いま立ち止まって考える、病院にとっての新型コロナウイルス対策や地域医療構想/第58回 日本医療・病院管理学会学術総会
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業種
病院・診療所・歯科
- 種別 レポート
データサイエンスで切り拓く医療・病院管理学の未来
インタビュー/第58回日本医療病院管理学会学術総会 学術総会長 鮎澤 純子 氏
- 2020年10月2日(金)から、「第58回 日本医療・病院管理学会学術総会」が開催される。テーマは、「データサイエンスで切り拓く医療・病院管理学の未来」。
- 新型コロナ感染拡大を受けて急遽Web開催に変更、会期も3 日間に延長された。「データサイエンス」をキーワードに、プログラムも大変に充実したものになっている。
- 学術総会長の鮎澤 純子先生に、見どころ、聞きどころについてお尋ねした。
新型コロナウイルス感染症対策に関連する最新の知見
― いよいよ学会の本番まで1ヶ月を切りました。まずは、学術総会のプログラムの特長をお聞かせください。
鮎澤氏 学術総会のテーマは「データサイエンスで切り拓く医療・病院管理学の未来」なのですが、この年の“病院管理”を冠した学会として、また私自身の歩んできた安全管理の視点からも、現時点で分かっている新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)対策に関連する最新の知見を、参加者にお届けしたいと考えています。
― プログラムを拝見すると、初日の「COVID-19をめぐって」のシンポジウムは、鮎澤先生ご自身が座長でいらっしゃいます。どんな内容をお考えでしょうか。
鮎澤氏 まず何よりも意識したのは、「では、病院、臨床の現場では、何を、どこまで、どうやって対策すればいいのか」について、参加者の皆さんとともに考える機会にしたいということ、そして学会ですので、これを機に新しい知識を正しく学ぶ機会にしたいということです。
evidence based policyについて、また、臨床を通して見えてきた様々な課題について考えたいと思いますし、政策の意思決定過程において活用された「感染症数理モデル」についても学んでおきたいと思います。
最終日には、「COVID-19と医療安全」「Withコロナの時代の病院管理・病院経営」といったセッションもありますので是非ご注目ください。
― それにしてもすごいシンポジストの方々をお招きされていますね。
鮎澤氏 臨床に、研究に、多忙を極める方々に登壇をお願いしています。クラスター対策班での分析、市中感染の現状、そしてCOVID-19との共生の視点まで、幅広い視点での議論をお聞きいただけるものと確信しています。
「天平人、パンデミックに立ち向かう」という講演では、人類がどのようにこれまでのパンデミックを乗り越えてきたかについて思いをはせつつ、令和の時代、我々令和人がこれからどのように立ち向かっていくかを考えたいと思います。
地域医療構想と、データで議論するという新たな手法
― COVID-19からいったん離れて、その他のセッションについてもお聞かせいただけますか。
鮎澤氏 「データサイエンスで切り拓く医療・病院管理学の未来」というテーマは、COVID-19前から設定していました。まだまだ課題はあるものの、「データが活用できる環境」は急速に整いつつあり、研究者、そして医療・病院管理学の領域にとっての大きなチャンスが生まれて来ていると感じています。
その中でも、病院経営に携わる皆様にとって、もっとも大きな関心事のひとつは、地域医療構想ではないでしょうか。
― 昨年9月に「再検証要請対象病院」として424病院が公表され、大混乱になりました。その後、厚労省の方が再検証すると、対象病院が減ったり増えたりしました。
鮎澤氏 対象とされた病院、対象とならなかった病院で受け止め方が異なるのでしょうが、大きな動きとして理解するならば、「これまでよりはるかに多くのデータから判断し、対象病院として指定し、指定された病院にはそれに対して再検証の機会が与えられているという枠組み」でしょうか。
これまで、許認可や通知とその解釈といった世界で、医療行政が推進されてきましたが、データで議論するという新たな手法が出てきたということに注目したいと思いました。
地域医療構想に関するワーキンググループで座長を務められている尾形裕也先生(九州大学名誉教授)を座長にお招きし、行政、自治体病院、民間病院、研究者といったそれぞれのお立場から議論を深めていただく予定です。
「チームのパフォーマンス」を心理学的アプローチで解析
― 鮎澤先生のお話しを伺っていると、どのセッションも見どころ、聞きどころ満載だと思うのですが、他に病院経営に関わるセッションがあればご紹介ください。
鮎澤氏 NDBをはじめとするデータベースに関しては、本当に多くの方が日本の医療の課題を解決するために日々研究に取り組んでいます。現場の皆さんにも、こういう方向で研究が進み、答えが出てくるかもしれないという方向性、方向感を感じていただければと思います。
その上で、経営に近いセッションを挙げるとすれば、「データと医療経営」というそのものずばりのセッションとともに、近年注目されている健康経営の分野についても取り上げました。
職員に着目したテーマとしては、日本経営さんの橋本取締役から、「チームのパフォーマンス」を心理学的アプローチで解析した結果についてご発表いただきます。「コロナ禍で際立った“できるリーダー”」など非常に興味を惹かれます。
国際心理学会で発表のご予定だったと伺いました。中止になってしまったことは大変残念でしたが、私たちは今回の学術総会で、それも日本語でお聞きできることを楽しみにしております。
― 触れていただいてありがとうございます。では最後にまとめてください。
鮎澤氏 福岡はもとより、日本、そして世界の医療に多大なる貢献をしてこられた、横倉義武先生の特別講演をはじめとして、多くの講演者、シンポジウムにご登壇いただきます。
COVID-19の感染拡大により、急遽、オンラインに変更して3日間の開催といたしました。福岡にお越しいただけないことは残念ですが、会場・定員の上限がなくなりましたので、今回は日本医療・病院管理学会の学会員以外の皆様にも広くお聞きいただきたく、一律5,000円で3日間のプログラムのすべてにご参加いただくことができます。ご案内は致しますが、学会加入の義務も勧誘もありません(笑)。
ぜひ一度、プログラムをご覧いただき、ご参加をご検討ください。心よりお待ちしております。