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人が育つ人事考課制度設計7つのポイント/中小病院の人事制度設計Vol.03

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

職員の行動の質を高め、人が育つための人事考課制度

  • 戦略を実行し組織を目指す方向に導くためには、職員の行動の質向上と育成がカギとなります。その方法として「行動評価を主に展開する人事考課制度の活用」が効果的だと考えられます。
  • 本稿では、人事制度の3本柱である等級制度・評価制度・処遇制度のうち、評価制度設計(人事考課制度設計)の7つのポイントについて解説します。

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ポイント1  技術・目標達成度でなく、行動評価

医療機関で採用される評価方法には大きく分けて、行動評価技術評価目標達成評価の3種類があります。私どもは病院の職員評価には、行動評価を用いることをオススメしています。その理由をご説明いたします。

技術評価のデメリット

医療スタッフの場合、一般的に経験年数を経ると技術レベルは上がります。技術評価は、技術レベルや職務内容を評価するものなので、新人は常に評価が低く、ベテランは常に評価が高いという状態になってしまいます。

評価は賞与の対象となる場合もあるので、技術レベルと評価内容を明確にして、適切に評価しないと、モチベーションを損ねかねません。新人職員の技術面を教育する機能は持ちあわせていますが、ある程度経験年数を経ると評価の上限に達してしまいます。

つまり、技術評価を重視してしまうと、新人のモチベーションを上げにくく、ベテランを教育しづらい制度になってしまうのです。また、職務・スキルを洗い出すと膨大な量になってしまいますし、スキル以外の能力や意欲・態度の評価が難しくなります。

目標達成度評価のデメリット

目標達成評価の運用には難しい点があります。それは、目標の達成に本当の意味で責任を負える役割や権限を持っているのは、幹部(部長級)や、管理職(師長・課長級)のみである点です。一般職員にとって、自身の行動ではどうしようもない目標の達成に責任を負うことは適切な状態とは言えません。

つまり、一般職にも目標達成度評価を重視してしまうと、職務権限の幅では対応できない内容のために意欲が削がれてしまう可能性があります。また、幹部や管理職のみに適用すると、チームとして目標達成しようとする意識が薄れてしまう可能性があります。

また、設定目標の内容が抽象的になりやすく、客観的に評価をすることが難しくなります。

行動評価がオススメな理由

行動評価は、理念やビジョン、行動規範などの法人が定める期待人材に沿った行動ができているかを評価することができます。また、人事考課を通じてどのような行動をとり、期待する人材像に近づいてほしいかという願いを共有することも出来ます。実践レベルの評価であるため、成長のステップを示しやすい他、本人へのフィードバックがしやすいという長所もあります。

いくら能力があっても、行動しなければ何の成果も現れません。成果の良し悪しは、行動の質によって左右されます。行動評価を主軸とした人事考課を実践することで、職員の行動の質を高めていくことができるのです。

ポイント2  評価項目に採用すべきもの

評価項目を考える際には、階層ごとに考えるべき視点があります。

  • 一般職:個人としての自立した職員となれるのかということ
  • 監督職:部下育成、他部門との連携調整
  • 管理職:部門の運営参画や円滑な業務推進
  • 幹部:ビジョン立案・戦略の推進

一般職においては「プロセス」を重視した項目設定であり、管理職や幹部など、階層が上がれば上がるほど「成果」を重視した項目設定になっています。

ポイント3  実務的に意味のあることを評価項目に設定

実務的に意味のあることを評価項目に含めることが重要です。例えば以下の4項目などが効果的です。

  • 「部署目標」を項目に含めることで、職員全員の目標達成意識を高める
  • 仕事の成果はシンプルに「質と量」の項目であるため、普段から仕事の質と量を意識させる
  • 「理念を体現した行動」を項目に含めることで、法人理念を意識させる
  • メンタリティの項目(例えば「素直さ」「あきらめない精神」)や職務遂行能力、問題解決力、企画力などのアビリティに関する項目も含めることで、考え方や能力開発の意識を高める

ポイント4  人による甘辛がでない工夫を

人によって評価の甘い辛いは出てしまいますが、差が出ないように工夫をします。

甘辛が出やすい評価基準の例

下記ののような「着眼点方式」ですと、期待し要求するレベルが評価する人によって異なるので、目指すべき姿が分からなくなってしまいます。

  • 項目:患者対応
  • 定義:患者に丁寧に接するとともに、患者の状況やニーズを把握し、ニーズの実現に向けて取り組んでいるか
S期待し、要求するレベルを遥かに上回り抜群のレベル
A期待し、要求するレベルを十分超えており、信頼出来る
B期待し、要求するレベルに達している
C期待し、要求するレベルを下回るが指導と努力で到達可能
D期待し、要求するレベルを大きく下回り、到達は極めて困難

