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相次ぐスタッフの退職に施設長が出した決断/介護福祉の人財成長のリアル

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

若手職員が生き生きと活躍し、才能あるものは上を目指せる施設を作るために、人事制度のテコ入れに取り組んできた施設長。

しかし抜擢した若手管理者は思うような成果を上げられずにいた。

年上部下に指導する難しさ、職員のモチベーションを上げられない、退職者が増えている…

将来有望な若手を主任に抜擢

私の夢は、若い才能のある職員が存分に力を発揮できる現場をつくることだ。

私自身、介護現場で腕を磨き、キャリアも自信もそれなりに積み上げたが、若いうちは機会に恵まれなかった。ようやく50代の今になって機会に恵まれ、特別養護老人ホーム(特養)の施設長という役職を得られたが、もっと若いうちからチャンスがあればという思いは未だにくすぶっている。

ここからはチャンスを生み出す側に回りたい。
年次などではなく実力とやる気で望む役割を得られる施設を作りたい。

そのような思いもあり、施設長に着任した5年前にまず取り組んだことが、人事制度の改革だった。

そして、若手で将来有望な20代の2名を介護主任に抜擢することができた。どちらも、性格は明るく、前向きで、運営のこともよく理解して嫌なことでも率先して引き受けてくれるタイプの職員だ。

介護職員としてのキャリアは少ないが、リーダーに求められるのは意欲と勢いだと確信している。二人は、まさにそれを兼ね揃えた存在だった。まずは最低限の職務能力を身に付けててもらい、満を持しての抜擢だったと考えている。

いよいよ、私の目指す、希望にあふれた施設運営が本格化したのだ。

徐々に抱く違和感

しかし、結果は思っていたものとは全く異なっていた。まず、違和感は退職者が出始めたことからだった。

今の全国的な採用難の時代にあって、本音を言えば1名だって退職者が出ることは厳しい。にもかかわらず、半年に出た退職者は3名。しかももう1名退職希望があり、なんとか厚遇で残ってもらえるように交渉中という有様だ。

あわてて現場を確認したところ、どちらも目についたのは現場職員の士気の落ち具合だった。とにかく、現場に活気がない。職員は忙しく動いているが、表情に余裕がなく、掛け合う言葉も刺々しい。利用者対応もそっけなく、日々のルーティンをこなすのみという様子だった。

何よりも、主任本人が現場の陣頭指揮に立っていないのだ。代わりに現場で声を張っているのはベテラン職員で、特に若手に厳しく指示を出し、今の現場の雰囲気を作り出している元となっているようだった。

主任を探すと、スタッフルームの奥にこもり、パソコンと向き合っていた。

少しでも予定通りにならなかったら責められる

主任から話を聞くと、職員とのコミュニケーションで躓いたとの話だった。

目指すべきフロア運営について職員に伝え、さあスタートだという段階で、抵抗の声が上がったのはベテラン職員からだった。若手の主任よりも、キャリアも年齢も2倍違うような職員である。

ベテラン職員は、リスクの高いサービス、職員の負担になるような取り組みは、利用者のためにならないと、主任の発案した取り組みをことごとく却下していったそうだ。

フロア運営を伸ばしていくために必要と打ち立てた提案も、ベテラン職員の鶴の一声に周囲の職員が追随してしまう。

ベテラン職員を説き伏せようとしても、キャリアが浅いというだけで受けれてもらえず、その雰囲気は徐々に周囲の職員にも伝播し、主任の指導を聞いてもらえるような雰囲気がなくなってしまったとのことだ。

しかし、ベテラン職員主導の現場はとにかく窮屈で、とにかくすべき仕事を一刻も早く片付け、休憩時間を取ったり、次の日が楽になるような準備をすることに執心しているようだった。

少しでも予定通りに終えられない仕事は責められ、失敗は許されず、決められた仕事を正確にこなすだけのぎすぎすした職場。そこに嫌気をさした職員が、ひとり、また一人と不満を表明しだし、ついには退職者が出てくるような状況となったのだった。

