そこには課題があります。

標準化が進んでいなければ、リソース効率は悪くなるのです。病院・施設数が多い分、かえって管理コストが増えてコスト構造が悪化します。

「500床超の高度急性期・急性期病院」と「200床規模のケアミックス病院」、「150床規模の回復期病院」と「サテライトクリニック」など、医療機能・病床規模がばらつくため、管理の煩雑さも増します。

例えば、高度急性期・急性期病院ではDPC制度のため、経営分析システムでは「DPC分析システム」を主に活用します。しかし、そうでない病院では、「従来の出来高算定を軸にした経営分析システム」のほうが向いていることがあります。

このように複数の医療機能・規模を保有する病院は、DPCと出来高の双方に強みがある製品を選択しなければ、「標準化」ができません。

各病院でバラバラの経営分析システムを導入すると、グループ全体のリソース効率は悪化します。

効率を改善するためには、電子カルテシステムだけでなく、総務・経理・人事システムや病院経営分析システムもグループで統一化することが重要です。

まさに、前述の病院DXコラムでご紹介したように、グループでのダイエットが必要になります。

医師人事制度というガバナンスシステム

デジタル化によりインフラを整備しつつ、標準化・ガバナンスの仕組みづくりが必要になります。

弊社では、これまでに150を超える病院の医師人事制度構築を支援してきましたが、この中には、2病院以上を保有するグループ病院のお客様が多くおられます。

まさにグループ病院のガバナンスを活かすために、「医師人事制度というグループガバナンスシステム」を活用されているのです。

医師人事制度における評価制度としては、「多職種による多面評価(360度評価)」と「経営分析システムに基づく業績直結型の目標管理」を取り入れることを、私どもはお勧めしています。

両者をBSC(バランスト・スコアカード)の考え方で体系化し、ガバナンスを効かせます。

特に「多職種による多面評価」は、ワガママ行動を抑制する上で有効だと体感しています。

弊社の医師人事制度の詳細は、下記サイト・コラムをご覧ください。
医師マネジメントの実務専門サイト
【コラム】多職種協働を実現する医師マネジメント
【コラム】BSCを活かした医師マネジメント

グループ病院を統合して把握する「病院経営分析システム」

ところで、医師マネジメントシステムにおける「業績直結型の目標管理」では、前述のとおり「経営分析システム」がポイントになります。

なぜなら、グループガバナンスを効かせるためには、グループ内の異なる医療機能・規模の病院を統合して把握できる必要があるからです。

私どもは「病院経営分析システムLibra」の活用をお勧めしています。

「Libra」は20病院以上を保有する複数のグループ病院でもお使いいただいているため、「グループ病院分析」に特徴があります。

グループ内の異なる医療機能・規模の病院を統合して把握することができ、グループ病院の特徴を踏まえた運用が可能になります。

病院分析システムLibra

「多職種による多面評価(360度評価)」は、定性評価です。「経営分析システムに基づく業績直結型の目標管理」は定量評価です。

双方の評価制度を軸にして医師人事制度を導入することで、グループガバナンスの向上を図ります。

業績直結型の目標管理を高次化させる原価計算システム

ところで、管理会計としての原価管理システムも、大変な注目を集めています。セミナーも毎回満員御礼で、早々に受付終了となっています。

原価管理システムを導入している病院では、業績直結型の目標管理に「診療科別・病棟別の原価計算における損益分岐点(BEP)必要新入院患者数」を活用して、目標設定の下限値を設定するなどしています。

「最低黒字化しましょう」は、多くの医師に納得してもらえる共通言語になります。これらをBSCの概念で整理すると、日々の具体的な取り組みとして、より理解して頂きやすいです。

同じく日本経営グループのメンバーファームから、「病院の財務・管理会計システムKEYbird」がリリースされています。

弊社が医師人事制度を導入する場合は、「病院分析Libra」と、この「管理会計KEYbird」を組み合わせて、業績直結型の目標管理にお使いいただくことが多いです。

病院の財務・管理会計システム「KEYbird」

グループ病院のコンサルティングの知見をパッケージに

グループ病院では、それぞれバラバラの管理・バラバラの経営になりがちです。システムやガバナンスの改善をしないまま、本質的な改善に進むことは困難です。

単に医師人事制度を導入するだけでなく、病院経営分析システムや原価管理システムをグループで統一し、目標を標準化することで、グループガバナンスが大きく進むのです。

DXの視点も踏まえて、経営に必要なそれぞれの仕組みやツールを有機的に結合することが、グループ病院の経営の要となると痛切に感じています。

効率的な経営とは、言い換えれば、お一人お一人の努力と貢献がより報われる経営です。

グループ病院の経営には、大きな伸びしろがあるのだと思います。そのコンサルティングの知見をパッケージにした概念をまとめましたので、ぜひご参照ください。

本稿の執筆者

太田昇蔵(おおた しょうぞう)
株式会社日本経営 部長

総務省:経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー(「DXの取組」領域)。民間急性期病院の医事課を経て弊社に入社。医療情報システム導入支援を皮切りに業務を行い、東京支社勤務時には医療関連企業のマーケティング支援を経験。現在は、医師人事評価制度構築支援やBSCを活用した経営計画策定研修講師、役職者研修講師を行っている。2005年に西南学院大学大学院で修士(経営学)を取得後、2017年にグロービス経営大学院でMBA(経営学修士)を取得。

株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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