甘辛が出にくい評価基準の例

下記のような「要素考課方式」ですと、各評価項目について行動を細かく定義しているので、ズレが少なくなります。

  • 項目:患者対応
  • 定義:患者優先で行動し、患者のために尽くしているか
S患者の状況や背景まで理解し、それに応じて一人ひとりに必要な対応を行っている
A患者の要望を進んで把握し、患者一人ひとりに応じて工夫して対応している
B患者からの直接の要望や要求を正しく把握し、それに応えるように行動している
C患者に対して丁寧に接しており、失礼もない
D押しつけ的であったり、一方的な対応、失礼な態度であったりなど、自分本位の業務をしている

ポイント5  人事考課判定会議を実施する

人事考課判定会議とは、直接の上司による1次評価、さらに上長による2次評価終了後、経営幹部(主に部門長以上)が集まり、人事考課の最終判定を行う会議です。次のような目的を持って行います。

  • 職員に対して人事考課が公正なプロセスのもと実施しているという安心感を与える
  • 部門間のばらつき(甘辛)の調整の場となる
  • 優秀人材の今後のキャリアを話す場となる

ある病院では「看護部長候補には必ずオペ室の師長を経験させる」というルールがあります。オペ室の師長は、ドクターとのやり取りや外部業者とのやりとりなど、様々な折衝を経験することができます。どんなところでも仕事を回せるようにして、看護部長に育成する狙いがあるのです。またある病院では、事務長候補には院内のコンビニの店長を経験させるそうです。仕入れや棚卸し、接客など小さな経営を体験出来る為です。

判定会議の場で、例えばAさんには今後事務長になってほしいという意見が出た場合には、「コンビニの店長をやってもらおう」という人事異動の決定がその場で出来るのです。このように判定会議が一人一人のキャリアを考える場として機能すると、優秀な人材の流出を防ぐことが出来ます。

ポイント6  面談は「育成」目的で行う

多くの評価面談では、「管理職が職員への評価を伝えて終わり」というケースが多く見受けられます。果たしてこれで人は成長するでしょうか? 答えはノーです。評価面談は相手を批評する為の場ではありません。職員を成長させるために行います。

その為には次の点がポイントになります。

  • 評価面談は、1次考課者である直接の上司が担当することが基本ですが、場合によっては、職員に気づきを与え、やる気にさせられる人を参加させる
  • 期待している役割、現在の評価、今後期待していること、次の目標の為の具体的な解決方法をフィードバックする

例えば、面談は部長が行ってもよいですし、部長と師長の二人で行っても構いません。面談を受けた本人が「明日から頑張ろう」と思える最適な人が行うことが重要です。

面談のポイントとしては、良かった点と課題点を伝えることが重要です。課題ばかり伝えても職員はモチベーションが下がってしまうからです。

期待している役割に対しての現在の評価や今後期待したいことを伝え、具体的な目標(例えば患者対応がB評価だったから次はA評価を目指そうなど)を設定し、その為の具体的な行動についてアドバイスします。上司である1次考課者は日々の仕事の中でも同様にアドバイスします。

ポイント7  自己評価

自分自身で振り返る機会を用意します。育成面談でのフィードバックによって成長出来ることもあれば、自分自身で振り返ることで成長出来ることもあります。

個々人の「成長」が目的ですから、敢えて点数をつける必要はなく、各自がシートを用意して、それぞれの人事考課の項目に対して自身の取組状況をフリーコメント形式で書いて振り返ります。

人が育つための人事考課制度 まとめ

いかがでしたでしょうか? 人事考課制度は職員の育成に活用出来る強力なツールです。そして育成された人材は戦略の実行を強力に後押ししてくれます。

日本経営の人事制度コンサルティングは、人を育成し「実行力」の高い組織作りをサポートして参ります。

人を育成し、実効力の高い組織をつくる

本稿の執筆者

中野翔太(なかの しょうた)
株式会社 日本経営 組織人事コンサルタント

中小企業、医療福祉機関のクライアントを対象とした人事制度設計、人材開発、組織開発、キャリア開発など、組織人事領域に関するコンサルティング業務に幅広く従事。全国の病院協会、医師会、金融機関等での講演も多数。

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本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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