職員の意欲の低い職場では、当たり前の仕事をこなすことも難しい。その結果、施設は徐々に稼働率を落とし、利用者の満足度も下がり、目指す姿とはほど遠い、地域でも最低の評判をもつような特養となってしまっていたのだった。

退職をチラつかせるベテラン

私は、2フロアのテコ入れに介入することにした。

まずは、主任として弱気にならず、言いたいことははっきり言うように指導した。その際、もしも反論が出るようであれば、施設長の名前を出してもいいと伝えた。困ったことがあったら、施設長からもいいとお墨付きをいただいている、と伝えることを許可したのだ。

また、主任の指導のネックとなっているベテラン職員は、私自ら面談を行い、厳しく指導を行った。

しかし、結果は変わらないどころか、半年経過して、状況は悪化したようだった。

現場職員は、ますます主任の言葉に耳を傾けなくなってしまった。

ベテラン職員に至っては、私との面談で退職をちらつかせ、利用者と職員のためにならない指導を行うような会社だと、堂々と非難をするまでに至っている。ますます勢いづき、影のリーダーとしてフロアの仕事を思うように動かしているようだった。当然、そのほかにもいろいろと取り組んだが、効果の感じられたものはない。

施設運営は袋小路となり、今の状況を受け入れるか、管理者を変えるか、選択を迫られるような状況となったかに思えた。

その時だった。セミナー案内が目に飛び込んできた。

「職員指導に悩む介護事業所のリーダーに贈る 向いてない、と思っているリーダーのための面談メソッド習得講座」

私は、二人の主任の予定もきかずに、申し込みを済ませていた。

職員指導に悩む介護事業所のリーダーに贈る、
向いてない、と思っているリーダーのための
面談メソッド習得講座

講座に参加し、半年が経過した。

たった3日の面談メソッドを習得することで、主任はがらりと変わり、職員の意欲的な仕事を支える真のリーダーとなった。

そう。講座を通じて管理者は、若く勢いでチームを引っ張ろうとするリーダーではなく、職員の意欲を引き出し、伸ばし、コントロールをするリーダーとなったのだ。しかも、それを実現させるための行ったこととは、面談をすること、ただそれだけだった。

ただそれだけのことではあるが、なんとあの悩ましいベテラン職員ですら、いまや頼もしい右腕となり、主任を支える役割を引き受けてもらえるまでに変わっているのだ。

本講座の森田講師が言っていた。面談だけで、組織は変えられる。

まさに、そのことを体現したような現場が目の前にあった。

第1講 部下との心理的距離を縮める定期面談の方法

第2講 尊厳を大切にしたコミュニケーション技法

第3講 垣根が低くなるリーダーとしての振舞い方

ステップを通じ、とにかく具体的な面談の実施方法を学んだという。

そして、その方法に従い、正しい頻度、タイミングで、とにかく面談に注力していった。

面談では、得意な技術は求められなかった。しかし、面談を繰り返すごとに、職員は徐々に、自ら変化を遂げ、意欲を高めて仕事に取り組む姿勢を獲得していった。

つまり、職員は管理者に変えられたのではなく、自らが気づき、変わろうとして、変化を見せるようになったのである。

自ら考え、動こうとする組織

面談を重点的に行うようになってからは、むしろ主任は自身の理想などを語ることはなくなったが、意図をくみ取った職員が自ら動き、自然と必要な方向に変わっていったのだった。

私自身、組織を動かすということ、人を動かすということの本質を理解していなかった。

しかし、本講座を通じ、そのことが理解できてからは、風に向かって帆を張り、ほんの少し舵を切るだけで、目的地に向けて進めるようになった気がしている。

私は改めて、生き生きと躍動する若い二人の主任を目の前にし、自分の夢が動き出したのだと実感するのだった。

面談メソッドの習得で、チームは驚くほど変化する

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