投稿日:2026年9月30日

  • 患者と地域に選ばれる病院をつくる組織マネジメント

【患者と地域に選ばれる病院をつくる組織マネジメント: 第4回】「この人を評価したい」と思う職員が評価される制度になっていますか

人事評価制度を見直そうとすると、多くの病院では「S評価を何%にするか」「評価項目をいくつ設けるか」といった技術的な議論から始まります。しかし、制度の良し悪しを決めるのは、その手前にある一点です。すなわち、自院への貢献度が高く、理事長や院長が「この人にはきちんと報いたい」と思い浮かべる職員が、その制度を適用したときに実際に高く評価されるかどうかです。

連載の最終回となる第4回では、当グループで数多くの病院人事制度構築を手掛けるコンサルタントの馬渡が、「法人への貢献度が高い職員が正しく評価される制度になっているか」という視点から、評価・処遇の設計と、そこに至る組織改善のロードマップを解説します。

1. 制度の答え合わせは「思い浮かぶあの職員」でできる

経営者と話をしていると、「あの人にはもっと報いてやりたい」という職員の名前が必ず挙がります。部門の目標を達成しただけでなく、他部門と掛け合って連携を前に進め、次の管理職を育て、病院が目指す姿を現場の言葉に翻訳しているような職員です。

その職員を、自院の評価制度で一度評価を行ってみてください。評価シートを記入し、点数を計算し、最終的な評価ランクを出したときに、その職員は上位に位置するでしょうか。 もし中位に埋もれるのであれば、それは評価者が甘いのでも、その職員の努力が足りないのでもありません。制度が、法人として本当に価値を置いているものを映していないということです。

こうしたずれが生じる理由は明確です。多くの病院の評価制度は、資格・経験年数・勤続年数・能力やスキルの充実度・与えられた職務をこなしたかどうかを基準に点数がつく設計になっているからです。これらは職員のアセスメントとしては意味がありますが、「法人にどれだけ貢献したか」を測る物差しではありません。物差しが違えば、経営者の実感と評価結果が一致しないのは当然のことです。

「頑張ったら報われる」ではなく「貢献したら報われる」

努力や勤勉さを評価軸に置くと、制度は「真面目に長く働いた人」を上位に押し上げます。もちろん誠実さは組織の土台ですが、それだけでは病院の目的は前に進みません。評価制度が報いるべきなのは、頑張った量ではなく、病院の目的の実現にどれだけ寄与したかです。この一点を明確にすることが、制度設計のすべての出発点になります。

2. そもそも「貢献」とは何かー忙しさでも能力でもない

「貢献度で評価する」と言った瞬間に、現場では人によって異なるものが想起されます。だからこそ、貢献の定義を法人として言語化しておく必要があります。

貢献度とは、病院の目的と顧客価値の実現に、どれだけ寄与したかを示すものです。

  • 貢献ではないもの:長時間労働や多忙さ、担当業務をこなしていること、能力が高い・意欲があるという状態そのもの
  • 貢献であるもの:目的の実現に向けて実際に発揮した行動と、それによって生まれた成果

ここで重要なのは、目的が変われば「何が貢献か」も変わるということです。だからこそ、他院で使われている評価項目をそのまま導入しても、十分に機能しません。「この項目、良さそうですね」と借りてきた項目が並んだ評価シートでは、自院の貢献を測ることができないのです。

能力やスキルは、職務を遂行するうえで確かに必要です。しかし能力が高いからといって、期待された役割を果たしているとは限りません。職員のアセスメントとしては能力・スキルが重要でも、組織への貢献度という観点では「役割を果たしたかどうか」が決め手になります。

3. 貢献に報いる組織をつくる「組織改善ロードマップ」

評価制度だけを組み替えても、貢献度が高い職員が評価されるようになるとは限りません。何が貢献に当たるかは、法人の目的によって決まるからです。次のステップ順に進めてください。

【STEP 1】理念・パーパスの再定義(存在意義と顧客価値の言語化)

  • サーベイなどで組織の「健康状態」や障害となっているストレッサーを把握したうえで、「誰をどのように幸せにするか(顧客価値)」という病院の存在意義と目指すべき姿を明確にし、全部門・全病棟へ共有します。

【STEP 2】組織・制度設計(役割と権限の可視化)

  • 経営戦略やストーリーを実行するために必要な役割を各階層(管理職・現場)に割り当て、現場が主体的に判断を下せる「権限(裁量)」を可視化・委譲する仕組みを整えます。

【STEP 3】評価・賃金制度の構築(貢献に報いる仕組み)

  • 定義された役割と多面的な貢献度(定性・定量)に応じて適切に評価・処遇する仕組みを構築し、職員の貢献と成果が報われる運用を継続します。

このように、理念の言語化から組織設計、評価・処遇への反映までを一貫したストーリーとして連動させることが、形骸化させない組織改革のポイントです。いずれか一つを断片的に改定するのではなく、このロードマップに沿って自院の現状に合わせた施策を積み重ねていくことで、現場に本物の当事者意識と自律的な実行力が育まれていきます。 

【まとめ】全4回を通じた「最高の自律型組織づくり」

本連載では、組織マネジメントのフレームワークに沿って自律型組織のつくり方を解説してきました。

「この病院で働けて良かった」「自分の家族や友人に勧めたい」と全職員が思える組織づくりこそが、永続的に地域から選ばれ、貢献し続ける病院づくりの本質です。自院の組織変革の第一歩として、ぜひ本連載のノウハウをご活用ください。

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本稿の監修者

馬渡 美智(まわたり みさと)
株式会社日本経営

病院の人事制度構築や労務管理体制の調査・整備業務のコンサルティングに従事。単なる評価ツールとしての人事制度の構築ではなく、現場の実行力を高め、戦略を実現する組織づくりに強みを持つ。社内においては、子育てをしながら経営コンサルタントとして第一線に立つモデル人材として活躍。社会保険労務士有資格者

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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